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こんな夢を見た-トマトと居酒屋のオカマ店主

作者:青葉台旭
 私は、友人と五人で、良く晴れた昼前の六本木の通りを歩いていた。
 ふと雑居ビルの軒先を見ると、木の台に段ボールが置いてあった。
 段ボールの中には良く熟したトマトが(いく)つか入っていて、段ボールの切れ端で作った立札にマジックで「一個百円」と書いてあった。
 立札の隣には、小さな貯金箱のようなものも置いてあった。
 わたしは急にそのトマトが食べたくなり、貯金箱に百円を入れて一つ手に取った。
 そのまま歩きながら、真っ赤なトマトを(かじ)った。
 しかし、予想以上に熟しすぎていて食感が悪く、(うま)くなかった。
(思ったより不味(まず)いな)
 私は思った。
「おいっ」
 うしろから、友人の一人が私に呼びかけながら肩に手を置いた。
 振り返るとその友人が「居酒屋のマスターが泣いているぞ」と言った。
 友人のさらに後ろを見ると、見るからにオカマといった感じの()せた男が、体をくねくねさせながら、しきりに「ひどい、ひどい」と言って泣いていた。
「彼は、どうしたんだ?」と私が友人に尋ねると、その友人は「お前が、トマトを不味(まず)いと言ったから、それで傷ついて泣いているんだ」と言った。
 どうやら、痩せた男は無人路上販売のトマトの売主らしかった。
 私は、不思議に思った。確かに心の中で(不味(まず)い)と思ったのは事実だが、声に出して言った記憶は無い。……それとも、無意識のうちに(つぶや)いていたのだろうか?
 友人が「お()びに彼の店へ行こう」と言って、トマトの無人販売をしている雑居ビルの方へスタスタと歩いて行った。
 私も友人に()いて行った。
 居酒屋の亭主だというオカマの男と、私以外の友人四人は雑居ビルの狭い階段をぞろぞろと昇って行った。
 私も、その最後尾について階段を上った。
 居酒屋は三階にあった。
 和風のカウンターと、テーブルが三つ四つあるだけの狭い居酒屋だった。
 私は、何となく、仕方なく、カウンターに座った。
 座ると同時に出入り口からぞろぞろと客が入ってきて、あっという間に店は一杯になった。
 カウンターの向こうで亭主が忙しそうに料理を作り始めた。
「俺たちも手伝おう」突然、友人の一人が言った。
「そうだ、そうだ、手伝おう」他の友人たちも口々に同意して、私以外の四人の友人はカウンターの向こう側に入ってしまった。
 店の亭主と私の友人四人が立つと、それだけで身動きが取れなくなるほどカウンターの向こう側は狭かった。
 それでも四人の友人は何故(なぜ)か楽しそうに並んで料理を作り始めた。
 私は一人だけカウンターの外側に座って料理を待った。
 友人たちは器用に魚を(さば)いて刺身皿に盛って、私の目の前にトンッと置いた。
「へい、お待ち!」
 友人の一人が言った。
 私は友人の作った刺身を食べようかどうしようか迷った。

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