【73話】オレ【後編/出会い】
「ワシは席を外そうか」
梨由じぃいは、短く答えて隔離された部屋から出る。
取り残されたオレは、ただ…オリジナルが横たわるベットを見詰めるだけ。
白の世界はオレの闇を真っ白にさせるかのように、“無”へ誘う。
徐々になにかしらを考えるのもメンド臭くなり、オレはそっと、ベットのすぐ傍にある椅子に凭れ掛かる。パイプ椅子は【ぎぃ…】と、鈍い音を奏でてそれは、部屋に響きわたる。
皺すらない布団や、自分を見返す。何一つ自分と変わらない顔立ちに…全てのものにオレは……なにを思ったのだろうか?
イヤ、白い世界に包まれて無心だったんだ。
わかっているんだが、コレが夢や嘘である事を少しか期待していたんだろう。
でも、現実で…。
だから、泣いた。
何故? 辛いから
逃げたいから?
イヤ、幾ら逃げてもココに辿りついただろう。
同じ者を引きつける“運命”なのだろうか?
だったら……どうする?
逃げられない……闇に挟み撃ちに合ってる。
簡単だ……。
立ち向かえば良い。
なら、オレが言う言葉は?
オレは……こう言おう。自分自身…イヤ、自分他身に。
「はじめまして」
短く。オレは言う。
オレは、涙を親指で拭い、そして……。
「ごめんなさい」
そう言う。
活きていてゴメンナサイ。
恋をしてゴメンナサイ。
偽っていてゴメンナサイ。
壊してゴメンナサイ。
住んでいてゴメンナサイ。
キミの存在を何と無く気がついていて……でも。
捜さなくて……ゴメンナサイ。
「ありがとう」
こうも言う。
オレの生きている“元”になってくれて、アリガトウ。
今まで、黙ってくれていて、アリガトウ。
住む場所を……、アリガトウ。
恋を……アリガトウ。
何回か、命を助けてくれて、アリガトウ。
オレの日常を……オレの道を、例え……仮初であったとしても。
キミの、道を走らせてくれて、アリガトウ。
「………………………」
オレは、そこから、言葉を発しなくなった。
暫らくして、梨由じぃが入って来た。様子を2、3回確認して、反対側の椅子に腰を落す。
そして、真っ直ぐと……オレを直視した。
オレは、息を呑み。続く言葉にしかと集中する。
「お主の中に、オリジナルは居る」
それは、気がついている。レプリカだと聞かされて無数の空白の時間の謎が解かれた。
その時点で、うすうすと、心臓の事が頭に過ぎった。
簡単な事だ、移植された心臓で、ごく稀にある事らしい。
心臓は簡単に言うと【心】その断片が、もう1つの人格……二重人格として出る……。
それの例はオレ、基本的にはオレの脳がオレを保ってるが、心臓が興慾感に浚われると……“俺”が覚醒する。
「そして、その意識は心臓で封印されてるものじゃ」
なるほど、だから……“俺”は動いてないのか。
心臓は……脈は動いてるのに……“意識”が欠如されている。
だから、動かない…植物人間。だから……オレの中にハッキリと“俺”は居るんだ。
それは、オレの…いや、俺の心臓の中に封印されてる。そして、オレは可能性に引っかからずに、意識がなく……植物状態だという……。
もう少し、正しいのは“抜け殻”だろうか?
魂の抜け殻……それが、今の俺。操り糸のない操り人形。
「本来ならば、移植に成功したと同時にお主は用済みとなり捨てられる筈だったが…」
「…………意識が“何者”かの手によりオレ(俺)の心臓に閉じ込められたんだな」
「そうじゃ……」
それで、ココに幽閉された。そして、ノコノコとオレは何も知らずに生きた。
それで、このお話しは幕を下ろす。だけど、本来は“俺”を起して本当のクライマックスだ。
ハハ、終りも始まりもクライマックスか♪
面白いじゃないか……徹底的にクライマックス……。
「……もう良いです。ケジメはつきました」
「…………まだ、胸の内にモヤモヤがあるのじぁろうに……」
見透かされてる……。
たしかに、ワケのわからないモヤモヤが胸の中にあるけれど……。
オレは……歩むさ。後戻りはしない……ずっと前に。
この、双六の道を後戻りをしないで、ゴールに言ってやる。
1日1マスのこの日々を……
オレは歩く。ひたすらに。
もしかしたら、どこかに【ふりだしに戻る】【○マス戻る】があるかも知らない。
ならば、そんな運命……
切り裂いてやるよ。
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