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銀城学園物語
作:佐乃海テル



10


 最後の一人、春村美枝子はサボりの高校生である。普段はバイト以外家から一歩も出ず、たまに思い出したように遊びに外に出る。彼女がたまに学校に来ることがあるが、これも彼女にとっては遊びに出かける内にしか入らないのだろう。
 神山が春村に復讐をするためには、彼女が登校したときを見計らってするか、外で非合法的に仕返しをするか、の二通りが考えられる。ただ彼女の今までのことを考えると自分の手を汚すようなことはしないだろう。そう考えると前者だろうか。いずれにしても次の魔の手は遠い……カナメ達はそう考えながら、涼姫の転校に憂鬱な思いを馳せながら下校していた。


「考えてみれば、あたし達はマシな方だよね、ちょっとした怪我で済んだんだから」
「そう、なのかな」
 痛い目にあったことを、本来なら大きな声で畜生!と叫びたかった山岸だが、大切な仲間を2人も失ってしまった今ではそんな自分を逆に戒めてしまう。


「こんにちは」
 いきなりカナメ達の横に並んだのは神山だった。3人はぎょっとする。
「3人で楽しそうですね。山岸くんも遅刻しなくなりましたし、姉星さんも最近バイトをやめているようですし、健全な学校生活で何よりです」
「あ、ああ……」
 とりあえず山岸は返事を返した。
「それでは、私は急いで行かなければならない所があるので失礼しますね」
 そう言って神山は坂を駆け下りてしまった。


 まずい。


 3人もさすがに伊藤、涼姫と失ってきて不幸の予感に敏感になってきた。すでに神山は坂の向こう、視界から消えている。3人は同時に走り出した。


 息を切らして、彼女達は春村の家に着いた。とりあえず彼女と対策などについて話そうとインターフォンを押した。
「はーい」
 春村の母の声がした。彼女の足音が近くなってくる。その時。


 2階の裏側から爆発音、そして春村の母の悲鳴が轟いた。


「春村さん、開けてください! 銀城学園の三条です! 開けてください!」
 まずは状況を把握しないといけない。カナメは開けられた扉から、靴を脱いで2階へと駆け上る。そこには春村が倒れていた。否、春村の形をした物が落ちていた。
 早く救急車を呼ばなければならない。でもその惨状には目を見張るものがあった。姉星はもう泣きじゃくっている。もう耐えられない、という悲鳴を泣き声に出していたのだろうか。
「と、とりあえず、救急車だ! 姉星も今泣かないで、山岸を手伝え! おい、春村! 春村! しっかりしろ! おい!」


 もう、あたりには星空が皮肉にも綺麗に広がっていた。その皮肉な星空も3人は病院の中から見る羽目になってしまった。
 春村は即死だったようだ。救急車に乗せられていったが、その救急車も諦めきったようなサイレンを鳴らして走っていったようにカナメ達には聞こえた。


「くそ!」
 山岸は病院内の消火器を蹴る。そういえば、山岸が暴力をふるったのは姉星の件以来だった。つまり、ここまで辛い思いを口に出したり、物に当たったりしないで来たのだ。それを考えると三条も「病院内の物に当たるな」とは注意したくても出来なかった。相変わらず、姉星は隣で泣いている。お母さんは遺体安置室の中に今、いる。
 ここでも大人達は味方ではなかった。自分達がこうして辛い思いをしているなか、安置室の前に次々と葬儀屋が来る。資料を探し、遺体の損傷が激しいプランについて他の社員と話している。たくさんの人を失った今、もう山岸は我慢できなくなった。
「お前ら大人は、いい加減にしろ!」


「三条くん、山岸くん、姉星さん、ありがとうね。あなた達がたまたま訪ねてくれたことを、美枝子だってきっと、喜んでいるよ」
 病院の帰り道、もう外は暗くて危ないというので、春村の母親に3人は歩きで送ってもらっていた。春村の母親は山岸が葬儀屋を追い出したことを知ったときも怒りはしなかった。
 3人はそれぞれ暗い面持ちのまま、それぞれの家へと帰った。


「おい、いい加減にしろや、殺人犯!」
 3人の誰しもが神山にこの言葉を言いたい。ところが考えてみれば証拠は一つも無く、事実として爆殺されたということが残っているのみだ。
 もう今となっては、彼女の方から罪を認めてもらうしか方法は無いのだろうか。


 次の日、春村の不幸の知らせは教室に知らせられた。ただ犯人も手法も分からず、全校朝礼とまではいかず、通常の授業が行われた。3人はとても授業などを受けられる気分ではなかったが。
 昼休み、うつむいた表情のカナメは神山に呼ばれて屋上に向かった。
「あ、三条くん、わざわざごめんね」
「うん」
 返事に力が湧かない。
「前にさ、三条くん、私に復讐どうのこうの言ってたじゃない」
 ストレートにその話題が来るとは誰が予想しただろう。カナメは顔を上げて、神山の顔を見た。目が合う。神山が続ける。
「私が何て返事したか覚えてる?」
「『言葉が過ぎる』だっけ」
「あー……それも言ったね」
 そう返すと、神山は少し考えた顔をした後
「『決着を付ける』って言ったわよね、決着を付けたら生徒会委員をやめてもいいし、逆に決着を付けるまでは生徒会を離れられない、と」
「そうだったな」
「私、もう少しで生徒会やめるかもしれない」
「それは、決着とやらが付くからか?」
「そう。で、その時になったら」
 神山はカナメから目を反らし――それはまるで、選挙前にカナメが彼女の教室に向かった時の外の景色を眺めていた表情で、
「三条くんには全てを、話してあげる」


 カナメは屋上から教室へと帰ってきた。ついに真相が明らかになるのは、カナメとしては嬉しいことこの上なかった。ただ彼が引っかかったのは、「決着が付いたら」ということだった。まだ話してくれない、そんなことはどうでもいいのだ。この言葉が指すことはそれだけではない。


 まだ、復讐は終わっていないのだ。


5人を不幸へと陥れ、復讐を終えたはずなのに神山の復讐は終わっていないという。あと一人は誰か?カナメか?それとも……











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