第3話:レーミアという世界
少年は神秘的だった。たとえ黒神色を纏っていなかったとしても、天使のような整った顔立ちは、彼を、人ではなく、近寄りがたい神聖な存在だと見る者に思わせただろう。大きな黒い瞳は宝石のようだ。
見惚れていると、おずおずと声が掛けられた。
「あの・・・?」
「あ!・・・あぁ、どうぞお入りになって」
はっと我に返って、彼を店に招き入れる。なんて綺麗な色なんだろう。
世界に黒い人がいたなんて、聴いたことがなかった。
店の中は、赤、白、茶色を基本にデザインされたインテリアで、とても可愛らしい、落ち着く雰囲気だった。
テーブルに着いて話をする。
「どこから来たの?」リリアが訊ねた。
「良く分からないんです。此処はどこなんですか?」
「リプルという街よ。トルシア王国の王都、ジュスクの隣にあるの。でも、良く分からないってどういう意味かしら」
「気が付いたら、この街の近くの草原にいたんです。実は・・・・」
リンと名乗る少年は、異世界から来たという。だから黒いのね。神の世界から来たのかしら。
普通の学生だったと言うから、神の使者かもしれないけど、普通に接して大丈夫よね。
初仕事は、その日の晩の給仕だった。制服の白い帽子と服を着て、にぎやかな店内で、お客さんたちに注文の料理を届けながら会話をするうちに、少し不安になっていた気分も明るくなった。
ミクリーナの料理は、ドンさんが作っている。赤い燃えるような短髪の大男だ。
コックって呼ばれているけど、僕は、「板前」が似合うと思う。鉢巻とか頭に巻いてさ。
ドンさんの料理は本当に美味しそうだ。お客さん皆、幸せそうな顔をして食べている。
ずっと聞きたくてうずうずしてたから、仕事が終わって、店を閉めたら、早速リリアさんに聞いてみた。
「あの、空に描いてある絵って、何ですか?」
「ああ、あれは、空絵巻よ。この世界、レーミアの神話が描かれているの。
1000年前に、有名な魔術師が描いたのよ。」
「魔術師?」
「ええ、空絵巻を描いた魔術師は、<空の魔術画家>と呼ばれていたわ。
絵巻は、世界すべての空に広がっていて、その一部分には、未来が描かれているそうよ。
まあ、あまりにも範囲が広すぎて、未だに、描かれている内容全ては知られていないけどね。」
魔法で空に絵を描くなんて、すごいな。空だったら、確かに世界で1番広いキャンバスだろう。
「あ、そうだ」 ポケットから、あの変わったコインを取り出す。
「これって、此処のお金ですか?」
「そうよ、それは50スシー。スシーは世界共通通貨よ。」
じっくり見ないと100円にしか見えないなぁ。「この、デザインの顔は、誰ですか?」
「神の王、サリシアよ。」
50スシーの裏には、英国の硬貨と同じように、横を向いている肖像がデザインされている。
「神の王って?」
リリアによると、神たちは、ミルレミーナと呼ばれる、レミーナを覆うように存在する世界に住んでいて、レミーナを守護している。
サリシアは、空の守護神で、全ての神の頂点に立つ、神の王なのだそうだ。
黒い髪と瞳の持ち主で、黒は黒神色と呼ばれ、讃えられていて、人間には黒い人がいないらしい。
「だから、黒神色を纏うのは、この世界では貴方だけなのよ。」
僕は普通の人間の筈なのにな。リリアの話を聴いて、色々な事に納得ができた。
ミクリーナに来る途中、道行く人に尋ねた時も、給仕をしている時も、会う人すべて、僕の顔を見てビックリしていた。
周りの人がみんな西洋人の様な、金髪とかだったから、東洋人のような外見は珍しいんだろうな、とは思っていたけれど、まさか、黒が僕一人だとは思わなかった。
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レーミアの空絵巻
番外編、世界設定、登場人物紹介です。
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