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3-4 初陣

 翌日俺達は、高機動車に乗り込み探索者ギルドに乗りつけた。この町の人達は最早、俺達の迷彩服や車を見ても驚かなくなっていた。元々、俺が騒々しいハンヴィーを乗り回しまくっていたので今更だ。


 探索者ギルドにも御土産はバラまきまくっているので、俺達を疎む連中はここにはいない。特に俺が解体場の餓鬼共と仲がよくて色々面倒を見たりするので、好ましいと思っているようだ。


 そもそも俺自体が「ギルマス預かり物件」なんだが。もう、ほぼ身内扱いされている。


 正さんの店の常連連中などは、俺達の事を「異世界から来るビールの配達人」だと思っているらしい。


 既にビールの複製には成功している。多少品質の問題があるのと、やっぱりいい原料が必要な事はあるので今は買ってくるのだが。


 飲食物に限っては、原料の善し悪しが出来上がりの品質に影響を大きく及ぼす。そのうちには日本でビールの補充はしなくてもよくなりそうだ。あとは俺の精進次第だ。


 そして翌日の朝には、スクードの前で整列して敬礼していた。


『お前ら、いい加減にそれはやめにせんか? 俺は、別にこの国の国王でもなんでもないんだが』


「仕方が無い。こうする習慣なんだ。なに、全員立派な不良隊員だから安心してくれ」

 苦笑してスクードはソファを勧めてくれた。


『それで、今日は何の用だ?』

「これから、他都市へ調査に赴きたいと思っている」


『遊びに行くの間違いじゃないのか?』

 秘書のアリアさんからお茶を受け取りながら、スクードが混ぜっ返してきた。


「わかっているんなら、聞くんじゃねえよ。というわけで、こいつらにも探索者証をやってくれ」

 俺はさも当然のように言い放った。


『まあ、お前ら日本人の人となりは、大体わかったつもりだ』

 ああ、一応観察されていたのか。


「それで?」

 期待を込めて、訊いてみる。


『探索者証は出してやろう。だが他の町へ行っても、何があるかわからないぞ。この世界が、皆この町のようだとは思わない事だ。特に、お前ら日本人はな』


 やれやれ。地球だけでなく、すでにこちらの世界でも日本人のお人好しぶりが見切られているかな。


「他都市、並びに道中の情報がほしい。特に危険情報について知りたい」

『わかった。いいだろう……』


 会話は全て合田が記録しており、それを後で説明する形で色々と対応を練った。


 俺はアンリさんに残りのイーグーを渡した。アンリさんは、もちろん収納持ちだ。今日が終わると残りが40体になってしまう。今日の獲物はイーグーが好ましいな。


 アンリさんに会ったついでに、色々聞いてみた。

「こいつらも魔法を覚えられますか?」


『そうね。普通なら無料はお断りなんだけれど、ちょっと興味があるわね。リーシュも呼んできましょう』


 やがて現れたリーシュ師匠の姿に、合田のテンションが上がってちょっと大変だった。



 魔法使いの少女には間違いないが。元凄腕探索者で、16歳にして既に探索者を退役して探索者ギルドの職員として働いているんだ。アニメの魔法少女とは根本的に違う人種なのだが。


 そしてお約束という奴だろうか。適性検査を試したが、全員見事にボツとなった。


「納得がいかん」

 合田、そんなに魔法少女を目指していたのか?


「お前がクリヤできたのに、残り全員がアウトだなんて。このままだと、ボーナスの査定がヤバイかもしれんじゃないか」

 知るか、そんな事。というか、その基準の根拠が知りたいのだが。


 アンリさんは、くすくす笑いながら、

『どこの世界の人間も言う事は同じねえ』

 そうなのか。


『でも、無駄よ。こればっかりはね。魔法使い本人といえども、適性ばかりはどうにもならないのだから。まあ、潔く諦めてちょうだい。魔法が無くても特に困らないんでしょう?』


 言われてみれば。この世界で活動するんじゃなかったら特に困らないかも。こっちなら、金積めば魔法使いは雇えるし。


 みんなにもそう言ったら、

「そういや、そうだな」

「金は肇持ちだしな」

「じゃあ、魔法は任せたからな」


 特に問題無しだった。真にアバウトな連中だ。やっぱり連れてきたのがこいつらで正解だ。


 そうなると、俄然装備へと目が移るのが俺達の性だ。ミスリル製の弾丸。そして、支援魔法。リーシュ師匠に訊いたら、あらかじめ支援魔法をかけた武器とかをアイテムボックスにしまっておく方法もあるとかで。


 少し修練場で試すことにした。日本で色々金属の廃材を集めておいたので、それで鋼鉄の人型を作って標的にした。


 ミスリル製の弾丸にアローブーストをかけたら凄まじい威力だった。5.56ミリ小銃弾が標的を見事に貫通してしまった。銃も強化しないと銃身が持たないかもしれない。


 米軍が欲しがるかなあ。あ、米軍にはもっと凄い武器とかもあるんだよな。こんなものはいらないか。それよりも、値打ち物が欲しいんだろう。お宝狩りと行きますか。売れる物を仕入れないとな。


 俺達はギルドを出るとハンヴィーを出して乗り込み、そのままダンジョン内へと進軍した。こいつは煩くて、ダンジョンの中では爆音が反響して騒々しいが他の探索者連中も慣れたようだ。


 そして探すとなると一向に出てこないイーグー。


「なあ、いないのなら他の魔物にしないか」

 と青山。


「ああ、他のでもいいんだが、不思議なくらい出てこないな。こんな事は珍しくない。たまたま、誰かがここで狩っていれば、しばらく出てこないさ」


 山崎が欠伸しながら、

「まあ、向こうさんの都合に合わせるさ。兵隊の仕事なんて、そんなもんだ」


「まあ、そうなんだが。ただ初戦は待たされるよりも、さっさと終わらせたいのが人情ってもんだな」


 その通りだ。なにしろ相手は魔物って奴らだ。俺達の中で、魔物とやりあったのは俺だけだ。部隊としては初戦闘となる。合田の立場としたら情報は早く欲しいだろう。


「お、なんかおいでなすったぜ」

 ドライバーの佐藤からフィードバックが入る。


「でかいな」

 池田が続いた。


「団体さんだぜ、どうする?」

 青山がやや緊張した風で訊いてきた。


「んー。やっかいな奴だ。でかい癖にすばしっこい。ロケット砲は使いづらい。丁度いい。青山、支援魔法をかけるから、M2を撃て。普通に撃ってくれればいい。車には盾魔法、いわゆるバリヤーを張っておくから、心配ない」


「こういう時はバリアって書くのが正しいのか、バリヤーでいいのか」

 記録官がのんびりと、場違いな質問を投げかけてきた。こういうとこは公務員だよな。


「自衛隊の所属する日本国の管轄では、『どちらでもいい』じゃないか? 辞書もそう。自衛隊はお役所だからバリアって書く気もするが。

 通信社の発行する記者ハンドブックの影響で一般にバリアと書いているだけだと思う。多くの出版社がそうしている。あれもあくまで『新聞の書き方ガイド』だから。

 別に絶対にバリアって書かなくてもいいんだよ。本来はバリヤーが正だからな。発言者の俺の意思を汲んでバリヤーで統一してくれ。魔法はイメージが大事だ。バリヤーの方がイメージに合う。本として出版される場合はバリアと書かれるのが普通だな」


 俺達はなんとなく公務員っぽい、のんびりした会話を行なっていた。緊迫感はまるで無い。


「もう撃ってもいいのか? 連中動き出したぜ」

「ああ、やってくれ。あまり近づけると面倒だ」


 青山のM2が激しく火を吹いた。硝煙が立ち込め、魔物が弾けるように跳ね上がった。アローブーストをかけられた12.7mm弾が砲弾のように奴らをえぐった。


 威力は加減をしている。やりすぎると素材が駄目になる。大事な、こっちでのお足だ。


 日本政府も米軍も、こちらでの通貨は支給してくれない。食い扶持は自分で稼がないとな。厳しい異世界の掟だ。


 次回は、朝8時に更新します。


 別作品ですが、初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。

http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html

 こちらはツギクルブックス様の専用ページです。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。

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