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3-28 お父さん

 ギルドに乗り付けるなり、外にいた職員に声をかけた。

「スクードを呼んでくれないか」


『おお、どうしたい? いつも自分で勝手に部屋まで上がっていくじゃないか』

 馴染みの職員が不思議そうに訊いた。


 俺は荷台の扉を開いて、中身を見せ付けた。


「こいつらの件で。また解体場にちょっかいをかけていた」

『そうか。わかった、呼んでこよう』


 彼も、奴らを見て眉を顰めた。俺が奴らを、車から降ろして積上げているとスクードがやってきた。そして、開口一番にこう言った。


『おや、私の可愛いマリエール。また珍しい組み合わせだね。変な事されなかったかい?』


 なんて事を言うんだ。失礼な。というか、私のだと? まさか。俺は連中にかけた手錠を回収しながら眉を顰める。


『うん、大丈夫よ、お父さん。このおっさんは子供には優しいから』

 うお! 出ました、おっさん呼ばわり~。いや、お父さんだと!?


 一緒に来ていたアンリさんが、俺の渋い顔を見て爆笑している。


「ねえ、あの子はギルド職員の子じゃなかったの?」


『ああ、一応ギルドマスターだって職員のうちよ。自治はしているけれど、この街はゴルディス辺境伯の領地なんですもの』


「君より、たった2歳年上の男がおっさん呼ばわりな件について」

『しょうがないわ、あの子は子供なんだし』


 マリエールめ、絶対アンリさんの事はおばさん呼ばわりしないに決まっている。今度、意地悪しちゃおうっと。


 そんな会話をしている間に、マリエールが事情を説明しおえたようだ。


『まったく、あの連中ときた日には。自警団に連絡して警戒させよう』

 そしてスクードはこっちへ向き直った。


『娘が世話になったな。あと、そいつらはうちで引き取ろう。ふざけたマネをしおって』

 周りの職員達もうんうんと頷いている。本当にギルドの連中は、あそこの子に甘いな。


「いや、来る早々になんか騒ぎ起こしていた連中がいたんでな。おまけにムカつく態度だったんでボコボコにしてやった」


 とりあえず、土産の話をした。みんなで分けてもらって、色々感想を聞いた。お菓子なんかも、色々と好みは別れたが、概ね好評だった。


『あの子達にはあげないの?』

 マリエールが、お菓子をほおばりながら訊いた。


「あっちへ寄ってから、ここへ回る予定だったんだ。向こうでも配っているよ。変なのが来ていたから予定が狂った。こっちへは俺だけが来る事になったから、そのまま配っているだけさ。こういう物への感想集めも俺達の仕事みたいなものなんだ」


『そうなんだ。それならいいわ』


 そんな彼女のお気に入りはリボンフラワーセットだ。ラッピング用リボン各種と針金・細紐など、それに解説本の組み合わせだ。どうも、子供達に作ってやりたいらしい。


 それならと折り紙セットも進呈した。欲しかったらまたやるからと言ってやったら、ギルドの隅っこで凄い真剣にやり始めた。こういうのは、また山崎が得意なんだ。


 用件は済ませたので解体場に戻る。マリエールも連れていった。リボン細工に苦戦していたので、先生のところへ連れていくところだ。


「おお、帰ったか。連中はどうなった」

 野外用の調理器でチビ達の食事の準備をしながら、山崎が訊いてきた。


 足元では待ち切れなさそうな奴が覗き込んでいる。

「異界の自衛隊―レンジャー班長さんの異世界賄い飯紀行―」って感じだろうか。


「ああ、ギルドに引き渡してきた。さっき、あいつらとやりあっていたこの子はスクードの娘だ。つまり、いわゆる代官みたいな人のお嬢様だそうだから。代官というか自治しているんだから、単なる代官じゃなくて街の総責任者だからな。怒らせていい相手じゃないんだ。後はお任せかな」


 俺は子供用のテーブルと椅子を出して並べていく。

『わあ、これいいなあ。ねー、ハジメ、このテーブルと椅子ちょうだい~』


「ああ、いいよ。どうせ、お前ら用に持ってきた奴だから。あとで中へ運んでやるよ」

『やったー』

 みんな、大喜びだ。そういや、ちゃんとした家具とか調度は無いのかな。


 今日のメニューは、蟹クリームコロッケ風のウルボスコロッケだ。どっちかというと和牛コロッケの雰囲気がある素材なんだが。


 柔らかい新キャベツ、そして熱々のご飯。目玉焼きもついて栄養満点だ。お味噌汁も奴らはお気に入りだった。そして食後にプリンで仕上げだ。


 いっぱい食べて、みんなご機嫌さんだ。俺達もゆっくりと寛ぐ。来た時にあんな事があったので俺達はしばらく待機だ。


 宿だけは、ここへ戻って来る前に確保してきた。その間に山崎がリボン細工を教えている。マリエールからもエブリン(師匠)と呼ばれる事になりそうだ。


 しばらく待ったが、とりあえず大丈夫そうだ。俺達は宿へと撤収した。


 いつもの宿にいる少女ラーニャへの御土産は、可愛いブランドバッグだ。妹のメイリーにはエプロンをやった。


 高級品なのがわかるのか、えらくご機嫌だった。安物ではない。栄の三越にある、あの超高級ブランドのものだ。値段的にはこっちの方が高い。


 それからマサへと繰り出して、土産を並べたてた。探索者連中も集まってくる。


「ただいま。こっちはお変わりないですか?」

「おう、肇ちゃんが言うような事も、特に兆しは無いしね。まあ、今のところはだけれども」


「向こうは日本政府だのなんだのが小煩くて、すったもんだしていて。振りきって強引にきました。また某国絡みの動きもあるようで閉口していますよ。今回はこの国の王都まで足を伸ばそうと思っています」


 それから、また色々と仕入れてきた物品を渡しながら、みんなで楽しい夜を過ごした。新しい品の中ではコンニャクが受けていた。味噌田楽は探索者連中にも好評だった。


別作品ですが、「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

も書いております。

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