暗くなる
どんどんと周りは暗くなってきた。
「あちゃぁ、こんなに暗くなるなんて……」
私は家路を急いでいた。
冬に近づいているということもあって、どんどんと日の入りは早くなっている。
そのせいか、同じ時間でも、夏は明るかったのに、今はすっかりと暗くなる。
闇に飲み込まれそうな雰囲気もある、街灯もまばらな路地を早歩きで歩いていると、誰かが向こうからすれ違おうとする。
頭を下げて、やり過ごそうとするが、ふと頭をあげると誰もいない。
すれ違ったわけではない。さほど幅員が広くない路地だ。
すれ違ったとすればすぐに分かる。
では、どこへ……
その時、後ろで遠ざかっていく足音が聞こえた。
こっそりと振りかえると、目の前にいた人だった。
私は背筋が怖くなり、ここから家まで駆けった。
初めてというぐらいに速く。
そして、家の敷地に入った時、ポンと肩を叩かれる。
恐る恐る振り返ると、さっきの人だ。
「……こんばんは」
体温がない、それを感じた私は、その人を突き飛ばして、家の中へと入った。
運がいいことに、以来、その人を見てはいない。
でも、夜で歩くのがトラウマとなった。