挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記– 作者:星砂糖

ログイン1日目

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

21/208

持ち込み料理屋台 茜色のみかん水

真っ白な視界が晴れると噴水広場だった。
もしかして僕は、人より視界が真っ白になる回数多い?
他の人はチュートリアルぐらいのはずだし。
嫌じゃないんだけど、完全に慣れるまではもうちょっとかかりそうかな。

「さて、どうしようかな……ん?」

伸びをしながら周囲を見回すと、何故か周りの人に見られていた。
よくわからないけど、居心地悪いから離れよう。
MPは回復してるからまだ大丈夫だけど、少しお腹が空いてるし何か食べよう。

確か港付近の通りに屋台が出てるって掲示板に書かれてたからブラブラしてみよう。
その後は冒険者教会に行ってクエストを見ればいいかな。
職業クエストに合わせて何かできれば儲けものだしね。

南側の道を進み、喫茶カモンカモンがある方とは逆の方向に曲がる。
冒険者協会は南東だったはずだし、屋台も南東付近で済ますつもりだ。
じっくり見て回るのは今度にして、とりあえず食事を済ませたいし。

しばらく進み、今度は右に曲がる。
ここからは少し傾斜がついていて、港が見えるようになっているらしい。

「おぉ……」

煉瓦造りの建物に囲まれていた中心部とは違い、坂に沿うように段々になって建物が並んでいる。
その先にはキラキラと輝く水面と大小様々な帆船が見える。
もう少しで夕暮れになるからか、帆船のほとんどが港に向かっている。
帰港中なんだろうね。
この後は、港の近くにある酒場で一杯かな?
酒場があるか知らないけど。

そんな風に船乗りの日常を考えながら歩き、十字路に差し掛かった時、右から女の子が飛び出してきた。

「どいてー!!」
「うわっ!」

ギリギリ立ち止まれたのでぶつかる事はなかったけど、女の子の後を白いフルプレートの鎧を着た男が3人追いかけていった。

「にいちゃんごめんやで〜!」

軽く振り返りながらこちらに向かって手を振る女の子。
改めて見ると中学生くらいで、飾り気のないシャツとロングスカートの町娘のようだった。
髪は軽く背中にかかる程度の茶髪で、手にはパチンコを持っていた。

その女の子を追いかけてる白い鎧は、この街を守ってる騎士だと思う。
門の近くで警備している人と同じ装備だったし、他にも噴水広場や大通りを巡回してる。

そうなると、さっきの女の子が何で追いかけられてるのかは知らないけど、どうせ悪戯程度だと思う。
パチンコを手に持っていたし、騎士も剣を抜いてないから、そこまで深刻じゃないんだと思う。

「うぉっ?!」

遠ざかる女の子から視線を外して正面に向き直ると、目の前に漆黒のメイド服を着た綺麗な女性が立っていた。
ブラウスもスカートもブーツも黒い。
身につけている物の中で唯一黒くないのは、首元にある赤い三角タイだけだった。

いきなり現れたメイドさんは僕に一礼した後、女の子と騎士が走り去った道をチラッと見て、逆方向に歩いていった。
なんなんだろう。
驚かせたことに対する謝罪かな?

考えていても仕方がないので、当初の目的通り真っ直ぐ坂を下りて屋台がある通りを目指す。

しばらく進むと潮の香りとは別にいい匂いが漂い、喧騒も聞こえてきた。
屋台通りが近い証拠だと思う。

海に面した大きな通りに出て周りを見渡す。
街側には沢山の屋台が並び、向かいの海側にはベンチや机等の食べる場所があった。
海を見ながら1人で食べてる人もいれば、パーティだと思われる複数人でテーブルを囲っている人たちもいる。
女性だけの集まりもあれば、男性だけの集まりもあるし、少年少女やお爺さんお婆さんだけの集まりもある。

皆思い思いに飲み食いして騒いでる感じは嫌じゃない。
実に楽しそうだ。

「何を食べようかな」

道に沿って歩きながら屋台を覗いていく。
鶏肉のステーキ、豚肉のステーキ、野菜スープ、鶏肉のステーキ、焼き魚、野菜炒め、魚スープ、魚の包み焼き、パン、パイ、豚肉のステーキ、フルーツジュース、鶏肉のステーキ…。
焼き物が多いけど、何か理由があるの?

「そこの少年!食べるものに迷ってるならウチなんてどうだい?」
「僕ですか?」
「そうだ!手ぶらの君だ!」

僕を呼び止めたのは、頭にねじり鉢巻を巻いた赤みがかったベリーショートで、少し日焼けが目立つお姉さんだった。
歳は20代前半ぐらい?
確かに周りには武器を持った人しか居ないし、その中で手ぶらだったら目立つかもしれないけど、よく見てるね。

お姉さんは半袖のシャツを捲り上げて肩を出し、黒いエプロンを付け、屋台の鉄板で野菜炒めを作っていた。
屋台には『持ち込み料理屋台 茜色のみかん水』と書かれていた。
夕陽に照らされたみかん水の瓶が思い浮かんだよ。

「む?名前が気になるか?」
「えぇ、まぁ」
「この屋台は4人でやってるんだけど、アタシが鉄板焼き担当の(しき)。色って書いて『しき』な。んで他には煮込み担当の(すい)。あ、水って書いて『すい』な。後はデザート担当のみかん。農業と木工担当の茜なんだ。だから名前を組み合わせて『茜色のみかん水』にしたんだよ!今はアタシの担当だけど、食べたいものがあるなら呼ぶぞ?どうせもう少ししたら全員集まるし」
「いえ。大丈夫です」

もう少ししたら書き入れ時だから集まるのかな?
お腹の空き具合的には肉とか食べたいから、鉄板焼きでいいや。

それにしても、茜さん、(しき)さん、みかんさん、(すい)さんの4人で『茜色のみかん水』か。

「お店の名前なんですけど、いい組み合わせですよね。とても素敵な名前だと思います。海辺の防波堤に置かれているみかん水の瓶が、沈んでいく夕陽に照らされているイメージが見えましたよ」
「だろ!ノスタルジックな感じが気に入ってんだよ!いやー少年はいい感性してる!気に入った!何か食材があったら無料で焼いてやるぞ!食材がないなら適当に焼くけどどうする?」

(しき)さんは勢いがあってちょっと暑苦しく感じるけど、こういう人は嫌いじゃない。
とても楽しそうだし。

せっかくだから、何か焼いてもらおうかな。

「では食材をお渡しします」
「そうか!なら取引だな!ちょっと手が塞がってるし!」

(しき)さんがヘラを持った手でメニューを操作したら、僕の目の前にウィンドウが現れた。

『プレイヤー:(しき)から取引を申し込まれました。取引を行いますか?』

もちろん『はい』を押す。
ボタンを押すと左右に2分割されたウィンドウに切り替わって、左側の上部に『オキナ』、右側の上部に『(しき)』と書かれていて、更にアイテムバッグのウィンドウも開いた。

アイテムバッグの中にあるアイテムをタッチすると、プラスボタンとマイナスボタンが表示されたので、それ押すことで取引画面に追加される仕組みみたいだね。
というわけで『ぎゅうぎゅう牛肉』を1つ選んで、取引画面下にある『決定』ボタンを押した。
ブラウンラビットの肉らしき物は食べたいと思わない。
ウサギ肉は食べたことないし……。

「決めました」
「わかった」

(しき)さんが何も選んでいない取引画面で決定ボタンを押すと『取引しますか?』という確認メッセージが表示された。
『はい』を選ぶと『取引成立』というウィンドウが出た後全部のウィンドウが閉じた。

「おぉ!少年はぽこぽこプレイヤーか!ウチの茜もだ!」
「そうなんですか」

(しき)さんは取引アイテムをよく確認してなかったのか、アイテムを取り出すタイミングで気づいたようだ。
それにしても茜さんか。
ぽこぽこファームをやった上に、W3でも農業をやるなんてそれだけ好きなんだね。
僕はのんびりとしたかったからプレイしてたんだけど、最終的には農業にハマったから気持ちは少しわかる。
今はいろんな景色を見たい気持ちが勝ってるから、今のところ農業をするつもりはないよ。
機会があればやってもいいけど。

「今はW3で採れる野菜に加えてぽこぽこ豆、にょきにょき人参、わしゃわしゃキャベツ、ごろごろ芋も育ててるぞ!だからウチの屋台は他の屋台より品数が多いんだ!」
「おぉ……」

屋台の前にメニューが書いてあったことに気づかなかった。
他のところにないメニューとしては『ぽこぽこ豆スープ』『にょきにょき人参とわしゃわしゃキャベツのスープ』『茹でごろごろ芋バター』なんかがあった。

「ぎゅうぎゅう牛肉の焼き加減はどうする?」
「ミディアムレアでお願いします」
「任せろ!」


そういえば何で持ち込み式にしてるんだろう。

(しき)さん。この屋台は何で持ち込み式にしたんですか?」
「ん?あぁ。いろんな食材を扱いたいからだ!街で買える物もいいんだけど、冒険した先で手に入れた食材を調理したいし、手に入れた側も美味い物にして欲しいだろ?」
「そうですね」

ぽこぽこファームでも、自分で育てた野菜を食べた時はすごく美味しかった。
確かに冒険した先で手に入れた食材を美味しく料理してくれるなら持ち込みたくなるね。

「それに、冒険者は協会かメルカトリア人の店で買い取って貰うから、こっちに流れてこない場合もあるんだよ」
「それは、メルカトリア人も食べるからですか?」

協会や店で換金した後の食材が出回らないってことは、他のプレイヤーが購入しているか、プレイヤーに売らず消費しているかだね。
どちらにせよ、手に入らないことには変わりないけど。

「そういうこともあるだろうな!あぁ、別に否定してるわけじゃないぞ!メルカトリア人がウチに持ち込んでくることもあるし!後はさっきも言ったけど、自分で手に入れた物が美味い料理になったら嬉しいだろ?そんな感じで始めたんだよ」
「すごいですね」
「よせよ!照れるだろ!っと、お待ち!『ぎゅうぎゅう牛肉のステーキ』だよ!熱いうちに食べな!」
「はい。ありがとうございます」
「あぁ。食べ終わったら食器は横の樽に入れておいてくれ!」
「わかりました」

受け取った木の皿には大ぶりのステーキがカットされた状態で乗っていて、木の枝を削り出して作られたであろう箸と一緒に渡された。

ぽこぽこファームが終わってから食べてなかったぎゅうぎゅう牛肉のステーキだ。
ミディアムレアに焼かれているので、断面からは赤い身が見えて食欲をそそる。

箸で一切れ掴み、迷わず口に入れる。
焼きたてなので肉の香りが香ばしく、塩だけのシンプルな味のおかげで、噛むことで溢れる肉汁の甘さが際立つ。
幸せだ!

味わいながら食べたつもりだったけど、すぐに無くなった。
お腹は満腹なのでこれ以上食べるつもりはないけど、また何か食べたくなったらここに来よう。
食材はまだあるし。

「ごちそうさまでした。とても美味しかったです!」
「おう!また来てくれ少年!」
「はい!」

使った食器を水が入った樽に入れて、屋台を後にする。
いやー。
とてもいい焼き加減だった。

あ。
そういえば僕は名乗ってなかった。
まぁ次名乗ればいいか。
ステータス(食事時間経過でMP回復)

名前:オキナ
種族:人族
職業:人形使い(ドールマスター)☆5
Lv:1
HP:84/100
MP:206/500
ST:110/110
STR:10
VIT:10
DEF:10
MDF:100
DEX:300
AGI:10
INT:200
LUK:50
ステータスポイント:残り10

スキル
繰り糸(マリオネット)Lv:2〕〔人形の館(ドールハウス)Lv:1〕〔同期操作シンクロアクションLv:1〕〔工房Lv:1〕〔人形作成ドールクリエイトLv:1〕〔自動行動オートアクションLv:1〕〔能力入力スキルインプットLv:1〕〔自爆操作(爆発は主人のために)Lv:1〕〔〕
スキルスロット:空き1
スキルポイント:残り10

職業特性
通常生産系スキル成長度0.01倍
通常魔法使用不可
武器装備不可
重量級防具装備不可

装備
・武器1:装備できません
・武器2:装備できません
・頭:なし
・腕:なし
・体上:冒険者のローブ
・体下:冒険者のズボン
・足:冒険者の靴
・アクセサリー1:なし
・アクセサリー2:なし

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
補足
茜色のみかん水は全員βプレイヤーで、β時代に知り合い意気投合して屋台を出しています。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ