2-17 ようこそ異世界へ
「おーい、生きているかあ」
「おーう」
「右に同じ」
「番号4」
「番号5」
「番号6」
「そして7」
「誰だよ!」
「皆の衆、おふざけはなしで。死んだ奴はいねえよな」
さっきのは、なんだったんだ。
「おい肇、ここはどこだ」
俺はずり落ちていた体を引き起こして外をみたが、それは見慣れたあの大広間の風景だった。魔物はいない。代わりに、目をまん丸にした探索者の団体がいくつか。
「よお、お前ら。無事にあっちへ着いたみたいだぜ」
そう言われて、みんなも窓から眺めてみた。大勢いる探索者達が、みんなこっちを見ていた。
「あ、あの子、狼耳なんじゃね?」
「あのおっさん、まんま虎やん」
「魔法少女発見!」
「エルフだよ、エルフ!」
「おおお。剣士っていうの? つうか、あれって戦士じゃね?」
俺達は、無事にクヌードへやってこられたようだ。
『あー、あんたギルマスのとこのスズキじゃない? そんな物に乗っているし』
狼耳娘が可愛く小首を傾げて覗き込む。顔を近づけないと、エンジン音が五月蝿くて声が聞こえないのだ。どよめく、むくつけき野郎ども。
「うっす、お前は確か、ミランダだったか? ちょっと家に帰っていたんだ。今日は友達も連れてきた」
『きゃっはっはっは。問題児が増えた~』
ああ、言われちまったぜ。まさに、その通りだが。ちゃんと念話を使ってくれている。こっちの言葉はまだまだ怪しい。
顔見知りの探索者の連中がわらわらと、やってきて取り囲んだ。
『よお。しばらく見なかったなー。解体場の餓鬼どもが寂びしがっていたぞ』
そうか。じゃ、先にそっちに行くかな。
「じゃあな、お前ら。また正さんの店でなあ」
そう言って探索者達に別れを告げて、俺は車を先に進めさせた。
「なんて言っていたんだ?」
相手の言うことがわからない合田が聞いてくる。一応、色々記録をつけているのだ。
「あいつらは、みんな、正さんの店の常連だ」
「正さん、こっちでも、変わらなさそうだな」
山崎がのほほんと言う。
「まったくね」
「じゃあ、今夜は正さんの店で乾杯だな」
佐藤もご機嫌だ。今日メインで働いていたのはこいつだからな。労ってやろう。
俺達は大広間を出て外へと向かった。この車を見た事が無い奴が、台座に乗った大型クロスボウの狙いを向けたが指揮官が止めてくれた。俺は窓から手を振って、念話で彼に挨拶をする。
「よお、ただいま~。元気していたか、アラン」
『なんか人数増えていないか?』
アランは塀の上から車の中を覗くようにしていた。
「気にするな。全員、正さんとは顔馴染みだ」
『そうか、ならいい』
俺はへらへらと挨拶して非常シャタッタ-ゾーンを越え、無事にこの世界にやってきた。そういや、この世界の事はなんて言うんだろう。俺は何にも知らないわ。
「さっきの、あー、隊長さん? と、何を喋っていたんだ」
でかい声で合田が聞いてくる。もう、この車はやめようか。五月蝿すぎる。他にも色々持ってきたし。ただ、何があるかわからないからな。高機動車だと装備する武装が豆鉄砲になる。
国産車だから、あっちの方が静かで乗り心地もいいけど。無理すればM2も積めるけどなあ。加工せにゃあならんだろう。確か、そのまま付かないって普通科の人が言っていたような。
「ああ、お前らが正さんの知り合いだって言ったら、フリーパスにしてくれたよ」
「正さん、すげえな」
「ぱねえ」
「まあ、正さんの事だからな」
「狐耳のアニーさんは?」
「早く飲みてえ」
最後のは、当然山崎だ。
「まあ、そう焦るな。お前ら、まだ課業が終わる時間じゃないだろう。軽く町を偵察に行こう」
「うっす」
みんな、珍しそうに外の景色を見ている。荷台席なので外が見えない合田は、真ん中のトランスミッションの上に上がり込んでいる。青山もハッチの上からだと(女の子が)見にくいので、合田と雁首並べている。
「ダンジョンを抜けたら、そこは異世界だった」
「捻りが無いな」
「ダンジョンを抜けたら、異世界の抜けるお店だった」
「おーい、まだ日は高いぜ」
「でも、あそこのネコミミのお姉ちゃんなんか、もうたまらんぜ」
「いやいや、貴様ら。あそこの魔法少女を抜きにして何を語る気か」
「おおーっと、エルフさん発見」
俺達の異世界(の女の子)探求は、限りなく続いた。
次回は、18時に更新します。本日から明日まで2時間おきの更新です。
会話シーンがややこしくてすいません。
「」「」は日本語同士、『』『』は英語同士や異世界語同士、「」『』や『」「」の組み合わせは念話を用いた日本語と異世界語の会話です。間違っていたら、作者のミスです。
別作品ですが、初めて本になります。
「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」
http://ncode.syosetu.com/n6339do/
7月10日 ツギクルブックス様より発売です。
お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。