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もう一度だけ会いたい(仮) 作者:音無 優
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白纏の少女

  その涙が止まった時、いつも何故か無常の背徳感に見舞われる。この背徳感はいつも感じるそれとは違い、ただただ心の奥が疼く。それを押さえつけるかのように顔を上げたとき、いつもなら暗闇に満ちたバックグラウンド画面の空しか見えない。それがまた物悲しいだけなのに、その日だけは違った。一つの人影が見えたのだ。普段なら一人だけの路地裏に、僕の方に視線を向ける少女が立っていた。

 彼女を一言で表すならば、“美しい”という言葉以外当てはまらないだろう。
ショートカットの黒髪に藍眼の瞳。白鳥のように真っ白くしなやかな肢体は同色のワンピースに劣らず、逆にそれが際立ってくる。身長は僕より少し低いくらいか、150cmほどで、年齢は僕と同じ中学生だと考えられる。しかしその見た目とは相反して、彼女の出で立ちというか、風格というべきか、それにはまるで幼さ、子供っぽさを感じず、清純で気品があるように感じる。

 その姿に見蕩れているうちに少女はどんどん僕の目の前まで近づいてきた。そして彼女はこう言い放ったのだ。

「こんなところで何泣いてんの?まじ見てて目障りなんだけど」

 後から振り返ると、自分にとって今世紀最大クラスの不祥事であり、羞恥心で今にも死にたくなりそうな場面であるだろうが、少女の台詞と見た目とのギャップで驚きが勝ってしまった。

「……見てたの?」

「見てたも何も、こんな道端で泣いてたら見たくなくても目に入る」

 ごもっともな答えだ。ここでようやく僕は彼女の言葉を聞いて我に返る。

「……やべぇ」

 すぐさま、恥じらいが脳内を襲い、必死で顔を隠す。ここにこれ以上居ても不利益しかない。そう思い、無言で立ち歩くと

「ーーまって」

 彼女は何故か僕を止めた。もうこれ以上傷を抉らないでくれよ……。

「なに」

「“立花有志”この名前に心当たりはある?」

「ん……今なんて?」

「立花有志という男を知らないかって聞いているんだけど」

 知ってるか知ってないかで言えば、前者にあたる。しかし唐突過ぎて、思わず反射的に後者、「知らない」と返してしまった。

「あ、そう。ならもういいわ」

 刑事さながらの凛々しい振る舞いに、少し見蕩れてしまう。彼女が路地裏を出るのを見届けて僕も歩き出す。

「なんなんだよ……」   

 立花有志。
 知らないはずはない。なんせ僕の唯一の友達なのだから。
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