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第32話:虎に降る群狼

独立を勝ち取った孫呉。ライル達は決断を下す。

寿春城を制圧して、孫呉の独立が成されて8日が経過した。この短期間で揚州各地に置いて袁家に組みしていた豪族が次々と降伏もしくは壊滅させられた。

勿論これ等は俺達による物だ。孫策軍は寿春城に暮らす民達への炊き出しや復興作業に力を注いでいる。次の統治者は以前とは違うということをアピールすることが目的だ。

俺達も新たにジーンから受領したMH-60S[ナイトホーク]に搭乗して、呉の首都である建業(現在の南京)に向かっていた。

ひとまずは合肥に駐留していた俺達に、先に戻っていた孫策からの使者が来たからだ。内容は“火急速やかに建業城玉座に出頭せよ”という出頭命令だ。

そして建業城に到着すると、城門にいた兵士の案内で玉座の間に向かう。


「ライル」

「なんだ?」

「決まったんだな?」

「・・・・・・あぁ」

「そうか・・・・・・悔いはないな?」

「あるわけがない・・・」

「ふっ・・・・・・まあ、俺やレオン達もお前の決定には従うさ・・・俺はお前の相棒だからな」

「・・・・・・・・・ありがとう」


最後に小声で礼を言うと、案内をしてくれていた衛兵が立ち止まり、俺達に振り向く。


「こちらで孫策様と皆様がお待ちです。申し訳ありませんが武器の提出をお願いします」

「分かった、預かっていてくれ」

「壊すなよ?」


そういうと俺とアレックスはホルスターからM45を取り出して、衛兵に渡す。

俺達が着ている服装は迷彩服やサービスドレスではない。海兵隊で主に式典等で着られるクラス“B”ブルードレスだ。

真っ黒の立て襟、襟元には海兵隊のシンボルとカラーが付き、肩には金属の階級章を取り付けられ、白の制帽を被っている。

俺とアレックスの着ている物は似ているが、相棒が将校用の青いズボンを履いているに対して、俺は将官用の黒を履いている。


「お待たせしました。孫策様がお会いになられます」


そういうと制帽を左脇で挟み、玉座の間に入って行く。するとその直後に視線が俺達に集中する。中央奥の階段の先にある椅子には孫策、その傍には周瑜。

階段の前には黄蓋、甘寧、陸遜の他に孫策とよく似た少女が2人に片眼鏡を掛けた少女に、忍装束のような服装を来た少女。恐らくは孫呉の中でも重鎮クラスの人物達だろう。

俺達は階段前まで歩み寄ると、踵を鳴らして最敬礼の姿勢をする。踵を鳴らした音が部屋中に鳴り響いている。


「孫策殿、招集に応じ参上致しました」

「待ってたわ2人とも。ごめんなさいね、忙しい時に呼び出しちゃって・・・・・・」

「構いません。戦後処理でしたら部下達だけでも充分に可能です」

「そう・・・・・・早速で悪いんだけど、この間の返事を聞かせてくれない?」


俺達は寿春城制圧後、駐屯地に再び孫策達が訪れて来て、“孫呉に参加するか否か、よく話し合って欲しい”と言われている。それを部下達全員に話した処“中佐の決定に従う”といっていた。

俺は相棒に目を配ると、片膝を地面に着けて、右手を背中に回して前屈みになる。


「・・・我らウルフパック総数427名は、海兵隊の誇りと狼の名に誓い、孫呉軍人としての忠誠を誓います」


これが俺が導き出した答えだ。


・・・“孫呉に降る”・・・。


部下達に帰る家を与えてやりたい気持ちに、孫呉が俺達と同じ志を持っていると判断したからだ。その答えを聞くと孫策殿は僅かに微笑んで立ち上がる。


「ライルにアレックス。性は孫、名は策、字は伯符。真名を雪蓮。この真名を貴方達に預けると共に孫呉は貴方達を歓迎する」

「確かに預かりました。こちらも改めて名乗らせて頂きます。米海兵隊第3海兵遠征軍第31海兵遠征隊指揮下第0独立機動大隊[ウルフパック大隊]大隊長のライル・ローガン・ブレイド海兵隊中佐であります」

「でしたら自分も・・・。米海兵隊第3海兵遠征軍第31海兵遠征隊指揮下第0独立機動大隊[ウルフパック]副大隊長のアレックス・ヴォード海兵隊少佐であります」

「今後も私達の新しい家族としてよろしくお願いするわ。皆も異存は無いわね?」


雪蓮殿が異存が無いか促す。皆が賛同の表情をする中、1人だけ違う反応を見せていた。


「・・・・・・私は反対です」

「蓮華(れんふぁ/孫権の真名)?」

「姉様‼私は反対です‼この者達は雇われていたとはいえ、一度は我等の敵だったのですよ⁉そのよいな危険分子など即刻つまみ出すべきです‼」


異議を唱えて来たのは雪蓮殿を生真面目にしたような性格をした少女だ。雪蓮殿の事を姉様と呼ぶのだから、恐らくは次女の孫権と思われる。

その孫権殿は俺を睨みつけるが、本音を言うと怖くも何ともない。


「落ち着きなさい蓮華。確かにライル達は董卓連合で私達と敵対したけど、彼が私達に謀反はしないはずよ」

「なぜですか⁉なぜそのような事が分かるのです⁉」

「勘よ♪」


その言葉で全員が呆気に取られる。しかしどういうわけか雪蓮殿がよく言う勘は外れた事が一度も無いらしい。まあ、俺達も忠誠を誓った以上は裏切る気などさらさら無いが・・・。

すると見かねたのか、周瑜殿が彼女の視界から俺達を隠すように歩み寄って来た。


「雪蓮が名乗ったのだから私も改めて名乗らせてもらうそ。我が性は周、名は瑜。字を公瑾。真名は冥淋だ。この真名をお前達に預けよう」

「じゃあ次はシャオね♪シャオは孫 尚香で真名は小蓮(しゃおれん)♪シャオって呼んでね♪」


孫 尚香といえば孫堅の末の女性で、あまり記録は残されていないが赤壁の戦いの後に劉備と政略結婚されたとされる。

しかしこの世界の人物達全員が性転換している訳じゃないようだ。


「よろしくお願いします。シャオ殿」

「うん♪よろしくしてあげる〜♪」

「儂も名乗っておくぞ。儂の真名は祭じゃ。今後もよろしく頼むぞ」

「それじゃあ次は私ですね〜。私の真名は穏(のん/陸遜の真名)と言います〜」


黄蓋こと祭殿と陸遜こと穏がいつもの調子で真名を教えてくれた。


「あの⁉私は性は周、名は泰。字は幼平‼真名は明命(みんめい)といいます‼」


忍装束のような格好をして長い黒髪。目尻が上がった赤い瞳の元気一杯少女が周泰が丁寧に挨拶をする。

周泰で有名なのが宣城の戦いだろう。まだ孫策が在命中だった頃、宣城の守備を任されていた孫権に山越が襲い掛かり、全身に12箇所もの怪我を負いながら、命懸けで孫権を守り通した逸話がある。


「よろしく頼む。明命」

「はい‼お願いしますです‼」


非常に眩しい笑顔で返事をする明命。すると次にキョンシーのような裾が長い茶色の服装で片眼鏡を右目に掛けた少女が恥ずかしそうに話しかけて来た。印象的には明命が“子犬”とすればこの子は“リス”みたいな小動物だろう。


「あ・・・あの・・・・・・せ・・・性は呂、名は蒙。あ・・・字は子明。真名は亞莎あーしぇ。こ・・・この真名を・・・・・・貴方にあ・・・預けます‼」


所々で詰まりながらも自己紹介をする。しかしこの子があの呂蒙とは・・・・・・。

呂蒙といえば唯の猛将から猛勉強して文武両道の良将になったとされる人物で、一番有名なのが関羽を討ち取ったとされる。

“士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべし”という言葉を残しているが、関羽を崇拝している人達からすれば憎まれる存在だが、どう考えてもそんな印象は微塵も感じられない。


「・・・我が名は甘寧 興覇。すまないが真名はまだ預けられない」

「大丈夫だ甘寧。信頼に値すると判断した時で構わない。よろしくな」

「よろしくするかは蓮華様次第だがな・・・・・・」


そういうと甘寧は孫権を見る。するとあからさまに不機嫌の雰囲気を醸し出している孫権がいた。見かねた雪蓮殿が促す。


「蓮華、あなたも名乗りなさい」

「・・・・・・孫権 仲謀だ」


冷たく名乗ると、雪蓮殿に軽く礼をすると早々と玉座の間から出ていった。隣にいた甘寧も礼をすると後を追う。それを雪蓮殿は溜息を吐きながら飽きれる。


「ごめんなさいね2人とも。あの子には後で言っておくから・・・」

「大丈夫です。別に気にしてはいません」

「いきなり信頼しろという方が無理なもの。誇り高き故でしょう」

「そう言ってくれると助かるわ」


代わりに謝る雪蓮殿。この後に俺達の待遇が決まった。


・活動拠点の提供

・兵員の異動や兵器の提供は無し

・袁紹が動き出した場合、独自行動権の容認


以上が俺が提案した条件で、冥淋殿からは


・建業の警邏活動と鍛錬の指揮

・天の知識を可能な限り、呉繁栄に提供

・ライルを建業城で生活させる

・ライルを含めた指揮官級兵士の将軍職に就かせる

・孫家、呉の武将を口説きまぐわう


5つが義務付けられた。これらを互いに容認したことで俺達は正式に孫呉軍の正規部隊に組み込まれた。

この事実は瞬く間に諸侯に知れ渡ることになる。なぜなら孫呉はこの世界で最強の力を誇る“海兵隊”を手に入れたのだから・・・・・・・・・・・・。

孫呉に降ったライル達。その事実は瞬く間に諸侯に知れ渡る。ある勢力は納得して、ある勢力は強敵出現に闘志を燃やし、またある勢力は愚策を練ろうとする。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”


[諸侯の反応]


海兵隊の名が知れ渡る。

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