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2-13 アメリカからの依頼

 エバートソン中将は、にこやかに笑うと言った。

「いや、君のおかげで大戦果だ。少なくとも異世界の産物については、今の所アメリカ合衆国が占有している状況だ」


 我が祖国には、お零れは無いんだな。まあ日本政府は締まり屋だし、こういう時は俺の権利は一切無視して「全て接収する」って言い出すからな。


 自衛隊時代なら問答無用だろう。アメリカが金を積んでくれなかったら危なかった。というわけで特に日本政府に同情はしないな。


「そんな、お話をわざわざするために、こんな朝早く?」


 俺が不思議そうな顔をすると、彼はコーヒーを一口啜り、徐に話を切り出した。

「ミスター鈴木。もう1度異世界へ行く気は無いかね」


 いや行く気は満々だけれど、何故あなたがそんな事を?


 俺の戸惑いは既に予想していたのだろう。エバートソン中将は資料を取り出して見せてくれた。現在の米軍の侵攻具合だ。トップシークレットの軍事機密だろう。


 俺はパラパラと資料を捲った。俺もダンジョン内で仕事をしているのだ。第21ダンジョンに限定ではあるものの、大体の話はわかる。


 俺の目を引いたのは全ダンジョンの侵攻具合を示す一覧表だ。ズラリと並んだ棒グラフは規模の大きい順に並んでおり、第21ダンジョンは上から3番目だ。


 上から5つ目までは半分ほどの進捗で、一番下から10個は「コンプリート」 探索終了を示す100%で、グラフは真っ赤に塗られている。その他はその間くらいだろう。


「わかると思うが、下の10個は全ての通路を制圧したが、異世界に出る事はなかった。元々、これが異世界に通じているという発想は我々には無かった。兵士たちが奇妙な夢を見たりしなければな。彼らの異世界夢は未だに終わってはおらん。


 おそらく、全てのダンジョンを探索しつくしたとしても、異世界への通路が現れる事はないだろう。君が消えた、あの場所は調べつくしてみたが何の手がかりも見つける事が出来なかった。君なのだ。君だけがなんらかの方法で、あの世界へ行き、そして帰ってきた」


 ふーん。そう言われてもなあ。行きたいのは、やまやまなんだが。


「エバートソン中将がおっしゃるには、現状あまりにも情報が少ないと。お前の話では、米軍が侵攻したりすれば部隊に大被害は免れまい。実際にお前は魔法を使って見せた。しかも攻撃魔法ですらない、ただの矢の威力を上げるだけの魔法であれだ。


 本職の攻撃魔法部隊にかかったら全滅は免れないだろう。米国世論はその失態を許すまい。ビジネスの話をするにしても話がちゃんと通る連中なのかどうか。お前が言うには封建社会の王国ばかりというじゃないか。とはいえ、迷宮都市は全て自治をしており、話もわかるという。


 向こうのお偉方は、色々とそのへんの見極めをしたいという事だ。あと、異世界へ行く方法についても調査をしてほしいと。できるできないは別にしても、調査を受けてくれるだけで会社に20億払うという話だ。着手の契約で前金10億の支払い、報告書と引き換えに後金の10億が支払われる。


 更に、お前が持ち帰ったものについては、今まで通りに買い取りしてくれると。それは、全部お前の取り分だ。出来れば前回とは違うものも欲しいと言っているが。今までの分も、ちゃんとしかるべき利益は上がっているそうだ。特にミスリルのようなものは、なるべく入手を心がけてほしいとの事だ。宝石類も悪くないと。


 後は先方の希望する物品を調査だな。武器以外で。どうだ? やるんなら、21ダンジョンで遊んでいていいぞ。お前なら魔物にやられてしまう事もあるまい」


 小山田さんが説明してくれた。会社の身分はそのままで、異世界へ行ったり来たりで遊んでいていいって事か。うーん、いいお話だ。会社はやめたくないんだよな。


「自衛隊から、何人か呼んでみていいですか? 特に運転手や砲手、ナビゲーターが欲しい。結構難儀しましたんでね。遠征するとなると、1人じゃきつい。


 この前は、ダンジョンも町の外も、全て日帰りでした。出来れば、交替で野営の見張りをするとなると、5名欲しいですね。現地での滞在費用は俺が持ちますから。武器弾薬や車両燃料などの装備なども俺持ちで」


「わかった。そのへんは、米軍から要請してもらおう。どうせ、お前と仲のいいあいつらだろう」

「よくおわかりで。気心の知れている連中の方が安心です。ハンヴィーで行けば1台分です。戦闘を目的にしているわけじゃないし。まあ連中だって、それなりには動けるでしょ」


 ふっふ。山崎よ、『お仕事で』呼んでやったぜ~。あいつらも、アイテムボックス持ちになったら、さぞかし隊で便利に扱き使われる事になるだろうな。


 みんなで、ちゃんと向こうに行けるといいな。異世界風俗探検隊だ!

 そんな俺の心中を見透かすように、小山田課長は呆れ顔で見ていた。


 俺が送り込んだ異世界の値打ち物は、相当彼ら「雲の上に住む方々」のハートを鷲掴みにしたようだ。正確には、その各国政治家達のスポンサーや、もっと偉いさん達の。彼らからは、「追加オーダー」が入ってきている。無論、アメリカの大富豪達も待ちわびているのだ。


 大統領も方々から、せっつかれている。それで中将に速攻で命令が下った。俺が要求する戦闘機材も無条件で欲しいだけ渡された。


 それが今回の異世界行きの裏事情と言われている。小山田さんが、そっと教えてくれた。俺にとっても、安全保障が強化できた上にザクザク金が入ってくるという良い仕事だ。会社にも、お小遣いくれるそうだし。社長も喜んでくれるだろう。


 次回は、10時に更新します。


 別作品ですが、初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。

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