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2-4 遊園地にて

 ダンジョンが広がってしまったおかげで、至近距離にあった駅がある鉄道線の上側が消失する形となり、我が家は大変な不便を強いられる事になった。


 だが、比較的マイナー路線である私鉄1本と、比較的小さな市町村の消滅で済んだのは僥倖だった。


 周辺の高速道路や幹線道路は軒並み無事で、名古屋市内も一切かからなかった。これが、名古屋のど真ん中や高速道路のジャンクションのど真ん中だったら、洒落にならないところだった。


 周辺の空自も含む自衛隊基地も一つ残らず無事だった。


 だが名古屋市内には、当初は魔物が襲来した。俺もうちと家族がすごく心配だった。だが家族に言わせると、戦闘出動したりダンジョンの警備についたりしている俺の方が心配だったらしいが。


 そんなこんなで遊園地に行こうと思ったら一回下へ降りて、更にマイナー鉄道に乗り換えて右へ行き、そこからまた上へ行かないと行けないという時間と金の無駄になる。それで、俺が送り迎えというわけだ。


 ダンジョン関係の仕事はそこそこ景気がいいので、給料は悪くは無い。危険手当もある程度もらえるので、俺もそれなりにいい給料はもらっていた。


 もっと上等な車も乗れたが、俺は1.8Lハイブリッドのワンボックスに乗っていた。5人家族なので、それで充分だ。


 幸い、全国的にみても空港・新幹線・主要高速道路などは被害を受けていない。更に、東京にダンジョンが発生していないのも大きい。大阪は元々、被害地区ではない。


 それらは不幸中の幸いといってもいいだろう。その反面、1県で10のダンジョンを抱えてしまっているような所も複数ある。愛知県以外の4県は、8~10個のダンジョンを抱えているのだ。


 それらの県は、経済的にかなりヤバイはずだ。日本経済へのその影響は全くの未知数だ。日本の都道府県のうち約1割が将来に渡り、多大なダメージを受けてしまっている。


 株式市場も未だそれを消化しきれていないようだ。5県の中で、もっとも経済的な影響の大きい愛知県の被害が少なかった分は、不幸中の幸いといってもいいかもしれない。


 食後の御茶で寛いでいるとドアチャイムが鳴った。弟の彼女が来たようだ。弟が駆け出していって、すぐに戻ってきて「兄ちゃん、お願い」と強請ってくる。


「じゃ母さん、行ってくるわ」

「気をつけるのよー」


「ダンジョンの中じゃないんだから」

「はいはい」


 何気ない、家族とのやりとりに感じる幸せ。異世界は、もはや俺に取り遠い存在だった。


 俺は車を東に向かって走らせて、国道41号線を北上していった。

「ねえ、お兄さん。ダンジョンの中で行方不明だったって本当?」


 弟の彼女、美希ちゃんが聞いてきた。この子はなかなか可愛い。素直そうな好感の持てる顔立ちに黒いロングの髪がよく似合う。弟と同じ高校1年だ。


「まあね~。これでも元自衛官だし、そう簡単にはくたばらないさ」

「ふうーん」


「それよかさ、兄ちゃん。夕方4時半には迎えに来て。彼女んとこ、遅くなると煩いからさ」

「あいよ」


 国道41号をはずれ目的地へと流した。後ろでふざけている2人を見ると思わず和む。混みだした遊園地の駐車場で2人を降ろした。その際に弟の肩をちょいっと引いて、少し小遣いを渡してやった。


「ありがと、兄ちゃん」

 弟もまだ幼さの残る顔を綻ばせる。


「じゃ、夕方迎えに来るから、ちょっと前に電話寄越せよー。夕方は道路が混むからな」


 俺は、あちこちで色々買い物を済ませて、アイテムボックスに仕舞っていった。


 これが実はこっちでも使えるんだよな。まあ世界の狭間に仕舞ってあるみたいだから、どっち側からでも使えるって言えば、その通りなんだが。


 正さんに頼まれていたものとか、色々買い物をした。


 向こうで岩石とかから、手に入れたきんがあった。たいした量はない。


 金鉱でもなければ、通常は1トンから1g程度取れれば上等な部類だ。まあ厖大な量の岩石を処理したので、それなりには確保した。

 

 うちにあったメッキの安物の形で複製して、金のネックレスとかが作れてしまった。この材料と形でとイメージを持てばいいようだ。


 買い取りをしてもらって少し換金した。結局この程度しか潤わないな。この金で買えるだけ物を仕入れておこう。


 後は解体場のチビ共の御菓子か。スーパーであれやこれや買い込んだ。調味料に缶詰・ラーメン。解体場のチビ公達用に服とかも、つい買ってしまった。何をやっているんだ、俺。


 おっと、酒、酒。こいつばかりは譲れないぜ。


 あいつらは、やっぱり食い物だよな。ジュースもいる。あ、オモチャもありかも。うちの古いのも複製しよう。もう1度行けるかどうかなんてわからないけど、準備だけはしておきたい。


 うちにある、自転車や三輪車に一輪車、キックボードにスケボーと。キャンプ用品あれこれに釣り道具と。


 魔力は余っているな。なかなか、無くならないぞ。そういや、向こうで最後の辺は魔法で魔物を狩りまくっていたしな。かなり魔力が増えているのだろう。大概の物は材料あるし。食い物関係は材料が無いな。


 DIY工具に、溶接機に発電機と。うちは親父の趣味で、こういうのは充実しているし。園芸用品も複製した。PCもコピーする。データをバックアップするのが手間だったけど。


 おっと本は、とりあえず全部仕舞っておくか。CDにDVDと。台所用品も複製していただきだ。また、これがお袋と妹が色んなもの揃えているんだ。うちにある以外の事務用品なんかも欲しいな。


 うちにあった、お好み焼きプレートやたこ焼き鉄板も複製してみた。もう大概の素材は、合成し終わったような気もするな。自衛隊時代に駐屯地の販売店で山盛り集めた、自衛隊用の個人装備も突っ込んでおく。


 あと、親父の日本刀も複製した。支援魔法をかければ、戦車でも切れるはずだ。部活は剣道をやっていたし、自衛隊時代は銃剣道には勤しんだ。


 向こうで使えるマウンテンバイクが欲しい。オフロードバイクがあってもいいかもしれない。これはすぐ買えないな。


 住民票を取ってきてバイク屋へ行ってきた。あと、いい万年筆があるといいかも。買ってこよう。コンロ類も色々あってもいいかもな。バッグも欲しい。順繰りに買いに行った。


 あとファストフードで各種バーガーに、団子に鯛焼き、大判焼きにたこ焼きと。ティッシュにタオルにカップとか。


 うちにある不用品は、みんな貰った。医薬品も時間はかかったが、なんとか複製できた。薬はその他を追加で買ってきた。会社で不用品があったら貰ってこよう。


 あっちの世界と自由に行き来したいんだけど、なんとかならんものだろうか。

 まだ時間があるな。コンビニへ行って、あれこれ商品をゲットした。


 近所の弓具店で弓を買ってみた。弓道の奴と、アーチェリー。クロスボウはすぐには手に入らないのでネットで注文した。帰ったら、もう3時半近かった。


 そろそろ出かけるか。向こうで待っていても、いいだろう。


「母さん、俺、淳達迎えに行ってくるから」

「ああ、気をつけていっておいで」


 俺は渋滞する前に早めに遊園地の駐車場へと辿り着いた。運転席のシートを倒し、異世界で取った写真や映像を再生して見ていた。ふっと見ると、もう時間が結構経ってしまっていた。


 おかしいな。もう4時半を完全に回っているというのに、電話が鳴らない。こっちから、かけても出ないんだよな。


 コール音は、ちゃんと鳴っているんだが。まさか、どっかでエッチしているんじゃあるまいな。もう園は閉める時間だ。


「あ、母さん? 淳の奴、ちっとも電話出ないんだけど、そっちに電話行ってない?」

「来てないわよ。おかしいわねー。遅くなると、美希ちゃんとこは、マズイはずなんだけど」


「だよねえ。あんの馬鹿、何してるんだか。美希ちゃんの携帯番号、わからない?」

「御免、聞いてないわあ」


「じゃあ、迷子の呼び出しをかけちゃる」

「あははは、それいいわ」


 だが、閉園して1時間もたった18時になっても、電話は来なかった。遊園地で繰り返し呼び出しもかけてもらったのだが、連絡はなかった。


 美希ちゃんの家でも大騒ぎで、お袋もてんてこまいだ。まずい、これは何かあった。19時に、ついに美希ちゃんの家族と一緒に、捜索願を出す事になった。


 俺は、遊園地に張り付いていることになった。妹は母親についていて、親父はあちこち走り回っていた。


 俺達は連絡を取り合って永い時を待った。俺が遊園地の事務室で待っていると職員が手紙を手渡してきた。


「さっき、『これをあなたに渡してください』って」

なんだあ?


 次回は、18時に更新します。


 別作品ですが、初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。


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