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坂道
作:夕氷 京


 私の目には、いつもにはない風景が写っていた。とうとう来てしまった、と私は思った。私は男子達にどれだけ暴力を振るわれても、女子達にどれだけ口汚くののしられてもどうすることも出来なかった。これまで、こんな事を私は平気でやってきたのだから。こうされて当然なのだ。
 いじめが始まってから1ヶ月がたった。自分がいじめをしていたからこそ、親に相談することも出来ず、先生に言いつけることもできず、一人悩んでいた頃だ。やっと家に帰って落ち着くことが出来る、そう思ったときだった。ふっ、と目の前に何かが通り過ぎた。蝶だ。どこかへ向かって飛んでいく。もうこんな時期に蝶が? そう思い、吸い寄せられるように私は蝶を追いかけた。
 蝶は私を森の中へと誘い込んだ。こんなところに森なんかあったっけ、そう思うが足は蝶を追いかける。その森を抜けるとそこには。湖があった。とても汚い湖で、
『穢れている』
そう思ったほどだ。だが、どこからか
「どんなことがあっても、あなたなら頑張れるはずだよ。一緒に、頑張ろう?」
という声が聞こえてきた。すると、穢れていた水が一瞬にして綺麗になり、湖の底が見えた。穢れていた湖だとわかっているのに、喉が渇いていたので私が湖の水を一口飲むと、辺りは真っ白になった。
 気がつくとそこは蝶を見た家の前だった。何だったのだろう、そう思いながら家に入ろうとすると、私は誰かに呼び止められた。
優奈ゆな!」
それは、昔友達だった真希まきだ。今は香子という女子率いるいじめグループの一員だ。
「優奈、ごめん! あたし、香子に脅迫されてんだ……。だから、香子に口答えできなくて……。」
真希は涙を流していた。私は、さっきの蝶が何を言いたかったかが解ったような気がした。あの見かけない森は、私の今の心の中なのだ。だが蝶は、私の行くべき道を教えてくれた。それは、蝶からの贈り物なのかもしれない。
 いじめは今なお続いているが、私には『真希』と『蝶からの贈り物』がある。今は坂道だが、いずれ下り坂になるだろう。私と真希は、今も坂道を懸命に上っている。














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