【55話】Six reverse coin's 血対槍
「お前は……何故戦うッ!」
真琴の鎌が振り落とされるが、和也は横に避けて避ける
「……オレが言えた事じゃねぇけど! オレは……オレが守る!
それが……表となってる……オレの仕事だ!」
「偽善者が!」
避けると同時に和也は鎌を傷ついた右手に持ち直す。
偽善者ねぇ……? そのぐらいが良いかな?
名前のないオレにゃ……偽善者の3文字がな!!
「……影には名前がない……そんなら……影で十分だ!」
横から和也の鎌が迫るが、真琴は避けずに、無理矢理体制を立て直し鎌で防ぐ。
真琴はその場から跳び上がり、跳び蹴りを1発。
和也は右腕で足を掴み放り投げる。
体制を立て直し着地、それと同時に駆け出す
「いいか! 存在には意味がねぇかも知らないがよ! 意味があるヤツを守る!」
鎌を地面に刺して、構える。
鎌ではなく武術の構えで、和也は真琴と素手でやりあうつもりだった
無駄に死なせて堪るかってぇの! ってかさぁ?
オレってあの馬鹿2人組が心配なワケよ? お前みたいな化け物相手じゃ勝てないからね♪
……はは……大切なダチなんでねぇ!!
「お前に……資格なんかない!」
「はん! 喧嘩に鎌はいらねぇ……!」
真琴の右腕を顔面スレスレで回避し、膝を真琴のどてっぱらに入れるが
真琴は怯まず、左手が和也の顔面にめり込んだ
はは……なんなら……拳でいこうや! それが……喧嘩じゃ♪
「俺は……お前のせいで余計な仕事が増えてるんだよ!」
「ココで仕事の話しかよ!?」
真琴の蹴りを、また右手で掴んで払う。
真琴は空中からバク宙し、和也の後ろをとる。
和也はすかさず真琴と向かい合う。
こんにゃろぉぉ……右腕が痛いの! 前にお前にやられた右腕が痛いの!!
無造作に右腕は使えないな……こりゃあ……!
「魔天掌!」
「龍滅掌!」
和也の左手が真琴の右手とぶつかり合い。同時に爆発した。
全く同じ動作を2人はやっていた。
(コイツ……? まさか……?)
不自然な直感が和也の脳裏を横切った。
「……お前は……どうして……!」
「はぁん! 身体を預かってんだ! 傷つけたら面目ねぇ!!」
コイツは……【初期式】の雨宮流か……!
コイツがなんでこの武を使ってるかは知らねぇが……!
やるだけ……やる!!
「……大人しくしてれば……!」
「お生憎様♪
四聖拳 朱雀の型 舞武! 鳥律舞武」
オレに、大人しくしろなんて無理なの♪
朱雀の尾が如く蠢く拳が真琴の顔面スレスレを通る。
合計7発、全て真琴は回避する。
「鳥爪舞武」
真琴の顔面を鷲掴みにして、地面に叩きつける。
ホンの少し大きめなクレーターを作る
「鳥焔舞武」
両手を真琴の胸に叩きつける。どういう原理か炎が噴出した。
「っ!」
真琴はすかさず防御の体制に入るが、時既に遅し。
和也は【殺】の体制になっていた。
「鳥殺舞武!」
原理は龍滅掌と同じ。
相手の接触と同時に手の平に溜めた氣を爆発させる。
だが、DCの5倍以上の破壊力を誇る。
「ぐっ!!」
真琴の口から血反吐が噴出される。
「……オレは……目の前の敵を倒して……倒して……! そうやって生きてきた。けど……!」
和也は真琴を見下し、怒鳴る。
「オレには生きる資格は無い……だから せめて、この身体を守って……生きてくしかない それが……唯一できる……事なんだ……だから、」
拳を握り絞めながら和也は苦しそうに……けれども、どこか苦しげに和也はそう呟いた。
認めてるけど……認めたくない。
この和也は……既に、前の和也と変わった。
この一言で、和也は踏ん切りがついた。それは、仲間という翼を捨てて漆黒の『孤独』という翼を手にした。『枷』は放たれ……1つの『槍』が『魔槍』へと変貌した。
それは、勝負を決定づかせたと同じだった
「前の生き方は疲れた…」
「スケィス!!!」
先程まで少し遠くに突き刺さっていた鎌が、真琴の手元へと再召喚された。
しかし、勝敗は決した。時は既に勝負を決定させていたのは変わらない
「鬼槍」
一瞬だった。
「あ__?」
和也の右腕1本で片付いた。
超高速の突きが真琴の鳩尾にめり込んだ。
だが、この程度では終らなかった。
「鬼槍連牙」
目にも止まらぬ速さで上・中・下に1発づつ
真琴は脆く地面に倒れた。
そして、和也は真琴の顔を踏み出す。
「残念だな……まだまだ……本気じゃなくてよ」
今までの目とは違い。ドライアイスより冷めた目つきで真琴を見下す。
急速なまでに冷めた目は前までの和也の目ではなかった。
殺意も何も感じさせない程の『無』の目。
「テメーは、オレにゃぁ……敵わねぇよ……」
「なに……もんだ!?」
吐き捨てるように真琴は和也に向ってそう言った。
同時に真琴を押えてる足とは逆の足で蹴り飛ばした。
「ただの【名無し】の不良だよ」
和也はそうとだけ、呟いた。
「ハァん。そうだ……オレに語れる名前はねぇ……」
和也は鼻で笑い捨ててそう言った。
真琴は本能で気がついた。ヤツは危険だと。
今の、雨宮和也(レプリカ)は危ないと……悟った。
しかし、真琴は一向に立てない。足や腕に力が入らなかった。
「無理無理……立てねぇよ……1/3の、鬼槍をモロに貰ったんだ1/100でも普通に気絶させんだぞ? オレの拳は……なぁ! 死神のローブは大抵のダメージを軽減できんだろ? まぁ……テメー等みてぇな組織ならレナ達のとは桁が違うんだろうがな……」
何時もとは違う冷徹な声で和也はそう言った。
真琴は身体全体に鳥肌が立った。そして、痙攣とは違う震えが来た。
【恐怖】それが真琴を支配した。
「20%のオレに歯が立たないようじゃな」
先程の和也は本気だったが、今の和也は違っていた。
根本的に戦う理由が違っていた。
【天使】が【悪魔】に変わるみたいに……全く逆のモノになった。
【守り】が【暴力】に変わっただけだ。
しかし、それは……昔の和也の生き方だった。
「……20%?」
真琴は呟く
「ウ・ソ♪」
真琴は重たい息を呑んだ。
「2%だよ」
「にッ…!?」
和也は慌てふためく真琴を鼻で笑い捨ててトドメを刺し『かけた』
「和也!!」
1人の少女の声が和也の手を止めさした。
和也の視線の先には【自分に似て非なる】少女の死神、レナ・フォード=ライズ・ハールドだった
雑木林の先に居る彼女を捜すのは至難の業だが、和也にはそんなのは関係無い、気配さえあればこの和也には見つからないモノは無い
「レナ……か」
トコトコ近づいて来るレナに聞こえない程度の声で呟いた。
蚊が鳴くように、豪雨に簡単に流されるような小さな声を出していた。
「将に駿、お前等も隠れずに出て来い」
茂みに隠れていた2人に和也はそう言った。
2人は大人しく茂みから姿を表した、ボロボロの状態で
近くに来たレナは、この2人も居た事よりボロボロの姿にも驚いていた。
しかし、レナが一番に驚いたのはボロボロにされて伸びている最強の死神【神堂真琴】だった。
「かずや……?」
口をパクパクさせて呆然と和也と真琴を交互に見る。
そりゃそうだ、和也には右腕以外目立った外傷はない、顔は何時も通りの綺麗な顔立ち
そして、何時もと違うのは『目』 温厚で優しい目の和也しか知らないレナにはこの和也は今までの和也と違って見えた。合い変わって2人が驚く事も無かった、この2人はこの和也を知っているからだ。久しぶりに見ただけ。
「カズ……その目だと嫌われるぞ?」
「……将、冗談はあまり言うな……」
『この和也は聞かないからね』
「へ?」
2人の声が重なった。レナは間の抜けた声を発した。
「……大丈夫だったのか」
「ああ」
「うん」
和也は『そうか…』とだけ、呟いて足を進めた。
「……和也、このゴミの処理は任せろ」
「大丈夫……ぬかりはないよ♪ レナちゃんも手伝ってね♪」
将は相変わらず作った笑顔でレナにそう言う。
「へ? え?」
何やらもどかしい雰囲気にレナはたじたじとするばかりで、付いて行けなかった。
何時もとは、かなり雰囲気の違う3人にただ呆然としているだけだった。
それが、不気味で……それでいて、違和感の無い。
「レナ、何も言わずに従え」
駿の低い声にレナは少し驚きながらビビる。
今までみたいに温厚で馬鹿丸出しの駿とはかけ離れていた。此方も……いや、全員が怖い目をしていた。今までに見た事の無い、和也と同じ……『無』の目、何も感じさせない。
冷徹だけど冷徹になれない目。温厚だけど温厚になれない目。
その闇に迷って歩け出せない目
「う…うん」
レナはついつい頷いてしまう。
将、駿、レナを他所に和也はゆっくりと歩き出した。
1歩1歩、踏みしめるように……ゆっくりと。
その1歩は、双六でいう【ふりだしに戻る】とは、レナだけは予期をせなかった
ただただ……彼の背中を眺めてるだけでしかなかった。
―Syun Kisaragi―
今日は本当にやれやれだ……。
和也が自分の事を【一部】知っただけでも大きな事だ……。
アクまでも、和也が偽者であるのは当然だが……アイツはただのレプリカじゃない……。
その程度は分かって欲しい……アイツは特別なんだ……。
アイツは……アイツなんだって……。事実は違うけど……アイツはアイツなんだよ……
「クソ!」
「駿、レナ達に説明をしよう……僕達の事を含めて」
芝生を蹴り飛ばす俺を、将が静止させる。
そうだな……説明するべきか……。
「まずは……この死に損ないを処理してからな」
「当然♪」
やれやれ……四ニ神のトップがたじたじじゃねぇか……
流石は……【半完全同位複写人間】の雨宮和也……の、喧嘩モードだこと♪ さぁて……吐かせてやるよ……全部な!
「ッ……!」
「わぁを♪ 流石は四二神のトップだねぇ……この状態でもやるんだ」
前半の口調と後半の口調が変わってるぞ、将♪
まぁ…この野郎が憎たらしいのは目に見えてるぜ?
俺様もその一人だがよぉ!!
「……マコちゃん……」
「なんだ……知り合いか? レナ」
「う、うん…」
『そうか…』とだけ返して、真琴と向かい合う……気にはなれねぇが……仕方ないか。
この問題は、俺等3人も関係してるからな♪ 楽しもうぜ……♪
「レナ、鎌を隠さなくて良い……「っ!」多数の鎌を己の身に宿してるんあだろ?」
「全部知ってるから大丈夫だよ」
驚愕の顔を表にだすが、すぐさま気を引き締める。
そりゃそうだ……これ程の魔力だ……最初からトップギアでいくぞ…
2分ぐらいは稼いでやるよ……和也!
―Miyo Shibahara―
もう少しで晩御飯の時間だ……。
布団の中で丸くなるのをやめて、布団の中から出る。
どうやら、重症みたいだ……、あのハワイでの一件いらい……
うぅ……。思い出しただけでお赤面だ……。
だってだって……和也と……
「ブハッ!!」
は、鼻血がぁぁ……。
きょ…強烈すぎる。5日もたったのに、未だに鼻血がでるとは……。
おかげでボックスティッシュの山が沢山ある……アハハハ…
うぅぅ……最近、貧血気味だ…レバーでも頼もうかな? 久しぶりにレバ刺し食べたいし…。
そうそう、義姉さんは、ロシアに向ってもう家には居ない、結局はあの人…私を弄っただけでまともに出番がないらしい……でも、気をつけよう……突然帰って来たら、今度こそ私の操が危ない…
私にそんな趣味はない。
「うぅぅ…。わ、私って……」
まさか、ヘンタイ?
いやいや…たかが、キスだけで鼻血を噴出すだけじゃないか…
そうだよ、それだけで、ヘンタイだなんて……アハハハ…
【ピーン ポーン 宮崎をどげんがせんといかん!!】
なに!!? このチャイム!!? なんで、東国○さん!!?
あの、義姉め!! またイラナイ改造をしたな!!? なんともえげつない…
ってか、ココは宮崎じゃありません! 【新都・鳥栖深県】です! あ、読者様は初耳でしたね? ココは殆ど最近に造られた町なんですよ? 一応、私達が住むのは県庁所在地の【総部葎市】と、言います。
あ! ってか、お客さんお客さん
お客さんの確認も忘れたまま、扉を開けた。
その先には……
―Syun Kisaragi―
「吐け。だれの依頼だ」
「依頼主の情報は吐かない」
やれやれ……コイツは……めんどいな
もう少し、痛い目をみせてやろうか……?
「……駿、大して情報はないらしい。帰るよ」
「……あいよ」
ちぃ…。将に助かれたな……ガキが。
「……駿…将……」
「わかってる。」
「話すさ」
将と俺の拳が真琴の顔面にめり込む。
おお♪ 意外と気が合うじゃないか……戦友♪
死に損ないは、2、3回転ぐらいして地面に伸びた。
その姿をみて、将と俺はまたもや同じ行動(鼻で笑った)をした。
「行こうよ……だいたいの話せる事は話す」
「…………そう」
さぁて……和也はどう動くかな?
まぁ…説明とありゃあ……和也の事は話さざるを得ないか……。
ま…これは仕方ねぇんだよ……。運命の悪戯がな……
―Miyo Shibahara―
雨宮和也がびしょ濡れの状態で立っていた
「か、和也!!?」
うっわぁ〜…すっごいびしょ濡れ……。
そんな事より、私が咄嗟に思ったのは、彼に合わせる顔だ……ってか、ノーメイク。
……じゃないよ!! たしかに……ノーメイクなんだけど……じゃなくて、私は…未だにあの時から和也にどう接するのが最善なのか分からない……。
「待ってって…! 今、タオルを__!?」
身体を吹かせないと行けないっと、思い。風呂場にタオルを取りに向うが。
私は足を止めた。いや、止めさせられた
「か、かずや?」
私は、後ろから和也に抱き寄せられていた。
優しく……とはいかなく、無理矢理…。
「……少し……こうさせて」
鼻声で…聞き取るのがやっとの声で、和也は何度も何度も呟いていた。
泣きたいのに…泣けない。彼が…昔の……中学生の頃の和也みたいだった…
だから、私は、心の中で泣きくじゃれる彼に、ちょっとだけ……居場所を与えた。
強がりな、大切な彼の居場所を……。
少しの間だけでも……
彼の止まり木になってあげたいから……。
「うっ……くぅぅ…!」
「大丈夫だよ……和也」
弱い…繊細な心をもつ彼に少しでも…長く休ませないといけないから…。
強いけど…弱いこの鳥に…
「和也……少し待ってって…タオルを、じゃないと、風邪、引いちゃう…」
そうとだけ、言い。私は風呂場に走って向った。
なんとなく……急いだ方が良いと思ったから……
「じゃあな…」
背後から、そう聞こえた。
振り返ると、先程までいた和也が居なくなっていた。
この日から、この街で雨宮和也を見る事はなかった。
彼の行方は……誰一人も知らなかった。
―Rena・F=L・H―
「どーいうこと……」
駿と将の話しが信じられなかった。
2人の話がよくわからなかった……まるで、和也が……。
既に潰れてしまったみたいで……
「……和也は、この街から姿を消すぞ」
駿の言葉に、私達は重たい息を呑んだ。
私は立ち上がり、和也を引きとめようとするが、将に腕を掴まれる。
凄い握力で……これじゃあ、行けない。
「死にたいの?」
将が私にそう訪ねる。
「今の和也じゃあ……殺されるぜ?」
将に続いて駿がそう言った……この2人の忠告は正しいのかもしれないけど……
私は……『また』守りきれないのかな…? そんなのは、イヤだ!
「レナ!」
ラミアの怒鳴り声で私は身体を縦に振るわせビックリした。
ヴァンの優しい目も、今では鋭い目になってる。わかってるよ……。
2人の昔は私も知ってる……。
「私は死なない 私は【フィーナ】じゃない…」
「同じだから言ってるのよ!」
ラミアに胸座を掴まれ、睨まれる。
知ってるよ……わかってるよ……。だけど…私はまた守れないのが辛いの
「…レナ、和也君は止められないよ」
「ヴァン! 諦めちゃ…」
そう言った途端に、意識が遠のいた。
何が……? そう考えていると、駿の脚が私のどてっぱらにめり込んでいた。
……私……また、日常を守り切れなかった……んだ……
そう思い、私は床に伸びた。
前も……今も……私は、大切なモノを守れなかったんだ。
わた……し………は・・・
意識がシャットアウトされた。
雨宮和也とレナ・フォード=ライズ・ハールドの歯車が、離れた。
和也の歯車は動きを止め、レナの歯車は勢いが弱まる…
再び、この2つが絡み合わせる時に物語は進む。
そして、全ての過去の歯車と運命の歯車が合さった時に、物語は終盤へと進む。
雨宮和也とレナ・フォード=ライズ・ハールド、この2つの物語は。
そして、神堂真琴が動き始める……最後の歯車として。 |