【39話 ルートB】ただ……切り裂くだけだ【終】
―Makoto Sinndou―
「……200年も前だったよな……」
「なにがだ?」
刃と刃が擦れ合う音が響き渡る。
そして、音よりの早く、2つの影が動く。
黒と漆黒。2つがぶつかり合う時から音がするのに0,7秒。
雷が光って音が響くまでは距離も関係するが、だいたい光ってから音がするまで3秒といわれている。
その中でもこの声はゆっくりと聞こえた。
「お前の父が玉座に着いてから丁度、200年だ」
「知ったこっちゃないね」
「……。そうか……」
真琴は、そう。短く答えた。
その言葉には無数の意味がある。それはまだ、解き明かす物ではない。
だが、2人の少年少女には少しだけ、意味を有していた。
「それこそ、キミが『四二神』っとなったのも、もぅ、100年か……」
「年より扱いするなよ。ガキ」
鎌を振り落とす。
それを、刀で防ぐ。
真琴は鎌を上手く扱い鎌の先と刀の背を捕らえる。
そして、鎌を勢い良く上げる。
刀はアクレイアの手から放れて天井に突き刺さる。
「クッ。長寿の功ですかぁ?」
「死神の平均寿命は470歳だ。まだ、126年しか生きてない」
鎌で払い。アクレイアは小さく跳んで間合いを詰める。
「焔掌」
焔を纏った炎が真琴の腹に食い込んだ。
あばら骨が2,3本折れた。
イヤな音が真琴の耳に届いた。
「焔帝滅掌!」
続けて、鳩尾に掌底を1発。
そして、無数の拳が、顔、腹、腕を襲いかかった。
鈍い音が数カ所から聞こえた。
「!!」
痛みで声も出なかった。
バックステップで間合いを計る。
「虚空千烈破」
待ってましたっと、ばかりにアクレイアが更に詰めてくる。
当然、体制を立て直そうっとしていた真琴は上手く防げるワケもなく、壁に激突した。
「真琴ッ!!?」
歩奈実が血相を変えて叫ぶ。が、真琴からの返事はなかった。
最悪の結末が脳内によぎった。
「……。」
強い……。想像以上だ。
自分の計算外の相手の実力に真琴は焦る。
ここで……死んだフリでもして、隙でも伺うか?
そう、至難していると自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
よく知っているヤツの声だ。120年以上……ずっと同じだった。
水瀬 歩奈実。どうやら「人間だった時」もアイツとつるんでたみたいに簡単に心が開けた。
ガラではないが人見知りが激しい俺にとっては不思議なヤツだった。
アイツが居て迷惑だと思った事は無かった。ただ、楽しいとか……そう言うわけではない
アイツが傍に居ると落ちつくんだ。
アイツが居るから……仕事も飽きることが無かった。
瓦礫の中で息を潜めながら。思い返す。
そうだよ、アイツが居るから……頑張れる。頑張れた。
アイツは……俺の勝利の女神だから。
「弱い……」
「全言撤回じゃボケ不思議娘ぇッ!!」
「ちぃッ。生きてたか」
「て、てんめぇ!!? 何様だ?」
「……マコちゃんの飼い主様?」
「俺はお前の犬じゃねぇ!」
「……私の考えは変わらない」
コイツ……! お、覚えてろよ〜!!
「斬神!」
隙を見て刀を取り戻したアクレイアが真琴の上から襲いかかる。
「うるさいッ!」
その瞬間、アクレイアの顎に綺麗に真琴のアッパーがクリーンヒットした。
無意識の行動であったが、真琴は更なる追撃の回し蹴りをする。
アクレイアは突然の運動能力の上昇に驚きが隠せないでいた。
「てめぇは、いつもいつも……ッ!!」
「マコちゃん、慌てない慌てナイチンゲール」
「無意味な駄洒落を使うな!」
しかもナイチンゲールって……。本当に大丈夫か? この不思議ちゃんは?
疑問に思う。
「……クッ」
アクレイアは戸惑う。急に真琴が強くなったと「錯覚」してる為だ。
真琴が強くなったワケでも、アクレイアが弱くなったワケでもない。
理由はもともと真琴は「この程度の実力」があるからだ。
ただ、それを発揮できないだけ。
それだけの事であったが、アクレイアは理解に苦しんだ。
どうしても、解らなかったから。
解るのは、歩奈実の声が真琴に反応した事だ。
ならばどうする? アクレイアは考える。
そして、見出した結論は……。
水瀬 歩奈実を殺す。
そう、考えついた。
「コ・ロ・ス」
「?」
なんだ? とち狂ったか?
「ボクノジャマヲスルキケンインシハ、スベテ、ミナゴロシダ……」
なんだ?
全身にイヤな感じが駆け巡る。
空気が、壁が揺れ動く。
これは……?
「マズ、コロスベクハ……アマミヤカズヤ……ダガッ!!」
「!?」
反応が1瞬、遅れた。そして、なにより大きな1歩が遅れた。
そして、大方、真琴にはアクレイアの出る行動がわかっていた。
斬撃が一人の少女を襲う。
「……?」
「!」
「ちぃ! 事を仕損じたか」
歩奈実は血を浴びただけであった。
アクレイアの持つ刀の刃先は……。『鍵』たる少女
レナ・フォード=ライズ・ハールドの腕を深く抉られたレナの返り血だった。
「歩奈実姉さん♪」
「子猫……ちゃん?」
確か……彼女は前に1度会った……事があったような……?
「あッ! マコちゃんも元気!?」
そうだ。オレを初めてマコちゃんと呼びやがった子猫娘だ。
そうだよ。あの忌々しい……。
「貴様……!?」
「救えないねぇ。ああ、本当に!」
「!」
アクレイアがレナに注目していた隙に真琴が鎌を振り落とそうとしていた。
アクレイアは真琴の声に反応し、避ける。
次に鎌を横に振るい、アクレイアは、また、後ろにステップして避ける。
「ホナ。治癒魔法を掛けてやれ」
「うん。セイガ、魔方陣書いて」
「えっ? ワイ??」
お前ってヤツは……。魔力の回復に集中しすぎて気がついてなかったのか?
馬鹿だろ……。
「おい。アクレイア……なんで、ホナを狙った?」
「……。僕の邪魔をしたからだ」
「お前の邪魔をしてんのはァ、俺だぞ!? クソ餓鬼!!」
押えていた「箍」が外れた。頭に血が登る。
熱い血が、真琴の判断力を奪う。
そして、目は氷のように冷たい目で尚且つ頭は噴火寸前まで登る。
「君等も気に食わないからだよ!」
「それは、お前の父を殺した事か?」
「違うよ。あんな父親なんか死んだってどうでも良かったよ。
逆に君達に感謝してるよ。あの親父を殺してくれてありがとう……ってね?」
つくづくイカレタ野郎だな……。
真琴は嵐前の静けさが真琴の頭に波の音を発てている。
静かな怒りが、真琴の頭の中で児玉する。
「……お前は親をなんだと思ってるんだ?」
「イラナイ存在さ。僕みたいな究極の存在にはね!」
自分が究極の存在ねぇ?
真琴の怒りは限界を超えていた。
自分の昔の姿を見ているようで……昔の自分を思わせていた。
最も自己嫌悪をしている自分の姿を鏡写しでみているようで真琴の怒りが底上げされていた。
「自分が完璧ねぇ……?」
「うん。そうだよ」
「本当に……クソ野郎だな。アクレイア」
飽きれて仕方が無い感じで真琴はそう、呟いた。
それと、同時に黒い何かが鎌を包んだ。
濃い霧みたいに薄っすらとは見えるものの、本当に薄っすらとしか黙視できない。
「マコト!」
セイガは、真琴がやろうとしている事に気がついたらしく。真琴に向かって叫ぶ。
つられて、歩奈実もわかった。
神堂真琴の本領が発揮されそうな事に。
「……お前等は逃げていろ」
真琴がそう告げるとセイガは離れた場所に倒れているセフィリアと、ヴァンを抱えて走りだす。
歩奈実もレナを連れてこの場を離れようとするが、立ち止まる。
「……マコちゃん、暴れすぎたら私達も瓦礫と一緒に海の底だから」
「忠告ありがとう……。安心しろ守ってやるよ」
真琴の言葉を聞き終えると、歩奈実はこの部屋を後にした。
「なんだ? その魔力は?」
「……これは、ただ……切り裂くだけの刃だ」
霧は晴れることがなく。仕舞いには紅蓮の炎を纏った。
霧は蒸発され、鎌も「新たな」形を現した。
2枚刃の血のように赤い鎌。
『吸血の処刑鎌』
死乃恐怖の鎌の「神名」である。
血の様に赤い刀身とドラゴンが翼を開いたかの様に広がる刃。
そして、『主の血を吸う鎌』
真琴は流血していた、いや。自分でしたのだ。自ら鎌で自分の腕に傷をつけていた。
それは……。
「……なにを?」
アクレイアは理解できなかった。最強の死神と言われる神堂真琴の事だ、なにかしら意味があるに違いない。考える。考えてでた結論。
『あの、鎌は血を吸って強力になる』
自分の血を「吸わせてる」っと言う事はそれは……。
代償を払い力っとなる鎌であるっと言う事が。
「……そうだ」
「!」
アクレイアは自分の考えがバレたと言う事に驚く。
それ以前に、吸血のスピードが速すぎている。
鎌を刺した腕がほのかに青くなっていた。
「準備完了」
そういうと、鎌の刃を自分の腕から抜くと、逆の手に持ちかえる。
アクレイアは、解らなかった。
彼の目が、冷たい物ではなく。シスターが迷える子羊をみるような目で見ていたからだ。
殺気より慈悲が表れていた。
「救われない奴だよ。本当に」
「なにがだ!?」
アクレイアが怒鳴る。
偽善者ぶった真琴の反応に苛立ちを覚えたタメである。
「お前の腐ったれた考え……。本当に救われねぇよ」
真琴は極めて落ちついてる。だが、心の奥底ではアクレイアを殺す考えがあった。
仏と魔。2つの事を、真琴はやってのけている。
「……うるさいッ!!」
勢い良く駆ける。
真琴の懐に詰め寄る。
が、
「なっ―――!?」
「残念だが、強くなるのは鎌だけじゃないぜ?」
本来鎌は、死神の能力を最大限に引き出す『武器』である。
当然、『鎌の意』を唱えるだけで数十倍の実力は出せる。
『神名』っとなれば別だ。
鎌に宿る鎌の力を解放することだ。
当然。『鎌の意』を開放するより……強力になる。
それが、タダでさえ最強と言われている真琴ならば?
魔界の3本の指に入る死神が『神名』を開放したら?
当然。最強になる。
「……」
「クソ。貴様……なんで?」
アクレイアは疑問に感じた。
真琴が何故、力を発揮するのか?
解らなかった。
「……俺はな……責任ってのがあンだよ。『四二神』の連中を率いてるからだ。
みんなを生かすって責任があンだ」
鎌を待ちなおす。
腕から血が滴り落ちる。流血がまた始まってきた。
それでも、力強く鎌を両手で握り締める。
「自分のタメには何故動かない!?」
「自分自信の行動は死を招く。死んだ先代の意思だッ!!」
鎌を冗談に切り上げる。
アクレイアは攻撃に対し上手に反応する。
が、
反対にある刃を上手に使い、持ち手の先でアクレイアの腹部を突いた後、左刃の背でわき腹を攻めた後腕を上手に捻り刃先をアクレイアの腹部に「刺した」
別に切り裂こうっとしたら切り裂けていた。
しかし、真琴はそうしなかった。
「貴様……なにを!? ぐぅっ!!!?」
アクレイアは立ち眩みをした。
理由は簡単。「血を吸われているからだ」。
貧血。それが先ほどの症状。
「悪いな……。コントロールできないんだよ、まだ」
「き、さぁぁぁまぁぁぁああ!!!」
自力で刃を抜き、真琴に近づく。
らしくも無く、取り乱していた。
冷静さを失った者の結末は……。決まっている。
「!?」
アクレイアが攻撃したのは真琴の魔法によって作られた分身でしかなかった。
「これで……しまいだよ、アクレイア!」
真琴は、鎌を振り落とした。
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