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第28話:孫策軍

孫策を送り届けるライル。既に疲労困憊の状態で彼女達と出会う。

俺達の駐屯地から5里くらい進んだ平原。ここには孫策軍の陣営が敷かれていた。賊討伐完了直後に現れた孫策を送り届けたが、その道中が大変だった。

好奇心旺盛な彼女が車内に取り付けてある戦術情報端末を弄ったり、操縦したいといいだして抱きついて来たり、更にはガンターレットのM134Dで誤って同行している彼女の部下達に発砲しかけたりと散々な目にあった。

これなら下手な戦場の方がまだ楽だ。なにしろ軍に入隊してからこんなドタバタな“警護”は初めてだからどう対処すればいいのか全く分からない。

そしてその疲れる要因はというと・・・・・・。


「雪蓮(しぇれん/孫策の真名)‼勝手に出向くなと言った筈だが‼」

「だって〜面白そうだったんだも〜ん♪」


黒髪のロングヘアで眼鏡を掛けた女性に叱られていた。全身から知的な大人の女性の雰囲気を醸し出し、天女とも思える美女だ。


「これ周瑜よ。策殿を叱るのも後にしたらどうだ?客人が呆気に取られておるぞ」

「むぅ・・・変な所を見せてしまったな」

「ライル〜♪冥淋(めいりん/周瑜の真名)がいじめるぅ〜♪」


そういいながら孫策は俺に抱きつこうとするが、先程の女性に阻止された。そして先程から隣にいる銀髪で不敵な笑みを浮かべる女性が話しかけて来た。


「すまぬな客人よ」

「いっ・・・・・・いえ・・・結構です・・・それより自己紹介をさせて頂きます」


それだけ言うと、俺は踵を鳴らして天幕にいる彼女達に敬礼をする。


「恐らくはご存知かとは思いですが、自分はウルフパック指揮官をしておりますライル・L・ブレイドと申します」

「ほう・・・策殿から聞かされてはいたが、本当に変わった名前じゃな。儂は先代様より仕えておる黄蓋 公覆じゃ。見知りおけぃ」

「挨拶が遅れたな、私は軍師の周瑜。字は公瑾だ」


名前を聞いても最早驚かなくなった。

黄蓋といえば先代の孫堅 文台から孫呉に仕えている歴戦を誇る宿将で、一番有名なのが赤壁の戦いで行なわれた偽の降伏“苦肉の策”だろう。印象的には“母”もしくは“姉御”だ。

周瑜 公瑾も孫策を語るには欠かせない存在と言える。幼少の頃に孫策と出会い、彼を支え続けた“断禁の仲”と称される孫呉きっての軍師。

正史の周瑜はその美しさから“美周郎”と呼ばれていたが、彼女を呼ぶとすれば“美周嬢”という処だろう。


「いきなり連れて来てすまんな。道中はこの子が大変だったであろう?」

「ちょっと冥淋⁉それじゃまるで私が困らせたようじゃないの⁉」

「だったらなぜライル殿が疲れた顔をしているのだ?」

「ぎくっ・・・・・・・・・」

「はっはっはっ、相変わらず策殿は公瑾には形無しじゃのぅ」

「ブーブー、祭(さい/黄蓋の真名)まで私をいじめるぅ〜」

「お取り込みの最中に申し訳無いが、なぜ貴女達がここにいて、俺を連れて来たのか説明して頂けないか?」


なかなか本題に入ってくれないので、仕方なく強制に戻す。


「すまないな、実は袁術の命令でこの周辺を根城としていた賊の討伐に赴いたのだがな」

「先に向かった斥候から伝令があってのぅ。お主等が既に壊滅させておったのじゃ」

「それで折角だからね、少し話がしたかったのよ」


孫策の最後の言葉が気になる。まあ、大体の内容は検討できる。


「そこで聞きたい。ライル殿、貴君等の部隊も共に我等孫呉に仕えないか?」


やはりだ。この土地に来てから既に曹操軍と荊州軍から勧誘を受けている。特に曹操軍からはご丁寧に曹操自らの直筆の手紙が添えられていたが、俺は曹操の使者に断りと誘いに対する感謝の手紙を預けた。

袁紹軍からも使者は来たが、あまりにも脅迫じみたしつこい勧誘だったので、3人いた使者の内の1人を射殺して追い返した。


「1つ聞いてもよろしいか?」

「いいわ」

「なぜ我等を?」

「私達が袁術の客将になっているのは知っているわね?」


尋ねられると俺は小さく頷く。


「母様が亡くなって数年、今まで苦渋を舐めてきたわ。民を守る為に止む無しと何度思ったことか・・・・・・」

「ええ・・・袁術の側近達は民を食い物にするしか脳がない愚者。奴等のせいで既に幾多もの民が犠牲になった」

「儂等は父祖から受け継がれてきた土地を取り返し、民を救わなきゃならん・・・それが先代様の願いじゃった・・・」


そういうと3人は重い表情をする。確かに実際の孫堅も名声や新たな領土には興味を示さず、家族や民の身近な平和を守ったとされる偉大な人物だ。

だが彼女達の言葉に気になることがあった。袁術の側近といったが袁術本人とは言っていない。


「すみません、先程“袁術の側近”と仰いましたか?」

「そうだ」

「ということは・・・・・・」

「悟ったようじゃのぅ。そういうことじゃ」

「それで、お願いライル。せめて今だけでもいい。私達に力を貸して」


そういうと孫策は俺の手を握って力を貸してくれと頼む。じっと見てくる瞳に思わず引き込まれそうだったが、彼女達の表情からは確かに俺達を必要としている。それも野心や野望の為ではない。真剣に民や家族を守りたい一心だ。


「・・・・・・いいでしょう」

「本当に⁉」

「ええ、俺としても興味が湧いてきました。仕官するかは別ですが・・・・・・」

「えぇ〜⁉そのまま一緒にいようよ〜♪何だったら私のこと好きにしてもいいからぁ〜♪」

「だぁ‼いちいちくっつかないでください‼」


頼むから孫策よ。いちいち抱きついて来て、その豊満な胸を押し付けないで頂きたい。というよりも絶対に分かってやっているだろう。

何とか引き離して、3日後に改めて軍議を行なうことになり、俺は部下達に伝える為、駐屯地にて行く・・・・・・・・・。

孫呉独立に力を貸すことになったウルフパック。再び訪れた孫策軍本陣で軍議をする中、新たな武将と顔を合わせる。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”


[軍議]


虎と狼。集う。

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