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1-12 捕まってしまった

 日本側にもダンジョン内なら魔力みたいなものはあるのだろうか。それなら、いい思いも少しは出来るかもしれないが。日本で、この能力は使えるのだろうか。


 うむ。やっぱり、買い物に行こう。俺はベッドから跳ね起きて部屋を出た。欲にかられて街の探索に励んだ。街行く女の子を眺めつつ。


 近所の店を冷やかして、あちこち梯子したが、宝石のようなものを見かけた。何かこう虹色にギラギラと輝いて、美しい。


 こんなのは日本側のダンジョンでは見た事がない。俺が知らないだけなのかもしれないが、値打ちはありそうだ。


 少なくとも地球には無いもののはずだ。無事に持って帰れたらアメリカがいくらで買ってくれるかな。


 値段を聞いてみた。一つ金貨1枚だ。50個ほどあったので、全部もらった。今度から、収入は、こいつに注ぎ込んでいくかな。


 他の店も回って、もう50個買ってみた。これで、残り金貨117枚か。いつ帰れるものかわからない。生活費として、これくらいは残しておきたいよな。


 翌日は、迷宮に潜る事にした。昨日騒ぎを起こしたのに、特に誰もやってこない。やってきても、話も通じはしないが。この町には治安維持機関みたいなものはないのだろうか?


 言葉が通じないんで、話がさっぱりみえない。


 今回は、燃料も交代用の車両もある。武器弾薬もあるし、更に秘密兵器も一つ増えたのだ。というか、トレーラーに最初から積まれていた。


 洞窟の一つに入り、探査を開始する。10個ほどある入り口の内、今日行くのは2番目だ。最初にここへやってきた時、気がついたら大広間のど真ん中にいたんで、どこから出てきたのか全くわからない。


 世界を超えてしまった影響か、マッピングも全く無い状況だ。この通路を21Bの1~10と名づけた。


 第21ダンジョンB面1号通路~10号通路の意味だ。本当は日本の方がB面なんだけど。全ての経緯は記録しておく。


 万が一俺が死んだりした場合に、記録だけでも残せるように。運がよければ、地球から来た誰かに、それが発見されるかもしれない。


 ライト全開で進む。おっと、探索者の奴らに出くわした。音が凄いんで警戒されている。魔物と勘違いされているかもしれない。


 窓を開けて、大きく手を振る。話しかけてきてくれるが、例によってまったく話が通じない。お互い苦笑いしながら、手を振って分かれる。畜生、言葉さえ通じるなら情報がもらえるかもしれないのに。


 先に進んでいくが、例によってマッピングで迷宮地図が充実するだけだ。ずっと先を踏破すると、どうなるのだろう。


 日本側のルートといつかは巡り合うのだろうか。それとも、世界を越えない限りは無理なのだろうか。


 そして魔物とエンカウントした。今度の奴は大きい。5メートルはありそうだ。日本で会った奴に匹敵する。ヤバイかな。しかし、まだかなり距離がある。


 ハッチを開けて、対戦車ロケット砲を使ってみる。アメリカさんのは自衛隊の物に比べてやや小型の物だった。大型の物もあったが使いづらいし、狭い空間だと後方噴射がきつすぎる。


 小型の方はHEAT弾と破片効果のある物と2種類あった。筒を引き出すタイプだったので、撃ち慣れれば悪くない。一応岩山へ行った際には試射してみた。


 ダンジョン内でも、この距離ならこっちに被害無くいけるはず。HEAT弾を使用する。銃座に当てて、しっかりと狙う。動きなさんなよ。


 派手な後方噴射を残して、発射煙をたなびかせ飛び出した韋駄天は、もさっとした動きのその魔物の頭に命中する。動きがトロイ奴だったんで助かった。篭る熱がヤバイかもしれない。


 ここの通路もそれなりの広さはあるが、外に比べて拡散しない分、後方への熱噴射の影響がきつい。


 後ろの空間は幅30メートル欲しいところだ。周囲の温度が上がる。真後ろなんぞ760度にも達するのだ。これは凄い温度だよ。後ろに人でもいたら、とんでもない事になる。


 温泉施設なんかで、岩を焼いた蒸し焼きサウナとかあるが、あれが800度くらいだ。ちょっと離れても滅茶苦茶に熱い。半端な金属だと溶けてしまう温度なのだ。


 強烈な音響と共に、そいつは倒れた。しばらく待ったが動く気配はない。死んだようだ。この距離でも収納は可能だった。この先に行くと、こいつがゾロゾロ出てくるかもしれないな。


 今日は引き上げよう。狭いところで、少し苦労しながら方向を変える。戻っていく中で、通路の脇に潜んでいた人影に俺は全く気がついていなかった。入り口付近は人が多い。交通事故になるのを恐れて、ゆっくり行く。


 大広間で例によって、車を収納して歩いていくと、外の「非常シャッター」を越えたあたりで、突然女の子に左腕を捕まれた。そのまま抱え込まれてしまった。


 いきなりの柔らかな肉球の感触に脳味噌がぶっとびそうになったが、自衛隊での訓練の賜物だろうか。頭の中で、何かが警鐘を鳴らしている。


 如何にも男好きのする、といった感じの可愛い子が上目遣いで見上げている。これを振り払うのは、やっかいというか、不可能というか。だが、俺は冷静な表情で彼女を見下ろしていた。その上で、腕は振り払わない。


 いずれ、こういう事はあると思っていたよ。そんな眼差しを向けておいた。そういうのは、案外と通じるものだ。目は思うよりも多くを語ってくれる。


 彼女は、いたずらっぽい感じの目で俺を見ると、あえて胸を押し付けてきた。


 これは多分、俺の態度に感心したというか、好感を持ったと受け止めるべきなんだろう。そして、今すぐ危害を加えるつもりはないのよ、というメッセージも含む行動なのだ。


 それらの行動から彼女がなんらかの、この町の治安を司る機関に籍を置く人間なのだろうと推察できる。


 要は俺を取り調べの場に、穏便に連れて行きたいのだ。どの道、同行は避けられない。向こうも言葉が通じないので、敵意が無いという意思表示をしたのだろう。


 いきなり男達に取り囲まれると、どういう反応を示すかは、観察していたのだろうからな。


 俺は帰還のために、この町を離れるわけにはいかない。ここをベースに活動しないといけないのだ。揉めるのはまずかろう。行かざるを得ない。


 連れていかれたのは、広場のすぐ傍にある一際大きな石造りの建物だった。俺も何度と無く目にはしたのだが、何の建物なのかは、さっぱりわからない。目立つ大きな旗が立っている。


 剣などを描いた旗なので、物騒だなと思い近付くのはやめたんだ。だが、彼女はぐいぐいと俺を引っ張って入っていった。


 通りすがる人が、皆彼女に挨拶をしていく。名前はアンリと言うようだ。


 そして、一際立派な木のドアの付いた部屋へと、連れていかれた。


 そこは広く、立派でなんというか、まるで社長室のような雰囲気があった。そして、見事なマホガニーのような机に座っていた人物が声をかけてきた。


 パリっとした、しかし鮮やかな身のこなし。退役軍人を思い起こさせる所作だ。俺も出身的に好感が持てる。


 それなりの年齢に見えるが、さぞかし女にモテそうなロマンスグレーだ。白いものの混じりだした金髪も、むしろ年輪とみれば魅力的かもしれない。


『やあ、君はもしかして、よその世界からやってきた人なのかな? 君が使う不思議な物の数々、あんなものはこの世界にはない。ここの世界にも、かつてそんな話があったと伝え聞くが』 


 次回は、朝6時に更新します。


 初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。

http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html

 こちらはツギクルブックス様の専用ページです。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。


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