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手紙
作:しみちゃん


あなたは不幸の手紙が届いたらどうしますか?
捨てますか?
それとも手紙の指示に従いますか?
はたまた気にせずに放置しますか?

ある日突然届いた手紙。
俺の『死』のカウントダウンは始まった―…

俺は日崎雄也。
新月の夜突然とどいた手紙で俺の運命は決まってしまった。

『この手紙が届いた貴方は満月の日までの午前0時、人の首を刎ねて井戸に沈めて下さい。
実行しなければ貴方は死にます。
満月まであと十六日。貴方の命も十六日。』

ありえねぇ―…

俺はその手紙を放置したままだった。

次の日、もう一通手紙が届いた。
『満月まであと十五。貴方の命も十五日。』
手の込んだ悪戯だ。
気にするな…。
気分があまり冴えないまま学校へ行った。

「何暗ぇ顔してんだよ!」
「魁斗…。」
魁斗は小学校からの付き合い、つまり腐れ縁ってやつだ。
「別に何でもねぇよ。只…。」
「只なんだよ?」
「最近の悪戯って性質悪ぃのな。」
「はぁ?」
「昨日不幸の手紙みてぇなのがポストに入っててよ、気にせずに放置してたんだわ。
でもお前の命はあと何日だみたいな手紙がまた入ってたんだよ。
気味悪くてよぉ、まじやってらんねぇ。」
「不幸の手紙!小学校のころ流行ったな、そういや。
てか今更不幸の手紙書く古風な奴居たんだ!!」
「居たんですよ。実際。」

家へ帰る。
リビングの机の上には冷めた夕飯と書置き。
親父は単身赴任。
それを良い事に母さんは浮気相手に毎日会いに行っている。
胸糞悪ぃ。

自分の部屋でボーっとしているとベランダの窓がコツンと音を立てた。
あいつか…。
そう思いながらカーテンを開けた。
やっぱりアイツが居た。
窓を開けてやる。
「何の用だよ?」
窓の外に居たのは幼馴染の楓。
家が隣接しているから何時も玄関からじゃなく窓から入って来る。
「別にぃ。魁斗から雄ちゃんがしょぼくれてるって聞いたから冷やかしに来ただけぇ。
「なんだそれ…。」
「てか不幸の手紙来たんだって?ウケるんですケド!その手紙見せてよ!」
俺は昨日届いた手紙と今日届いた手紙の二通を楓に見せた。
その途端、楓の表情が曇った…。
「雄ちゃん…。これ気を付けた方が良いかもよ…。」
「どういう意味だよ。」
「昨日の朝刊ある?あったら借して。」
1階に探しに行く。
いつも新聞は階段の下にある物置にためている。
「おらよ。有ったぞ、昨日の朝刊。」
投げた新聞をキャッチして楓はある記事を捜し始めた。
「雄ちゃん、これ見て。」
その記事には
ある都市の井戸から生首が見つかった事。
近くに体も放置してあり、殺されたのは約二週間ほど前だと書いてあった。

「雄ちゃん。二週間前って事は先月の満月の日だよね。」
「こんなの…只の偶然だ!!俺には関係ない!出て行ってくれ!!」
そういうと楓は『ごめん…』と言って部屋を出て行った。

次の日、また手紙が届いていた。
書いてる内容は同じだと思って手紙を読んだ。
『満月まであと十四日。貴方の命の十四日。
早くターゲットを決めないとね?
そうしないと僕が君を殺しちゃうから。』

突如全身に悪寒が走った。
背後からかすかに幼い声がした。
(ボクガコロシテアゲル…)

何時も通り学校へ行く。
学校へ行く途中で一人の男子とぶつかり思いっきり睨まれた。
確か…あいつは2組の…笠松か…。
『そういやあいつ最近荒れてんな』と思いながら学校を目指して歩いていく。

教室に入ると魁斗が話掛けて来た。
「はよっす。また手紙来たんか?」
「はよ。来たぜ、内容進化してたけどな。」
「そうそう。知ってるか?
こないだの朝刊に書いてあったんだけどよ、どっかの井戸から生首見つかったんだってよ。
んで犯人が捕まったらしいんだけど『手紙が…殺される!!』しか言わねえんだってよ。」
「そいつの名前…解かるか…?」
「覚えてねぇけど今日の新聞見たら解かるんじゃね?」
「俺ちょっと帰るわ…。」
そう言って俺は走り出した。
後ろから魁斗の静止の声が聞こえたけど関係ねぇ。

家に帰って今日と一昨日の新聞を出す。
生首が見つかった井戸があるのはY市。
ここからすぐ近くの距離にある田舎だ。
犯人の名前は沢松悠基。

俺はY市に行った。
『沢松悠基』に会う為に。

駅に行く途中に笠松に会った。
「おい。」
笠松に呼び止められる。
「なんだよ。今急いでるんだよ!」
「別にどうって事ねぇよ。只後二週間の命を大切にするんだな。」
そういって笠松はどこかへ行った。

何でその事を知っているんだ…!?

とりあえず俺はY市に行った。
市役所や交番を回って沢松悠基の家に着いた。
インターホンを押すと沢松の母らしき人が出てきた。
「何の御用ですか?」
「俺、日崎雄也て言います。沢松悠基に最近手紙が届きませんでしたか?」
「あれの事かねぇ。ちょっと待っとり。」
そう言って家に入っていった。
暫くして手紙を手に持っておばさんが玄関にやって来た。
「これの事かねぇ?」
差し出された手紙を開くと…
俺に届いた手紙と同じ事が書いてあった。
「おばさん。沢松悠基は今どこに居ますか?」
「病院の閉鎖病棟に居るよ。もう会えないけどね…。」
おばさんは悲しそうに微笑んだ。
沢松悠基の家を後にし、俺は家に帰った。

電話のランプが光っている。
留守禄か…?
電話のボタンを押した。
すると子供の声が聞こえてきた。
幼い声とは裏腹におぞましい科白が聞こえた。

(ねぇ…ボクの友達になってよ…。ボクと一緒に居てよ。ボクと一緒に逝こう。コロシテアゲル…。)

今朝聞こえた声と一緒だった。

何なんだ、一体。
俺にどうしろって言うんだ!?
俺が何かしたのかよ…。
狂ってしまいそうだっ!

そういえば何で笠松は俺に手紙が届いてる事を知っているんだ?
あいつは…
この手紙の秘密を知っているのか…?

眠れぬまま朝を迎えた。
やはり手紙が来ていた。
読みたくないのに、手にしたくないのに、何故か手が伸びてしまう。
何かに操られる様に―…

『満月まで十三日。貴方の命も十三日
ボクの事をいくら調べても無駄だよ。
留守禄聞いた?
ボク友達居ないんだぁ。
だから君の友達を一人もらって行くね。』

何時もより早い登校。
7:00に家を出た。
登校中に魁斗に会った。
「はよっす。今日は早いのな。」
「昨日寝れなくてな。暇だし。」
「あんな手紙いつまでも気にすんじゃねぇよ!元気だせ!!」

トラックがこっちに向かって走ってくる。
今は信号が青のはず…。
俺は走って逃げた。
でも反応が遅れた魁斗は…
トラックに撥ねられた。
首だけが飛んできて目を見開いたまま空の一点を見つめている。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
叫んだ。

気が着くと自分の部屋に居た。
時計を見ると今は7:00。
夢…か。
性質の悪い夢だ。
リビングに下りると机の上に手紙があった。
そこには夢でみたあの手紙と同じ内容。
嫌な予感がする…。

突然電話が鳴った。
連絡網だった。
しかし内容はあまりにも信じ難いものだった。
『二年四組の朝河魁斗君が亡くなりました。通夜については後日連絡となります。次の人に回して下さい。』
魁斗が…死んだ…?

学校に行くと全員泣いていた。
クラスの中心人物であった魁斗。
何で魁斗が死んだんだ…?

魁斗の事があって学校はHRだけで終わった。
帰る途中笠松に会った。
「二週間切ったぜ。お前が早く実行しねえから朝河は死んだのかもなぁ?」
「お前は手紙について何か知ってんのか!言えよ!!」
「内心自分が死ぬの怖いけど朝河も死ねば怖くねぇってか?卑しいなぁ。さもしいなぁ。」
笠松はニヤニヤしながら言うと消えた。

俺は魁斗の通夜にも告別式にも行かなかった。
いや行けなかった。
あれからずっと笠松の声が耳に木霊している。
俺が…魁斗を殺したんだ…。
手紙は毎日届いている。
『満月まであと十日。貴方の命もあと十日。
君の友達貰っちゃた。
君が悪いんだよ。
次は誰にしようかな。
次は女の子が良いな。』

女の子…楓!!
俺はベランダから楓の部屋の窓を叩いた。
楓は無事だった。
俺はある決心をした。
「何…?」
泣きはらしたのか目が腫れて、幾分声も枯れている。
「楓…よく聞いてくれ。何があっても今日は部屋から出るな…。」
「…何でよ…。」
「いいから…。俺の最後の頼みごとだから…、お願いだから聞いてくれ…。」
泣きながら言った。
人前で泣くのは何時振りだろうか?
「…わかった。でも何で?」
「理由は言えない。
それと…俺…楓の事好きだった。バイバイ…。」
そう言って俺は自分の部屋のカーテンを閉め、家を出た。
手に鎌を持って…。

PM11:59
俺はY市の山にある古井戸の前に居る。
鎌にロープを括り着けロープの両端を後ろにある木に括っている。
そしてその括った鎌が今自分の首に宛がわれている。
このまま体を前に倒す。
それだけで死ねる。
落ちた首は井戸に入る。
あと1分で0時だ。

カサっと後ろで足音がした。
「死ぬのか?」
後ろに居たのは笠松だった。
「あぁ…。」
「最期に一つ教えてやる。俺はお前。お前は俺だ。」
「はっ。そういう事だったのか…。つまりお前はもう一人の人格ってわけか…。」
「そういうこった。じゃあな。」
そういって俺はロープに体重をかけた。
俺の意識はそこで途絶えた。

AM0:00
日崎が死ぬ瞬間を…首が井戸に落ちる瞬間を一人の少女…楓が見ていた。
彼女の隣には一人の小さな男の子。
「これで良かった?」
『うん!』
そう言って男の子は空へと消えた。

楓は首のない雄也の体に近づいた。
そして冷たく笑った。
「私はまだ死にたくないからね、利用させてもらったよ。朝河も。」

そう。雄也に届いた手紙は彼女の物。
留守禄も彼女が入れた物。
朝河魁斗を殺したのも彼女。
全ては自分が生きる為に…。

「朝河も居るから寂しくないでしょ…雄也…。」
そう言った彼女の目には一筋の涙が流れていた。
「バイバイ雄也…。私もあんたの事嫌いではなかったよ。」

人間は怖い。
何時の時代も卑しくさもしい。
自分が生きる為に愛するモノまでをも犠牲にするのだから。
けれどだからこそ大切な存在が輝いて見えるのでしょうね。



























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