置いてきぼりの心に紫陽花を
泣きたいと思ったのはいつの日のことだろう?
それでも涙は出なかったのだろうけれど。
音もなく降る雨は、好き。
だって私の代わりに泣いてくれている気がするから。
いつだって私は泣けないまま、この日を生きてきた。
でもあまりいいものじゃないわね。
人は泣くのが普通だからかしら?
泣けない私は、いっつも一線をおいて見ていた。
一緒に走り回った草原も、花冠を造って虫を隠したいたずらも
すべてはたのしいの記憶のはずなのに、色あせてさえ感じる。
この記憶は本当に私の記憶なのだろうか?
そんなばかげた疑問さえ浮かんでくる。
泣けば・・・
泣くことができれば、この心は少しは報われたのだろうか?
紫陽花の香りに誘われて
こんなところまで来てしまった馬鹿な私。
もうここにあなたはいないのに。
そう、ここにいるのは
あの日
あなたが逝ったあの日
泣けなかった私だけ・・・・