3-17 行きはよいよい、帰りは
「やれやれ、名残惜しいな。なんか、凄く馴染んじまった感じだ」
「全くなあ」
正さんのところへ行って、挨拶をしてから帰る事にする。
「じゃあ、今から帰りますので」
「そうか、また来い」
「じゃ、お元気でー」
「いってきます」
俺達はハンヴィーでダンジョン入り口へと向かった。今日もアランが警備隊長として詰めていた。他の奴らも、もうすっかり御馴染みだ。
「おーい、アラン。今から、ちょっと帰る予定だから。またすぐ来るけどなあ」
『なんだ、そうか。じゃあ、またビールを頼むぞ~』
「あいよ~」
俺達は塀で囲まれた空間を進軍し、ダンジョンへと向かった。
「なあ、またドタバタして帰るわけ?」
ドライバーの佐藤から、もっともな質問が返ってきた。
「まあ、そうなるかな。だって、それ以外にはできんわ」
「そうだけどな。今まで行き来できていたのが、たまたまだったりして」
「うーん!」
スクードの話を聞く限りではそんな感じもしないがな。やだな、不安になってきたじゃないか。まぜっかえすなよ、池田。それにしても、もっと安定して行き来はしたいよなあ
「狩りながら行くか~?」
マイペースな山崎が、のんびりとした発言を。
「まあ自然にそうなるんじゃないか?」
もう、みんな狩りには慣れたしなー。
そんな会話をしていた最中に、いきなり後ろからアタックを食らった。突然の衝撃にみんな仰け反った。
「うお!?」
「なんだあ?」
「青山! 何が起きた!」
「や、やべえ。でかいのが、ケツについてる。今まで見た事もないぞ。30Mくらいあるんじゃないか?」
「なんだとお!」
まさか、例のドラゴンじゃねえんだろうな。あれが、この迷宮に出るのかどうか聞いておけばよかった。
「おい、佐藤……」
言うが早いか、ハンヴィーはガツッと加速した。
「おい、肇どうする!」
さすがにドライバーは、やや焦り気味だ。
「そうだな。仕留めるか。土産はでかいほどいい。司令部の運動場で見せびらかそうぜ」
「あの、司令部のある駐屯地の中じゃ日本1小さい駐屯地でか?」
「最早、守山所属隊員の自虐ネタになっているくらいだからな」
「安心しろ、司令部関係無しで3本指に入るくらい狭い駐屯地らしいから」
「運動場って言うな。せめて、練兵場とか言ってくれよ」
このメンツで唯一の守山所属の山崎がボヤいた。
あそこは、本当に狭い。なんか、高機動車とトラックとトレーラーがみっちり並んでいて、養鶏場のようなイメージがある。
初めて行った時には、あまりにもびっしり並びまくったトラックや高機動車の姿に酔った。うっぷ、って感じだ。それなのに野球部が6つもあるんだが……。
「おい、なんか他の奴が現れないうちに片付けよう。はさまれると面倒だ。青山、換われ」
「ほいさっと」
さすが、レンジャー訓練で俺のバディだっただけはある。阿吽の呼吸で入れ替わった。
俺はハッチから出ようとしたが、その時車体が激しく揺れた。
「おうっとお。おい、ちょっと運転に気をつけてくれ、今からあいつをやるとこなんだから」
「いや、ちょっと。なんだ、これ」
「あらっ。なんだい、こりゃあ」
凄腕の運転士と車長のコンビのすっとんきょうな声に、俺は前方を向いてハッチから頭を出したら、前が無い! そう、何もないのだ。世界が消失した感じか?
なんだあ~~?
「うわ。落ちる!」
「え?」
無敵のコンビも慌てていた。なんだよ、こりゃあ。どうなっている?
「ちょっと、タンマ。後にいた魔物は?」
俺はちょっと慌てる。
奴が魔法でも使ったんなら、俺達もここでお陀仏になる可能性がある。ハッとすると、そこはLEDランプの明かりの点る通路だった。おー、無事に帰ってきたか。冷や汗かいたぜ。
「おい、みんな。帰れたっぽいぜ」
「行きもそうだったが、心臓に悪いな、おい」
「無事、帰って来られたか。やれやれだぜ。行き帰りが一番リスク高いんじゃねえの?」
「おい、気を緩めるなよ。まだ魔物がいるかもだぞ、こっち側の」
「で、そいつに追われて、また向こうに戻ったらお笑いだな」
合田~。それは笑えないぜー。何クールに眼鏡を、くいっと上げながら言ってんの。
「くそ、あれ土産に欲しかったのにな」
俺は、ちょっと悔しかった。
さっきの魔物。あれは何か凄い奴だった。地球の大富豪にオークションで競わせたなら、幾らの値段がついただろうか!
「一応、カメラには収めてきたけどな」
青山はそういう仕事も担当だ。イージスに守られながらの余裕の撮影だ。
さっきの獲物。いつか、きっと仕留めるぜ。
ここは、ルート15だったらしい。前方に見える明かりは外のものだった。久しぶりの日本のお天道様だ。
別作品ですが、初めて本になります。
「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」
http://ncode.syosetu.com/n6339do/
7月10日 ツギクルブックス様より発売です。
http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html
こちらはツギクルブックス様の専用ページです。
お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。