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3-21 爆買い

 ぶらぶらと地下鉄を乗り換えしながら歩いていると、偶然知り合いに会った。自衛隊で同期だった女だ。

「おっす、川島じゃないか?」


「あ、鈴木」

「久しぶりだな」


 こいつは、豊川にいた女性自衛官だ。まだ現役だろう。3等陸曹になったと聞いたな。同期、いや豊川の中では、かなり美人の方じゃないのか。細面で切れ長の眼をした美女だ。


 見た目はいいんだが、格闘表彰持ちの剣呑な女だ。髪は肩先まで伸ばしている。

 仕事中は縛っているので街中で見ると何か新鮮だ。自衛隊といえども、さすがに女で短髪は無い。


 空手も黒帯だし。喋り方も若干男勝りだ。おかげで気がはらずに話せる奴だが。


 もっぱら話題は空手やレンジャー訓練に、酒や国際情勢とかだ。色気の欠片もねえ。

 

「へえ、金持ちになったとは聞いたが、真っ昼間からハーレムとはね」

 さも可笑しそうに笑いやがった。俺に女っ気が無いのを知っているからな。


「弟の彼女と、妹とその友達で終了だな。今から、百貨店でブランド品を奢らせられるところだ」


「あははは、いいじゃないか。金には困っていないんだろう? ねえ、異世界ってどうだったの。あいつらも一緒に行ったんでしょ」


「まあ、ボチボチよ。もうちょっといる予定だったんだが、ちょっときな臭くなってきたんで、とりあえず帰ってきた。そういや、今から山崎も来るけど、お前も暇だったら来ねえ」


「げっ、あいつが来るの?」


 この女、結構酒癖が悪くて、正さんの店で悪酔いして山崎にえらく絡んだ事がある。傍から見ている分には、いい思い出だったな。お互いに苦手らしい。


 だが、何とはなしについてきた。どうやら、目的も無くぶらぶらしていただけのようだ。異世界の話が聞きたいんじゃないかとみた。


 栄について、山崎を呼び出した。すぐにやってきたが、川島を見て同じ反応を返す。


「ゲっ、川島。肇、お前なんで!」

「いや、そこで偶然会ってさ」


「おっす」

 開き直った川島が、ふてぶてしく挨拶をする。


「まあ、いいけどな」

 些かゲンナリした様子で諦めたようだ。自衛隊という軍隊相応な組織の理不尽さに比べたら、なんてこたあない。


 まあ、自衛隊だって慣れてしまえば住めば都だ。数字のノルマとか無いから気楽だし。


 自衛隊で数字が絡むといえば罰でやらされる腕立て伏せの回数だな。何より、自衛隊にいれば食いっぱぐれる心配だけはない。


 地下街を通って、すぐに三越の入り口へと進んでいく。


「ねえ、異世界に魔物いた?」

 歩きながら、川島が訊いてきた。

「ああ、腐るほどな」


 イーグー2年分を思い出して、思わず胸が悪くなった。アイテムボックスから出しても出しても終わらないのだ。ギルドの連中が大爆笑してやがったし。


「なんか、豊川の奴ら、えらい大げさに言っているんだけど、あいつら吹いてない?」

「なんて言っていたんだ?」


「もう、次々と壁から湧いてきて大変だったって」


「あはは、湧いて来た、湧いて来た。魔物じゃなくて民間人の捜索している時に限ってなー。3821体だぜ。そいつを探している時とか出てこないんだけど」


「あっはっは。マジでー。それ、絶対出待ち~」

 愛知県で一番賑やかな繁華街を歩きながら、異世界の魔物との戦闘について語る元&現役の自衛隊員たち。


 ほどなくお目当てのでかいブティックへと着いた。ここはその店舗系列において日本で2番目にでかい店らしい。


 テナントで2Fまである。憧れの世界最高級ブランドだ。女の子達が目の色変えて漁りまくっている。


 男性用も売っている。自分のと、山崎のはそそくさと仕入れる。

「なんで、俺までこんな超高級ブティックで」


 こいつは元々ボンボンなんだが、自衛隊生活どっぷりで、最近はこんな格好はしていない。


「次回は王都へ行く予定だ。何かあったら、ちゃんとした格好もいるかもしれん。あいつらの分も見繕っておいてくれ。今日も連れてくりゃあよかったぜ。他のブランドも回るぞ。スクードや向こうの女の子達の分もな」


 あと、デパートには子供向け高級ブランドなんかもあるんだよな。覗いていきたい。馬鹿高いんだけれど、かなり可愛かったりする。


 アメリカに頼んで上限無しの特別なカードを作ってもらったので、大量の買い物するのには困らない。


 とにかく色んな物を買い漁った。食い物もみんなに手伝わせてレジに並んだ。催事場の北海道物産展は戦争だった。品物を持って並ばせた兵隊共がバタバタしていた。


 ここはキャッシュオンリーだ。昨日のうちに銀行で山盛り降ろしてきてある。札束は思うより重たいが、アイテムボックス持ちは何も困らない。


 デパ地下の弁当惣菜スイーツも攻めまくった。デパートは何件も回ってかなりの量の物資をかき集めた。


 みんなも、さすがに買い物疲れが出たようだ。ほぼ戦場だ。山崎と淳はとっくに音を上げている。俺はいる物を買い集めまくった。


 鬼軍曹と化していた。今日いる自衛隊関係3人のうちで、俺だけ陸曹に上がらず終いだったのだが。アイテムボックスがなかったら、こいつら全員荷物持ちだった。


 上の食堂街で遅めの食事をゆっくりとる事にした。もう14時を回ったんで、そう並んではいないが、人数がいるんで割と並ばないでいいところにした。俺と山崎は早速ビールを注文する。川島も飲みたいようだ。


「飲みすぎんなよ」

「うっさい。そうそう絡んだりはしないわよ~」

 山崎と川島が軽口を叩きあっていた。


「ひゃあ、お兄さん、そんなに買ってどうするんですか~」

 美希ちゃんが、呆れていた。


 多分、トン単位の買い物になっただろう。米に酒に調味料各種、ジュース類も大量に。服に雑貨に調理器具。食器も高級品を買い込んだ。服は買い込んだなあ。全員に手分けして集めさせた。


 そして、超高級時計なんかも仕入れた。王族なんかとかかわりあう事があったら、こういうものも欲しい。時間の表示は驚く事に地球とぴったり同じだった。


 ネットで特注しておいた、超高級万年筆も届いていた。1本は父にプレゼントした。スクードの反応を見る限り、万年筆は身分の高い人達には有功な贈り物になるはずだ。


「異世界で使う事もあるんだよ。食い物とか1人子供にやったりすると、他の子や大人までいっぱい来ちゃうしな」


「あははは。いいな、異世界行ってみたい。楽しそうじゃない」


 川島はお気楽だ。魔物と戦闘した事ないからだろう。こいつなら、イーグーを素手で倒せるかもしれない。あれだって羆並みの怪物なんだが。へたすると、ホッキョクグマ相当かもしれない。


「楽しいばっかりじゃないと思うがな。まだ、21ダンジョンの向こう側、クヌードはマシなとこだけど。他の迷宮都市はどうなのかな。日本にある他のダンジョンから行けるんだろうか」


「他のダンジョンは、どこに抜けているんだろう?」

 山崎も不思議そうな顔をする。


「わからん、あの世界の反対側かもしれないな。できたら、万一に備えて、他の帰還ルートも確保しておきたいんだ。今度試してみたい。お前が来てくれる時じゃないと遠出は厳しい」


 王都か。グラヴァスよりヤバイのは確かだな。あまり酷い事にならなけりゃいいんだが。


 別作品ですが、初めて本になります。本日発売です。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。

http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html

 こちらはツギクルブックス様の専用ページです。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。


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