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銀城学園物語
作:佐乃海テル



エピローグ


 いつもとは違う朝。


 カナメはゆっくりと目を覚ました。学校に行くにはまだ早い起床時刻だった。確かに神山の言うとおり自宅の寝室で元の格好でカナメは寝ていたようだ。
 なんだかさっきまでのことが嘘のようだ。今世の中はどんな状況なのか知りたい。ベッドでボーっとしているわけにはいかなかった。


 朝食をいつもより早く済ませ、学校へ向かう。
 校庭には神山が落としたフェンスが散っており、校内は誰がやったのかという話題で騒然となっている。犯人を知っている自分達としてはどう考えても、すすんで話題にできるほど楽しい出来事ではなかった。とりあえず昨晩のことは事実らしい。あと三つ。
 教室へ向かうと姉星と山岸が先に来ていた。
「よう、カナメ。さっきはお疲れさん」
 声をかけてきた山岸は腕を骨折したらしく、固定していた。ただの夢ではなかったようだ。カナメは安心なのやら、疲れなのやら分からないものを胸に抱えながら「うん」と返事をし、席に座る。
「なんか、三条には迷惑かけたね」
 姉星は悪かったという気持ちからか、軽く頭を下げた。カナメは「いいよ、そんなの」と返事をとりあえずする。
 とりあえず2人は無事のようだ。あとは神山と水川のことだ。水川も登校してきた。教室に入ってくるときに目が合って、水川は立ち止まった。それから何か決心したような顔をすると、教室に入って自分の席に荷物を下ろした。するとすぐカナメ達のほうへ向かってきた。最初に口を開けたのは山岸だった。
「おう、水川、無事で何よりだぜ。それでこそ助けた甲斐があったってもんよ」
「本当に無事でよかったね」
 姉星は同調する。水川は山岸には腕に気の毒そうな視線を注ぎながら軽く謝罪をし、姉星には機械的に「どうも」と返事をして、カナメのほうに顔を向けてきた。
「昨晩はありがとう。そしてごめんなさい」
 謝罪ならこの間したはずだ。カナメは不思議に思い、
「謝らなくていいだろう。この間も謝っていたじゃないか」
「ううん、それじゃいけないって思った。悪かったのはカナメに悪口を言ったことじゃない。まるでカナメが山岸くん達のことを考えずに、神山さん寄りの考え方をしているみたいなことをつい、言っちゃった。ごめん。許して」
 この長い言葉に今までに溜まった謝りたい、という思いが詰まっていた。
 だが思いはそれだけではなかった。
「それどころか、私のこと考えててくれたんだね」
 話が思わぬ方向へ行きそうだ。朝のホームルーム前の教室。
 水川の言葉を否定できない自分もいる。
「カナメ、好きだよ!」


 そういうと、水川はカナメに抱きつき、目をつぶった。事情を知らないものから見れば、注目の的である。カナメは目のやり場に困った。山岸と姉星はニヤニヤしているばかりである。
「(てめーら、ニヤニヤしている暇があったら、この状況を何とかしろアホ)」
 とは思ったものの、水川にこういう風にされているのも満更ではなかったのがカナメは恥ずかしかった。


 あの事件の後の話をしていくことにしよう。
 あれから神山みなみは突然姿を消した、ということに学校側ではなった。もちろん大多数の生徒会委員は嬉しそうな顔をしているが、平然な表情を出来ずにカナメと水川だけが困ってしまった。
 久々に何の議題も無いいつも通りの生徒会。カナメは心なしか普段よりも明るい委員たちを一瞥して言った。
「最後に委員より連絡は?」
「はい」
 手を上げたのはクラスメイトの水川だった。
「今週転出された、副会長の後任人事の件です」
 いつか見たことのある風景が、繰り返されていた。ところが、繰り返されることはなかった。
「いや」
 それはカナメの精一杯の神山に対する同情だった。
「選挙はよしましょう。今年度いっぱいは副会長無しでやっていきましょう」
 副会長席には花束が置かれていた。


 異例の副会長無しの生徒会となったわけだが、その後は何事も無く年度を終えて全員が任期を満了した。人生最初で最後の高校の生徒会長という大きな仕事――こればかりは小さいとは口が裂けても言えなかった――から三条カナメは退いて高校3年、受験生となった。


 高3になったカナメだが、通常の生徒会委員にまたなってしまった。自分の1つ年下が生徒会長になった生徒会にいるのは少し複雑な心情である。実権を持たない高3の気持ちを味わう。
 受験シーズンともなると、いつも以上に皆授業をよく聞くようになる。だが、神山のときのような事件が、いや正確にはその後の復讐も考えてだが、とにかくクラスの中の雰囲気が悪くならないように生徒会委員三条カナメは努めた。


 高3のバレンタインはセンター試験後という微妙な時期にもかかわらず、
「もうすぐ二次試験だね! 頑張れチョコレート!」
 などという訳の分からない紙とチョコレートをカナメはもらった。いわゆる恋人に近くなっているようだ。


 さらにその後受験も無事終わり、水川と同じ大学に進学することになった。場所が場所のため、上京し親元を離れて水川は一人暮らし、カナメは下宿している。山岸は地元の公立大学へ、姉星はそもそも進学しなかったという。


 ある日、下宿先に戻ってきたカナメのポストに手紙が入っていた。ダイレクトメールすら来ないポストに来た手紙である。カナメは用心深く裏返しにした。


「この度二人は結婚することになりました! これからも二人支えあっていきたいと思います。 

五月吉日
 山岸亮&美穂(旧姓:姉星)」


 今度はカナメがニヤニヤする番だった。
 引き出物は何だろう。そんなことを思いつつ、カナメは自室へと上がった。


ご読了ありがとうございました。
初めての作品にありがちな、とても無茶苦茶なオチです。文章力0の作った塊をここまで読んでくださった方には精一杯の感謝を。

これから中編1つ、長編1つの連載を予定しております。その時はまたよろしくお願いいたします。

ご批評等お待ちしております。
それでは失礼いたします。またお会いしましょう。













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