【Epirogue】心理的平行
一体何を焦っていたのか。
幻が解けてみれば、ループ世界は始点へと戻る。
荒野の赤焼けに消えて行く白の巨塔は、こんなに近くに在りながらも遠く虚ろ気だった。
天国への門に構えていた二人の天使が、もうお別れだと呟く。そして、マイキーもさようならと返した。
ラッパを吹く子供達が奏でる音色はレクイエムのように悲しい旋律が脳裏を過ぎる。
これは僕から僕への鎮魂歌だ。最後に高笑いと共に消えて行った微笑の少年はお前だった。そして、悲しみに泣く少女は僕自身だった。
始めからお前は僕の中にずっと居たんだ。そして、これからもずっとな。
お前を模倣者と呼ぶつもりは無いよ。これはただの記号さ。
僕が僕である限り、お前は永久に模倣者なんだよ。それはお前にとっての僕でもある。
プログラムで統制された世界が生んだ幻覚。
今なら確信できる。映し出された虚像は全て創られたグラフィックス。
始めからそれらは何一つとして言葉など発していなかった。
それらは全てマイキーが作り出した幻だったのだ。
恐慌作用が生み出した幻覚はマイキーに一つの事実を認識させる。
これは心理的克服じゃない。心理的平行だ。
満身創痍の身体を引き摺って、マーシェ・ネス・エーベルへと帰宅したマイキーを出迎えた者はいつもと変わらず優しい仲間達の笑顔だった。
アイネ、ジャック、キティ、タピオ、ナディア、テトラ。
「おかえりなさい」
彼らの眼差しにはかつてのマイキーが映し出されていた。
「ただいま」
その言葉に溢れる想いが零れ出す。
熱い抱擁を交わしながら涙が零される。
マイキーの瞳からもまた誰にも見せる事のない輝きに満ちていた。
――少しだけ強くなったと思う。少しだけ。少しだけ――

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