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3-3 探索会議

 正さんの店で使うグラスは中の形状が底の丸い特殊な奴だ。他のグラスに比べてかなり重いが、泡立ちがいい。高級ブランドの奴だ。ビールを旨く注ぐためにはこの形状の底でないと駄目なのだ。


 取っ手付きのワイングラスを長くしたようなビヤグラスもある。シャンパングラスなんかも泡立ちをよくする感じになっているが、あれでは小さい。


 まるで、エンジンの燃焼室の形に拘るかのようなものだが、気体と液体の違いがあるだけでそう変わらないのだろう。流動体はこの形状で渦をまくのだ。


 たかがビールグラスでそこまでするもんかとも思うが、段違いに旨いんだから文句はない。上手に手早く3度注ぎしてくれてあり堪らない。ジョッキで豪快にやるのもいいが、こいつの美味さは格別だ。


 グラスなどは大量に複製しておいた。岩石からとった素材のうち、金属素材を頻繁に使用するためガラス素材は大量に余りまくっている。冷やしたジョッキも捨てがたいんだがな。


 わざわざ中ジョッキが186個も入る、大型の業務用ビールジョッキクーラーを持ち込んできたのだ。


 頻繁に開け閉めするせいなのか、300L容量でも1000Lの業務用冷蔵庫よりも電力を食う。さらに製氷装置も持ち込んだ。


 他の探索者連中もビールを試すが、もう大絶賛だった。


『なんだ、この冷たい酒は。こんな喉越しは初めてだ。凄い』

『旨い。俺はこの一杯に出会うために今日まで生きてきたんだな』


 ウエイトレスのネコミミ娘達も大忙しだ。こいつらは、探索者がしんどくて辞めたがっていたので正さんが拾ってやったらしい。


 山崎が手伝いながら、ネコミミ娘にビールの注ぎ方を指導している。本当にマメな奴だ。グラスの洗い方や、冷やす加減なども教え込んでいる。


 今日も正さんの店は大繁盛だ。絶品魔物つくねに舌鼓を打ちながら、俺達は明後日からの予定を話した。


「とりあえず、明日は正さんちのガレージを仕上げちまおう。そして翌日は、探索者ギルドへ行って、周辺都市の情報を収集すると。準備が出来次第、周辺都市へ調査に赴く。あと、ギルドに行ったら探索者ギルドへの登録をしよう。それをしておかないと、お前達は他の町に入れないかもしれない」

 俺はエダマメをつまみながら、そんな話をする。


「それは簡単にできるものなのか?」

 合田が記録の仕事も兼ねて、グラス片手に訊いてくる。


「お前らくらいなら大丈夫だろう。スクードは空気を読むからな。この都市は自治区だが、ここを一歩出れば封建主義国家の王国だ。理不尽な事もいっぱいあるはずだ。俺もまだ出た事はない。正確には日帰り範囲内でしか、この町を出た事がない」


「そうか、厳しいな」

 ドライバーの佐藤が難しい顔をする。ナビの池田も思案顔だ。


「町の外にも、魔物も出るんだっけか?」

 砲手役の青山が訊いてきた。


「少々の奴なら、俺の魔法で片付けられるし、お前の射撃にも支援魔法をかけられるが。話を聞いてみて、あまり芳しくないようなら、もう少し魔法を習っていくかな」


「その魔法って、俺達にも覚えられるものなのか?」

 合田よ、自ら魔法少女でも目指すのか?


「俺に聞かれたってわからないよ。試してみるか? 俺とお前らで何か違うような気がする。米軍兵士でも俺みたいにはなっていないし。わからんとしか言いようがない。」


「まあ、色々話を聞いてきた加減で決めるしかないかな」


 山崎はどっしりと構えている。こいつには、まさにとっておきの奥の手を用意してあるのだ。頼りにしているぜ。


「ま、今日はよく働いたことだし、飲もう」

 俺達はわいわいやって、また明日へと気力を蓄える事になった。


 昨日も餓鬼どもの所に行って6体渡したので、残りは52体となった。そろそろ補充したいな。この魔物はイーグーというらしい。


「毛むくじゃら」の意味だ。確かにそうだけど、毛むくじゃらな奴は他にもいるんじゃないの? と思ったが、こいつらは大集団を作り探索者を襲ってくる。


 ラノベのファンタジーで言うと、オークあたりのポジションか?


 よく餌があるなと思ったが、迷宮から誕生した魔物は餌を食べなくても生きられるらしい。迷宮内だけの特技だ。魔素のせいだろうか。


 外へ溢れてしまって、外で繁殖した奴は普通の動物みたいに餓死もある。そいつが舞い戻ってきたらどうなるのか興味はあったが、ギルドでもよくわかっていないらしい。


 というのは、そういうケースは確認出来ていないとの事だ。迷宮内の魔物は迷宮に支配されているらしくて、一旦自由を得た魔物は戻る事はないのだという。


 どっかで魔物を捕まえてきて、発信機付きのタグでもつけて管理して、取り付けたカメラで生態を確認するしかないな。


 さすがに、そこまでやる気になれない。今回は、こちらの人間やその体制に対する調査がメインなのだ。


 そのうち、世界的に魔物自体が関心を集めるだろう。大人しい奴は動物園で飼育したり、ペットとしての需要があったりとか。それだけでも、かなりの経済効果になる。


 15時くらいに作業が終了し、正さんにも出来栄えを見てもらって笑顔の回答をいただいた。俺達はハイタッチで業務を終了した。


 そこから、餓鬼共のところに顔を出して解体に付き合う。訓練代わりに行き帰りは走る。

 戻ってから会議を行なった。


「明日、少し魔物狩りにいかないか? 町の外でいきなり初戦闘より勝手のわかっている迷宮で演習を行ないたい」


「そうだな、その方が安全面から見て好ましいか」


 俺の提案に、一応自衛隊組のリーダー格である山崎が回答をする。同じ3曹の階級の中でこいつがリーダーなのは、一つ上の年齢以外にもそれなりに訳がある。


 元々は山崎だけが曹候補生、つまり最初から正社員待遇で自衛隊に入社しているのだ。このメンバーの中では最初に3等陸曹になった。それ以外にも理由はまだある。


 サブリーダー格の合田が、それを受けて話を進めた。このリーダーとサブの組み合わせはなかなかだ。戦闘力があり、どっしり構える山崎に頭が良くて冷静な合田。この2人は仲間からの信頼も厚い。


「そうだな。俺も賛成だ。みんなは? 特に青山」


「ああ、俺も話を聞いただけの、支援魔法という奴を経験しておきたいかな。凄い威力だって話だが、そのへんの加減もみておきたい」


「異存はないな」

「狩りとしゃれこむか」

「OK。じゃあ、決まりだな」

 俺はグラスを軽くあげて、決定の合図とした。


 このメンツだから、そんなにしゃちほこばった事はない。米軍が俺に発注した業務を行なうだけで、自衛隊は完全にオブザーバー的な応援だ。


 俺の主導であり、この集団であえて指揮官というなら俺という事になる。どっちかというとガイドの役割かな?


 米軍の要請により、応援の人員を寄越しただけという体裁なので「部隊」としての取り扱いではなく、全員が同格のお手伝いなわけだ。


 階級も皆同じ3等陸曹だが、一応自衛官を複数派遣する形となっているので、便宜上リーダーとサブリーダーを決めているという感じだ。


 次回は、朝6時に更新します。以後、2時間おきとなります。


 初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。

http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html

 こちらはツギクルブックス様の専用ページです。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。

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