挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記– 作者:星砂糖

ログイン1日目

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

62/205

嵐の中で逃げ惑って

上空から降ってくる押え付けるような風。
肌に当たるとばちばちと音を立てる横殴りの雨。
時折周囲に落ちる雷。
HPバーが残り1本になったテンペストバードは、名前の通り嵐を巻き起こした。

「ピュイ!」

テンペストバードが鳴くと、雷が連続して降ってきた。
その雷は徐々にこちらに迫ってきていて、一列に見えるほどだった。
その雷はレイドバトルエリアの端まで到達すると消えたよ。

「ピュイ!ピュイ!」

今度は2本の雷が降ってきて、1列になるよう断続的に振り続けた。
一回「ピュイ」って鳴くと雷が降ってくるんだね。
しかもお、前進するかのように徐々にこっちに迫ってくる落ち方だ。
幸い射線からズレたら当たらないんだけど、雨に濡れた服が重くて、できるだけ早く行動しないと当たってしまうかもしれない。

「ピュイ!」
「あ!」

テンペストバードが落とした雷の射線上にハピネスがいた。
慌てて引っ張ったんだけど、ハピネスのドレスが水を吸ってとても重くなっていた。
予想よりも動かなかったハピネスに雷が当たる瞬間、ナックルが飛び込んで拾い上げてくれた。

「ありがとう!」
「おぅ!気をつけろよ!」

ナックルはハピネスを僕に向けて放り投げた。
なので、その勢いを利用して糸を短くしたよ。
合わせてクローバーも近くに寄せていたので、全員を収納しようかな。
みんなの服が水を吸って重いんだよね。
アザレアなんて、ローブが肌にひっ付いて体のラインが出てるし。

例え振り回したとしても、テンペストバードがいる所まで投げれないし、雷を避ける時にハピネス達をうまく動かせるかわからない。
さっきみたいにならないとも限らないし。

人形の館(ドールハウス)。ハピネス、クローバー、アザレア収納!」

クローバーは回復のために出すかもしれないけど、雷が当たったら一撃で死ぬと思うんだよね……。
竜巻でさえナックルのHPを7割持っていくんだから、雷だと一撃じゃないかな。
それを後衛の僕が受けたらひとたまりもないよ。

ミヤビちゃんは嵐の中シロツキに乗って飛ぶことができなかったのか地面に降りていた。
シロツキとトバリも小さくなって、頭と肩の上に乗っている。
ミヤビちゃんはテンペストバードを警戒して盾を構えながらも、徐々に交代してこっちに向かってきているね。

6人パーティは戦闘を放棄したのか、固まって西の登山道へ向かっていっる所だったけど、雷に打たれたのか包丁の人にアイテムを使っている所だった。
僕も逃げようかな。
勝てる気がしないよ……。

「オラァ!」

ナックルが何かやっているようなので視線を向けると、降ってきた雷を殴ってテンペストバードに向けて跳ね返していた。
どういうこと?

「シャァ!」
「ピィィィ!!」

テンペストバードはナックルが跳ね返す雷を避けることなく受け止め、お返しとばかりに雷の玉を放ってきた。

「うぉぉ?!」

地面位落ちた雷の玉は放電して広範囲に電気を飛ばした。
ナックルはそれをパリィで弾きながら後退してきて、僕のところまで来た。

「さっきの雷弾くやつは何なの?!」
「え?あぁ。盾や剣で魔法防げるし、魔法を弾くこともできる。だったら、俺のグローブでも弾けるんだよ!ラァ!」
「それはグローブが武器扱いだから?!」
「そうだ……よっ!」

ナックルは話しながら雷を弾いていた。
といっても、テンペストバードが鳴くことで放たれる連続した雷じゃなくて、嵐のせいで勝手に降ってくる雷だけどね。
落ちてくる前に地面がうっすらと光って、小さく放電するから僕でもわかる。
避けれるかどうかは別として。

それと、ナックルが雷を弾ける理屈はわかった。
わかったんだけど納得はできないよ!
剣や盾で魔法を防いだり、弾き返すのはまだわかる。
剣だったら切ったりもできるんだと思う。
だけど!
グローブで弾き返せるのは納得できないんだけど!
もうほとんど当たってるよね!
武器だからってこと何だろうけどさ!

「オキナ!もう一度黒い球であの鳥を落とせないか?」
「無理だよ!準備が整ってないし、水を吸ったせいで服が重くて投げられないんだ!」
「さっきみたいに脱がせばいいだろ!今度は全身だ!」

ナックルが妙に爽やかな笑顔で言い放った。
他人事だから楽しんでるんだろうね!

「嫌だよ!」
「そうだよな!最悪投げるだけなら赤鬼さんでもいいんだけど、準備が整ってないなら無理だな!よし!逃げよう!」
「逃げるの?!」

ナックルはあっさりと逃げることを提案してきた。
確かに僕も迷ってたけど、こんなにあっさりと言われるとは思ってなかったよ。

「あぁ!攻撃手段がないんだ!もう無理だろ!」
「わかった!」

仮に攻撃できるとしてもシロツキとトバリのブレスと、まだ使ったことのないクローバーの腹部機巧(ギミック)だ。
それだけで倒せるとは思えないから、逃げるしかないかな。

「ミヤビちゃん!逃げるよ!」
「はい!」

テンペストバードを警戒しながら下がっていたミヤビちゃんだけど、僕が声をかけたら盾の構えを解いて走って来た。
この理解の速さは、嵐のせいで飛べなくなった時点で逃げることを考えていたのかもしれないね。

「それで、どこに逃げる?」
「南だ!西は別パーティが居るし、東は鳥に近いからな!」

今テンペストバードがいるのは北の崖側だから、南が1番遠いけど、その分雷が迫ってくるとしても余裕がありそうだ。
飛んで先回りされないことを祈っておこう!

「わかった!ミヤビちゃん行こう!」
「わかりました!」

走りながらチラッと6人パーティを見た。
なぜか西の登山道の前で何かを話してるみたいだけど、逃げないのかな?
声は嵐のせいで聞こえないし、僕たちも逃げるのに必死なので、気にしないことにした。
というか気にする余裕がないよ!

「ピュイ!」

幸いにも雷を放ってくるけど、飛んで移動する気配はない。
迫ってくる雷も、ナックルの指示のもとミヤビちゃんに突き出されて避けれてるので問題はない。

「ピィィィ!!」

テンペストバードが僕達や6人パーティの所ではなく、中途半端な位置に雷の玉を放った。
そこには誰もいないはずだけど……。

「あぁ!赤鬼さんがぁ!」

赤鬼さんが居たみたいだね。
ステータスプレートのパーティ2を見ると、赤鬼さんの名前が消えていたから、倒されて送還されたんだと思う。

多分ナックルの指示で囮としてテンペストバード中を引いてくれてたんだろうね。
赤鬼さんは体が重くて遅いから、雷の玉を避けれなくて直撃したのかな。

「ピュイ!ピュイ!ピュイ!ピュイ!ピュイ!」

今度は5方向に雷が放たれた。
とはいっても、だいぶ離れたので、こっちにくるのは1本だけなので、避けるのはそこまで難しくない。
こっちにはナックルとミヤビちゃんがいるし。
1人でも、たぶん避けれると思う。
たぶん……。

雷に打たれて割れた岩が僕に直撃した程度で南の登山道にたどり着いた。
受けたダメージは初心者用ポーションで回復したよ。

「あれ?」
「おかしいな」

ミヤビちゃんとナックルがレイドバトルエリアの境界になっている、赤い帯みたいなものに触れながら悩んでいる。
普通に出るだけじゃないの?
逃走可能ってなってたし。

「どうしたの?」
「あの、通れないみたいです」
「え?」

ミヤビちゃんの言う通り、帯の上に見えない壁が発生していて通れなかった。
理由はわからないけど、通れないならどうにかしてテンペストバードを倒すしかないよね。

6人パーティが登山道から出て行かなかった理由もこれなんだろうね。
だから、出口前で口論してたのか。
声は聞こえてなかったけどね。

「ん?何かカウントダウンしてない?」
「ん?おぉ!してるな!」
「ですね」

少し離れて通れない壁を見たら、帯の中に『3:48.74』という数字が流れていって、それが徐々にカウントダウンしていってた。
残り4分弱。
何のカウントダウンだろう。

「に、逃げれるようになるまでの時間、でしょうか?」
「あー。かもしれないね」
「あるいは何かのイベントかもしれないぞ。まぁβではこんなレイド見たことないけどな」

ナックルは探るように見えない壁を触り、最終的には思いっきり殴った。

「ギュアアアアアアアアアアア!!!」

ナックルが壁を殴ったことにより鈍い音が響いたかと思うと、テンペストバードの鳴き声が聞こえて来た。
そして、帯のギリギリの地面がうっすらと光り、放電した。
次の瞬間、帯が見えなくなるほどの雷がレイドバトルエリアの縁を襲った。

ナックルはとっさに避けたけど、左腕に当たったみたいで、HPが8割減っていた。

人形の館(ドールハウス)!クローバー来い!繰り糸(マリオネット)!」

クローバーを出して慈愛と救済の右手(癒しましょう)を使う。
使っていると、また地面が光った。

「くっ!」
「オキナさん!」

ナックルは飛び込むような前転で何とか避け、僕はミヤビちゃんに抱きかかえられたけど、避けられた。
クローバーもなんとか引っ張れたけど、服の端が少し焦げていた。

後3分ほど……。
耐えられるかな?
出られないのはこの状態のテンペストバードが街へ行かないための処置です。
プレイヤーが逃げなければ山頂から動かないので。
カウントダウンについては次話で。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ