【81話】幼馴染みとして【後編】
普段は全然頼りなくて、変な時にはヤケに頼れる。
まったくその通りだ。うん。オレは……魅夜に対して……不器用だった。
アイツにはアイツなりに望んでいた事があっただろう……でもさ……あの頃のオレは恐かったんだ、唯一のオレの居場所だった彼女にどうやって接すれば良いのかさっぱりだった。
「和也は……なんで……いつも逃げるの?」
そうだ……オレは嫌われるのが怖くて……魅夜に何も出来なかった。
本音とは違って……逃げてた。
「……………」
「大事な事だけ答えないし……なんで、強いのに逃げるの!?」
「……………」
逃げるしかない……なかった。オレは恐がりだから。臆病だから。
何時も…影で脅えていて……これからの展開に予測がついてる筈なのに……あと1歩が出ないんだ…弱いから……恐いから、逃げてた。
だって、自分がもう長くないと聞かされて…更には、唯一の拠り所であった、魅夜までも失ったら…オレは……全てを失っていて、自分がおかしくなった筈だ……さもなければ、オレは自殺でもしたのだろう……。それ程、オレの中で魅夜はそれまで大事だった。何より大切だった。
今……わかった。オレが魅夜に寄せてるのは好意じゃないんだ……。
これは…多分…居場所。心の拠り所……そんな気持ちを押し付けていたんだ。身勝手に……自分勝手にアイツに押しつけてたんだ。自分が心地良いからって……。本当に……オレは弱いヤツだ……。
強いのは……力だけだ。その反面……オレは弱いんだ何よりも……誰よりも心が打たれ弱いんだ。何時も逃げてるのはそのせいで、後ろを振り向けないのもオレが弱いから。
「強くなんか……ない」
「ううん。和也は確かに弱い存在だよ? 和也だけじゃない……私も…他のみんなも」
オレはその言葉に疑問を感じて魅夜を見る。アイツは何時も通りの笑顔でオレを見つめる、その笑顔に軽くオレは恐怖するものの、魅夜から視線をはずさない。
「人ってみんなそうだんもん」
その一言でアイツは切り捨てる。
「人って、一人じゃ弱いままだもん」
そうして、続ける。
オレは呆然と眺めるだけでなにもしない。
「私の支えは和也だった。だから“人”になった。和也が居ないと支えがなくて“一”だもん」
「いち?」
「そう。支えが無くて、他になにも無い孤独の漢字」
金○先生か? ……エロワードっぽいぞ? ソコに伏字を使うと。
「…………」
「今の和也は“一”なんだよ。支えがなくて倒れた漢字」
その通りだ。オレは真っ直ぐにしか進まないし、何も支えというモノがない。
だって、支えが無くなったから……“オレの”支えじゃないから……。
オレは……孤独で良いんだ……。
「私も…今は“一”なんだ。凄く……虚無感があるの……彼方が居ないから」
「違う! 魅夜には沢山の支えになるヤツが居る! オレみたいな不安定な存在より!
第一……本当の俺が居る…アイツが支えになるし、目を覚ました時にアイツにはお前が必要なんだ! アイツが魅夜の支えに相応しいんだ! オレなんか……存在異議はただのパーツでしかなくて……だから!! オレには何も必要なんかないんだ! 使い終わった…遊び飽きた玩具と同じでそのまま捨ててくれればいいんだ! もう、何も必要ない! もうなにもしなくて良い! オレを放って置いてくれよ! オレに……優しさをぉ……見せないでぇ……くれッ! っっ……オレは……このまま……孤独でぇ……良いんだ……オレは……何も必要ない。優しさなんかっ……不必要だ……オレは一人で十分なんだ……満足してる……孤独のままで……良いんだ。ずっと、このままで良いんだ! オレは……このままで居させてくれ……あの居場所を……オレが1番好きな……好き“だった”場所を思い出させないでくれ!! 惑わさないでくれ……オレにはもう、必要ないんだ……なにも。だから……なにも感じさせないでくれ……このままで……いいからっっ……。ただ、傍観してるだけで良いんだ……だから……放っておいてくれないか? オレは……もう、なにも……できないから……お前等に出来る事は無いんだ……このままで……もう、精一杯なんだよ……疲れたんだ……。
だから、もう、関らないでくれ……静かにさせてくれ……オレは……なによりも、弱い存在だから…自分でもどうしようもないから……」
上擦った声で…オレは嘆く。どうしようもない苦しさに浚われて……涙が毀れて如何し様もなかったんだ。自分の弱さを始めて本気で喋った、自分でも恐ろしい程のマシンガントーク。その分にオレの弱さがぎっしり詰まってって……胸が如何し様もなく苦しくて……ただ、嘆くだけ。
魅夜は優しい笑顔で、言う。
「自分の弱さを知ってるから……私も、和也も強いんだよ」
違う。オレは弱いんだ。
「だって、自分の根本にある弱みなんて……自分でも向き合わないもん。それを、考える事も避けてしまうから……。でも、和也もソレにちゃんと向き合ってる。自分の弱い所を知っているからであって…誰しもが逃げてる場所に負けを覚悟して挑んでる……」
オレは涙を袖で拭って魅夜を見直す
「それって、凄い事だよ? 負け試合を挑むなんて誰もやらないもんね……特にプライドがちょっとだけ高い和也が♪ だから、尚更凄い事なんだよ。そして、和也はソレを曝け出した……ソレはもう凄いを通り越して強いんだよ……それに和也は自分の事を既に倒して……本来の自分を見ている……彼の闇と無断で戦って自分を傷つけてる……」
魅夜は、相も変わらずに優しいその笑顔でオレを真っ直ぐ見て続ける。
よく見ると、なにやら聖女みたいな感じが漂っていて……何故かまた涙が溢れ出してくる。
ワケのわからない事に戸惑うが、魅夜はそんなオレを気にせずに続ける。
「傷だらけになっても崩れないで……そして、その責務…っていうのかな?
彼に償いがしきれない…出来ない自分が不愉快で……ソレを……その責務を忘れさしてしまいそうな私達を遠ざける……けれど、私達はずっと彼方を追いかけてる……私には……いえ、私達には彼方が必要だから……私達をずっと支えてくれたのは彼方だから……」
涙が止まらなくて……嗚咽をなんども漏らしてしまう。胸が如何し様もなくて苦しくて…自分ではどうにも出来ないほど……涙も、嗚咽も、胸の苦しみも納まらない。
全てのコントロールが出来なくて……。
オレは……泣いてるって自覚した。
「だから……私達が彼方に借りを返す為に……彼方の支えになりたいから来たの」
「オレは…………」
嗚咽の収まらなくて、まるで蚊の鳴くような小さな声でオレは呟いた。
「いいんだよ、本当の弱音を吐いて」
脆く膝を付いてしまったオレを優しく抱きしめて魅夜はそう呟く。
どうやら……コイツには隠し事は不可能だったみたいだ……誰よりもオレと居た時間の長い彼女にはオレは適わないんだ……。幼馴染み……オレのでは無いけれども、オレの幼馴染み……何よりも大切な存在……ソイツは最初からオレの居場所を知っていて見ぬ振りをしながらオレが出てくるのを待っていたんだ……強がって出てこないオレを尻目に見ながら……。
適わないや……。ソレに気がついたオレは出てくる。ずっと隠して来た弱みが……。
「オレにっ……居場所をください」
そう呟くオレを、アイツは……いや、あいつ等は笑顔でこう言う。
「おかえり、和也♪」
その言葉に……本格的に泣き出してしまう。
オレは……自分で見ぬ振りをしていた弱音を大人しく出るのを待たないで……魅夜に急かされて見つけ出してしまう。そして、隠れていた表のオレは魅夜に負けて出てくる。
溜め込んでいたものが、全て溢れてしまって……どうしようも無く呟いた言葉を……
快く、了承してくれた……オレの小さなワガママ。『自分が休める場所』俺ではない、オレの休む場所……居場所を……。みんなが居る、アソコを……。
「……ううっ…」
「我慢できないなら、しない方が良いよ。私しか聞いてないから」
「うわああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
今晩、オレは生きていて始めて……本気で泣きじゃれた。
ずっとずっと……オレは止まらない涙に……身を委ねるばかりであって……どうしようも無かった。
傍に居てくれた魅夜の体温が……何よりも……心地良かった。
―Naito Uduki―
「…………」
「瑞穂?」
急に立ち止まる瑞穂に僕は多少、焦りながら訪ねる。
もしかしたら、アイツ等かもしれないかであって……何時でも逃げる準備は万端だ。
だ、誰だ!? 「ダサッ…」って呟いたのは!? そして、何故か否定できない自分がぁぁ…
「………動いた」
「?」
確かに彼女は意味不明であるが……動いたってなにが?
そうこう言っている内に僕は端の一部の組織に潜入して撮った写真を眺めていた。
コレはなかなかのモノであって凄く貴重なものであった。
突風によって指先に掴んでいた写真が空を舞う。
当然、僕は全力で手を挙げるが届かない、空を舞っていた写真がプツリと消えて、ソレを追うとその先には瑞穂が掴んでいた。
「あ、ありがとう……」
僕の言葉に瑞穂は反応せずに写真に穴が空くように食い入る。
その写真に写っていたのは無数の黒い機械的ななにか、珍しく瑞穂は顔を青ざめて呟いた。
「相剋魔神機……」
「は?」
冷たい旋風が、僕の前を駆けた。
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