2-18 チビ達との再会
そして、解体場にやってきた。時間的には頃合だろう。
青山に頼んでホーンを鳴らしてもらった。チビが飛び出してきて集まってくる。
『ただいま、ロミオ』
『あー、ハジメだー! 久しぶりー。今日は変な格好しているー。あれ? 誰、その人達』
これくらいの会話は出来るが、聞く方は念話だ。今の会話は念話を使いながら、俺が向こうの言葉で喋っているのだ。
他の奴らも、いっぱい寄ってきた。だが、俺の仲間には警戒している。仕方が無いので、俺は連中に合図して色々とやらせた。
動物の鳴き声や物真似、手品やジャグリング、コンビ漫才などなど。道具は俺が用意しておいた。自衛隊は飲み会が多いし、宴会芸には事欠かない。
コンパで頑張って彼女捕まえないと、門限が厳しいからなかなか女はできないし。デートは土日が定番だ。早めの結婚が吉と言われている。結婚すれば、駐屯地の営舎でなく自宅から通えるし。
当然、ここにいる奴らは、みんな独身だけれども。もう入隊してとっくの昔に2年以上経ったから、結婚したら出られるはずなのだが。
俺は、子供達に御土産の御菓子を配って歩いていた。あの手を切った子もキュッと首に抱きついてくれた。みんな、早速御菓子をパクついていた。
そして、ロミオが日本語で言った。数だけは言えるようにしておいてやったのだ。
「ロク」
いつものを6体出せと。俺は魔物をズラリと並べてやって、にやにやしていた。
「いったい何が始まるんだ?」
記録官の任務を受けている合田が、ビデオカメラ片手に訊ねた。
「なあに、見ていろよ。ここが、俺達の世界とは違うのだという事がわかるさ。しっかり撮れよ」
久しぶりで嬉しいのだろうか。子供達は手に手に刃物を掲げ、満面の笑顔だ。
「お、おい……肇」
うちの連中も、これから何が始まるか察したらしい。
まず首や手足を落として、総がかりで血抜きをしていく。血は流れて下の地面を生臭く濡らす。腸を抜かれていく魔物。
鳴り響く解体のシンフォニー。血の饗宴が始まった。皮が、肉が、血を滴らせて剥がされていく。断ち切られる腱、ゴギゴギと捻じられ外されていく骨。
獣人の子などは特に力がいいので、パーツをはずしていくのは彼らの役割だ。弾や破片なんかも器用にくりぬいていく。
弾は大概抜けているので、手榴弾の破片が残っているとやっかいだが、その辺はおおまかにやって、後は買主がやるらしい。
今度から倒し方を考えるかな。今はイージスの盾魔法もある。
むくつけき自衛隊の一団の顔色が、どんどん悪くなっていく。解体を終えると、例によって飴をせしめてバタバタと餓鬼どもが走り去った。
奴らも随分と手際がよくなったものだ。後には青い顔をした自衛隊員達が取り残されていた。まあ、すぐ慣れるさ。
佐藤はただただ青ざめている。
「これが異世界かあ……」
少し遠い目をした池田が呟いた。
そして、「ケモミミ……」と。
「うん、地球だって国によれば、こんなもんだよね」
と合田。外国の資料とか色々見ているのだろう。
「耳と尻尾は可愛かったよね」
青山君は、どこをスナイプしていたんだ?
「レンジャー目指していると思えば、あんなもんじゃないか?」
ちょっとずれているのは当然のように山崎だ。う、レンジャー訓練を思い出しちまったぜ。
「ま、まあ、次は探索者ギルドとやらか?」
かろうじて、お仕事モードの運転手が踏ん張った。
「ここから500メートルくらいだけどな」
俺達は道行く人の注目を浴びながら、爆音を響かせて探索者ギルドへと行軍した。約1分ほどね。
そして、俺達はクヌード自治管理官スクード・ギュフターブの前で、整列し敬礼をしていた。
『で、スズキ。これは何の冗談だ?』
「そう言われても困るんだけど。あっちも色々事情があってな。ただいま」
『おかえり。で、お前がいうところの御土産とやらはあるのか?』
「うん。実を言うと、それも何がいいのかというのを調べるのも、俺達の仕事という事だ。調査さえやっていれば、後は遊んでいていいと上司から言われている。後ろの連中も似たようなものだ。こいつらは国から雇われているんだけどな。俺の古巣の奴らだ」
スクードは、机に肘を着いて凭れかけながら、ゆったりとこちらを眺めていた。
『つまり、お前はお友達を連れて遊びに来たと?』
「わかっているなら訊くなよ」
そして、俺は色々な物品をマホガニーの高級机の上に並べ立てた。
「で、あんたはどれがいいんだ?」
結局、顔見知りを集めて、御土産の分配を始めた。
スクードはインク汲み上げ式の高級万年筆とインク。アンリさんは基礎化粧品のセット。マメな山崎が使い方を指導している。
こいつは、別にこんな事のために連れてきたわけじゃないんだが、こういう仕事もさらっとこなす。こんな男が何故、風俗通いなのか?
アニーさんには何がいいのか凄く迷った。美人だしなあ。一応油揚げも持ってきてある。
結局ブランドの洋服にした。見た目や映像からサイズを推定しただけなので、ちゃんと適正サイズであるか気になるのだが。確認する勇気は無かったんだ。
奥から師匠がやってきたので、魔法少女変身キットを進呈した。いや、単に魔法少女のコスプレなんだけど。
わざわざ秋葉原まで買いに行ってきたのだ。どれがいいかわからなかったんで大人買いしてきた。
色々広げてみて気に入ったらしい。礼を言ってくれた。本物の魔法使いが、それでいいのかいな。土産の御菓子もあげておいたけど。
ギルドのみんなで、いっぱい買ってきた御伊勢参りの名物を食べた。なんか新鮮な味わいだったらしい。チビ達も結構喜んでいたしな。ちゃんと歯はしっかりと磨かせた。
そして俺達は異世界の宿屋へ目指した。この町の俺達の宿舎になる。
まあ、なんという事はない。前に俺が使っていた宿だ。
『よ! ラーニャ』
ラーニャというのは、最初に出会った宿屋のピンク髪をした少女だ。あまりに可愛らしいので、後ろの男連中がやにさがっている。
『今日は団体さんね。お部屋はどうするの?』
『どんな部屋が空いている?』
『そうね、全員泊まれる部屋は無理ね。4人部屋を2つでどうかしら』
『それでいい。とりあえず、2泊分頼む』
これくらいのトラベル会話はできるようになった。
俺は大銀貨6枚を出したら美少女は鍵を2つ出してくれた。こうして俺達は、異世界における拠点を手にいれた。
次回は、20時に更新します。本日から明日まで2時間おきの更新です。
別作品ですが、初めて本になります。
「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」
http://ncode.syosetu.com/n6339do/
7月10日 ツギクルブックス様より発売です。
https://twitter.com/tugikuru
試し読みページついております。
お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。