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1-17 ミスリル

 今日は正さんのところに行って、食い物関係を色々やっていた。


 米軍の納入品で、まずマヨネーズ・ケチャップ・マスタードなどを複製して渡す。あと、何故かソースと醤油も米軍では必需品だったらしい。


 今回は「インスタント味噌汁」がオーダーに入っていた。味噌汁は外国人にも人気が高いな。正さんが喜んでいた。複製できると聞いて、なお歓喜している。


 その他、米軍の支給品の日用品などの複製も渡しておいた。

 タブレット、スマホなんかもある。会社から渡されているものや私物だ。


 そいつには、サバイバルファイルの入った64GBのUSBメモリーが添付されていた。万が一、異世界へ行ってしまった際に必要と思われる知識を纏めて、入れてくれてあった。


 小山田さんの仕業だ。そのへんのラノベマニアの妄想と違い、業務中に社員が実際に異世界遭難するかもしれない事を会社として想定していたという事だ。えらい会社に就職しちまったものだ。実際に、絶賛遭難中だし。


 あと、正さんがパーティ用で持ってきた道具とかを複製しておいた。当然正さんもアイテムボックス持ちだ。


 複製はやり方がよくわからないらしい。一生懸命教えたけど駄目だった。俺もキッチン用品が充実した。


 何かあった時用にハンヴィーも置いていった。エンジンが始動できるかな。やり方は紙には書いておいたのだが。銃はいらないと断られた。正解かな。慣れない人が持つとかえって危ない。


 他にカップ麺、それから米軍兵士が注文していた食事類も置いていく。俺が複製したワインやウイスキー、ビールにはご機嫌だった。日本酒が一番のお気に入りだ。


 子供達の飯も作ってくれたので、市場で材料を仕込んで複製しておいた。最近魔力の量がかなり増えている気がする。


 熟練して扱い量が増えているのか、魔物を倒すと増えるのか、気のせいなのか。よくわからないけど、すぐ回復するようになった気もするし。


 早めに行くと子供達がたまっていた。俺を見かけると、一斉に手を出して、飴を要求する。お昼ご飯は食べていなさそうだ。


 飴は後回しにしてドカっと店を広げてやると、一斉に取り付いて、ばくばくに食っていた。あ、これは、お昼寝タイムに入ってしまわないかな。そう思っていたら、案の定、起きていられなくなったようだ。


 こいつらって、まだ幼稚園くらいの感じがする。大将の奴が1年生くらいじゃないか? そんな奴らが刃物持って、魔物の死体にぶっすりいくものだから最初はかなりビビった。


 解体の方は遅刻だが、まあ、いいか。どうせ、俺が魔物の現物を持っているんだし。そういや、ここに昨日のあいつはいないな。


 子供達が起きたので、みんなで体操する。ある時は元(土木)自衛官。ある時は、車に乗った探索者。またある時は、イカサマなんちゃって(複製)食材コンサルタント。


 そして今日は、ただの体操のお兄さんだな。起伏に富んだ生活はいいもんだ。さあ、魔物解体講習の時間だ。


 遅くなってしまったので車で行くことにした。子供が30人。シート3つに5人ずつ立ってすし詰めだ。


 真ん中のとこにも、いっぱい乗っているし、荷物室のシートの横に入り込んでいる奴もいる。1人、小さい子をお膝に乗せておいた。


 轟音と共にハンヴィーは行く。時速30kmの安全運転で。餓鬼共がはしゃぐ、はしゃぐ。まるで駐屯地解放日にやる戦車の試乗会だ。


 あれは、はしゃぐと落ちるけどな。そこまでお子様な奴は乗せてもらえない。


 ギルドまで500メートルくらいしか離れていないんだけどな。時速30kmの速度で、1分くらいで着いた。


 むしろ乗り降りに時間がかかっている気がする。ギルドの職員がハンヴィーのエンジン音に驚いていたが、じきに慣れるだろ。


『遅かったわね』

 アンリさんがギルドの玄関口から出てきて、出迎えてくれた。俺としたことが、美女を待たせるなんて!


「悪い。子供達に飯を食わせたら、お昼寝しちまった」


 アンリさんは笑って手招きする。今日はちょっとお洒落な感じだ。自衛隊時代のマドンナを思い出すなあ。


 この前の時は探索者スタイルだったが、今日は明るい色のパンツルックに、白いブラウスの上から、可愛いカーディーガンのようなものを羽織っている。もっとも、今から行くのは、ギルドの解体場なのだが。


『ここへ出してちょうだい』

 高さ50cmくらいの大きな解体台の上に、どんっと魔物を出した。


 脳天を殆ど吹き飛ばされた凄まじい死体だ。まるで亀か甲虫のような硬い甲を持っているが、脳天にロケット弾を食らったんじゃな。頭は半分近くが爆ぜてしまっている。


 全長6メートル、幅4メートル、高さ2メートル。うん、おまけに硬いんじゃ、幼稚園児の手には負えないな。首の直径が1メートル以上はある。


 米軍のロケット砲は軽くて小さい奴だが、この程度の奴が頭に食らったら、ひとたまりもない。


 あれは扱いやすいんで俺は好きだ。大きい奴も1本入っていたが扱いにくい。まあ、訓練は必要だな。ああ、自衛隊で使っていた携帯ロケット砲が欲しい。使った事はないんだけどね。


『これはウルボス。この魔物は硬いからねー。肉は美味しいけれど、硬い上にこの図体で解体もしにくいから、大概は僅かばかりを剥ぎ取りし放棄されるのが通常よ。これは、とても高いお肉なの。こんなに丸ごとギルドに入荷するなんて、まずないわ』


 子供達が涎を溢し始める。お前ら、さっきあんなに食ったよね?


 子供の1人が興奮して、ウルボス指差しながら捲くし立てた。アンリさんは首を振って、子供がしょんぼりして俯いてしまった。


「どうしたんだ?」

『あー、いつもみたいに、肉とか骨をもらえるのかと訊いてきたのよ。残念だけど、こいつは捨てるところが無いからね。特に肉は高級品だし』


 日本でもたまに聞くようなタイプの食材だな。そうか。他の子もがっかりしているな。


「いくらか、俺が肉をもらっては駄目かな」

 ちらっと餓鬼どもを見ながら訊いてみた。


『ええ、構わないわよ。あなたがそれでいいのなら』

 彼女は優しい眼で、俺とあの子達を見た。


 やがて解体作業が始まった。見た事のない刃物が出てきた。

「それはなんだい?」

『ああ、見た事ないかな。ミスリルの解体刀よ。これでないと、ウルボスの甲羅は剥がせないわ』


 くっそ、そんないい物があったとは。こいつは欲しい。なんとか手に入れる方法はないだろうか。


 思考が瞬時に超高速回転して、最新のCPUのそれを追い越した。ちょっと思いついたことがある。

「ちょっと貸してくれ。新品同様にしてやろう」


 アイテムボックスに収納して、複製にチャレンジ。出来た。原料の減り具合からすると、うーん、銀か?


 俺がアイテムボックスから取り出した、新品と化したミスリルの解体刀を見て、ギルドの解体人も唸った。他の収納持ちの人にはできないのかな。あ、まさかと思うが……施設科の隊員だったから、身に付いたのか??  整備三昧の施設機材整備の人間じゃなかったんだけど。


『これは凄いな。ギルドで働かないかい?』

「あはは。どうにもならなくなったら、お願いしますよ」

 もし帰れなくて、探索者も出来なくなったら、探索者の武器メンテの仕事なんかいいかもしれないな。


 次回は、19時に更新します。


 初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。


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