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これが私の日常

作者:尚文産商堂
「ふぁ~~」
大きく欠伸と伸びをして、ベラン星のサマル羊の羊毛でできたベッドの中で目が覚める。同じ羊毛でできた毛布を跳ね飛ばして、カタリスド星で採れた鉄よりも硬く、金よりも柔らかいイスラ石で編みこまれたスリッパに足を滑らす。
ランドー星でわずかに採れる繊維が細かくすべすべしているルート草をふんだんに使ったパジャマを揺らしながら、ここ最近また胸が大きくなってきたと思いながら、日本製の全面鏡に映る私の姿をじっくりと見る。途中、髪の毛が跳ねているのに気付き、滑らかなセメントのようなイスラ石の櫛で、優しく髪をなでつける。

お母さんにご飯よーと下の階から言われたので、私ははーいと返事を返す。それから、高校の制服をベッドの上に整えておき、ガラット星にはえている樹齢1万5千年の杉の木でできた床を走り、同じ杉で作られたドアを開ける。
お母さんがいる1階へは、杉の階段と、サワール星で採れた大理石に似たサラール石の手すりにもたれながら、一気に階段を駆け降りる。
1階の廊下をスリッパで走りながら、ダイニングへ続くドアを開ける。すでにお母さんは朝ごはんの準備を整えていて、ルーゴニュー星で採れた沢井石を使ったお皿に、イスカードで作られたパンやごはんを、アメリカ製のテレビを見ながら食べた。

食べ終わると、陶器でできた温便座のトイレに行って、それから2階の自室へ戻る。高校の制服はルート草とキシガワ星の宇宙一きめ細かい絹を使っている。それを着ながら、次買い物に行くときには、1カップ大き目のブラを買うことを心で決めた。
私が高校へ行く頃に、やっと弟が起きた。弟もルート草のパジャマを着ており、あくびをしながら私を見送ってくれた。
「いってきまーす」
高校へは自転車で5分、歩いて3分。自転車のほうがかかるのは、駐輪場が私の家と反対側にあり、すこし遠回りする必要があるからだ。だから私は、歩いて高校へ向かう。
その最中にある唯一の信号で引っかかってしまい、少し待つ。
「おはよ」
そこへ、私の友達のキリラ星を発祥とするキリラ族のサ・グダー・リンがやってきた。キリラ族である彼らは、常に香水のような独特の匂いを発し続けている。それは、現地では主食である虫を集め、食べるために身につけたものらしい。ただ、私がいるこの星では、虫ではなくてなぜか男を群がらせることにしか、効果を発揮していない。それ以外は私と何ら変わっている様子はない。二足歩行だし、雌雄異体だし、手と足もあるし、頭も一つ。ああ、そうそう。ちなみに当人は男だ。
「おはよう」
私はグダーに挨拶を返す。いい香りがするのは私もわかっているが、なぜか惹かれはしなかった。
「今日はこの時間?いつもより早いんじゃない」
「今日は早めに起きちゃったからね」
私はそう言って、青に変わった信号を渡った。

信号を渡ると、すぐに高校だ。
鉄筋コンクリート3階建ての校舎4棟と体育館、学食・教員事務室棟の6つの建物からできている、見た目は普通の高校だ。そんな私が通っている高校は、普通科と特殊科という2つの科がある。普通科は、一般的な高校と変わらないけど、特殊科には、言語クラス、理系クラス、選抜クラスという3つのクラスが設置されている。言語については、宇宙のほとんどの言語について学ぶ。理系はそのまま。選抜は、いわゆる特進クラスのこと。
私は普通科なので、頭もあまり良くはない。あ、全員が全員、頭悪いわけじゃないよ。念のため。

高校では、ガラサ星のガラサ石という、乳白色をした石でできた下駄箱で、さらに別の友人2人と合流した。彼らは男女の双子で、双頭族といわれる種族だ。母星はイイラルン星という、銀河の辺境に位置している惑星。でも、浮遊惑星の為に、不規則に動き続けるという性質を持っているため、今日いた場所に明日はいないことはざらだ。
双頭といっても必ず頭が二つあるわけではない。ただ、遺伝子上の問題で、頭が二つの子供も普通に生まれるということだそうだ。昔、詳しい話を聞いたけど、さっぱり理解ができなかった。
「おはよう」
「おはー」
私が二人に近づくと、すぐに挨拶をしてくる。
「おはよう。二人とも」
「また今日もいい香りだね」
イイラルン・ヒレイが、グダーに近寄っていく。
「相変わらずいい匂いなのはいいけれど、男が男呼んでどうするの」
ヒレイの妹であるイイラルン・ヨキが、ヒレイの後を追ってこちらに来た。
「男じゃなくて、女の子を呼ばないといけないんだけどね…」
グダーは、すこし低い調子でヨキに答えた。
私は3人の横を通って、上履きに履き替える。
「そういえば、二人も早いね。いつもこんな感じ?」
「そうさ、遅刻ギリギリにいつも登校する、どっかの誰かさんとは違うんだよ」
笑いながら、ヒレイが私に言う。
「これでも、いつも頑張ってるんだよ。目覚まし時計を止めて気付くと、なぜか知らないけど時間が経っちゃうんだよ」
私は靴を履き替えているグダーのそばで、ヒレイに答えた。
「それだったら、目覚まし時計の時間を早めたら?」
「やったことないけど、多分意味ないと思うよ」
「やってみなよ。一度は試し、二度目はいつもだよ」
そんなこと言われても、したくないものはしたくない。
そんなことを思っていると、グダーが教室に向かうかのように歩き出した。
「そうそう、教室に行かないとね」
私は答えをはぐらかし、というか答えずに、グダーの2歩ほど後ろをついて教室へ向かった。
ヒレイとヨキも、私の後ろを並んで歩いてきた。

廊下も階段も教室の床も、全部サラー星でふんだんに採れるガヤッシュという楠によく似た木を使っている。ちなみに、机も同じガヤッシュ製だ。
木の香りが、グダーの香りと程よく調和し、とても気持ちがいい。ただし、男からみれば、どうも、木の香りが邪魔をしているように感じることも多々あるそうだ。私から見れば、そんなこと感じないから、男だけなんだろう。
教室の中も、同じ香りが漂っているため、勉強によく集中することができるということだそうだ。だけど、私にとっては眠りを誘うアロマに匹敵する。勉強中ほど、寝れる時間は無い。
教室の私の席に荷物を置いてから、ヨキのところへ歩いて行く。
「それで、最近どう?」
「べんきょーのこと?」
「そうそう」
私が、近くの椅子に座らせてもらう。座ると、ほのかに木の香りがたってきた。
「数学とかもう訳分からん。あ、物理や生物もだけど。理系科目はほとんど全滅だね」
「国語とかは?」
「国語、第2言語、第3言語ぐらいはまあなんとか、ね。賀子は第2、第3何取ってたっけ」
「ガーラー語が第2言語、サウィルジン語が第3言語。私はガーラー星とサウィルジン星で採れる、特殊な鉱物に興味があってね」
「なんだっけ」
そこに、グダーがやってくる。
「サルダルダリル・アルリルラルラ。水溶性があるが、あまり多くは溶けない。酸に対しては不動態を形成。産出は2つの惑星のみであり、その他の地域については、一切採ることができない。理由は不明。自然の形態としては、単体の結晶として産出される。1mほど土を掘れば、すぐにごろごろと現れる普遍的な石である」
まるで辞書をそのまま読み上げているかのごとく、さらさらと言った。
「すっごいねー、どこでそんな知識仕入れるのよ」
ヨキがグダーへ、尊敬の目をして聞いた。
「普通に新聞とかネットとか辞書とか。情報はあちこちに転がってるよ」
「いやいや、それでもそこまで覚えられないからね」
私はグダーへ言った。
「そうよ、覚えられるのも、一種の才能よ」
ヨキがグダーへ、私の言葉のすぐ後に言う。
さらに、ヒレイが私たちのところへ来た。
「そんなことより、今日の終礼でするテスト勉強でもしておけば?」
ヒレイが言ったことは、私が一番忘れたかったことだった。
「ああ、急に眠くなっちゃったー」
あくびをする真似をしながら、フラフラと机に突っ伏す。そこへ、ヨキが追い打ちともいえることを言ってきた。
「勉強なんてしなくても、十分得点とれるって。1次関数についての問題だもの」
「10分の小テストだから、出てくる問題も多分簡単だろうし」
「それが採れないから困ってるんじゃないかー」
泣きそうになりながらも、木のいい香りに包まれて、本当に眠くなってきている私を、ヨキとヒレイが無理やり起こしてくれた。
「そんなとこで寝られたら、こっちが困る」
「そうそう、起こすのが面倒なんだから」
「あうー、じゃあ、私の机で寝てるー」
「まず寝るな」
ヒレイがずばっと言ってくる。
「あうっ」
でもきっと寝るんだろーなー。

それからしばらくも経たない間に、チャイムが鳴ったので机に戻って、朝礼を受けた。
朝礼と言っても、普通のもので、放課後に、何かの委員会が開かれるから、その委員は行くようにとか、担任の先生が顧問をしている部活の宣伝とか、そんな感じだ。授業よりも退屈な時間かもしれない。しかも、寝れない分、よりたちが悪い。
それが終わると、やっと先生の顔を見なくて済む時間が、わずかながらも訪れる。
「それで、今日はどうするの」
「放課後?」
すぐにヨキが私のところへやってきて、放課後について聞いてきた。思い出すと、ヨキは前々から、近所のおしゃれな服屋に行きたいといっていた。両親は共働きで日中は家にいないし、兄のヒレイはそんなことに興味がないらしく、連れて行ってと言っても、来てくれないそうだ。一人で行くのはなんだか嫌だからという理由で、これまで行けなかったらしい。
相談ができないから、自分でかわいいかどうかも分かりずらいし、店員はいつもかわいい、似合ってるっていうから頼りにならないそうだ。それで、私を頼ってきたということらしい。
「いいよ、近所だしね」
「じゃあ、テスト終わってからね」
それで私は、一瞬で楽しい気持ちが吹き飛んだ。

授業は、あらかた寝てたからすぐに終わった。お昼ご飯を食べ、再びシエスタ。体力温存は、常に最優先事項としていたし、寝ることによって細胞が活性化して、美肌効果もあるとか。まあ、眉唾物だけどね。
10分間テストは、1次関数のXとYの値をこたえるものだった。3秒で見切りをつけると、適当に答えた。合っている自信は、もちろん無い。そこまで思いを巡らしていると、明日は英語の小テストがあったことを思い出し、英語はまだわかるからいいやと、勉強しないことにした。
死亡フラグ?いえいえ、見切りをつけることは人生において重要なことですよ。

放課後、私はヨキと一緒に近所の服屋に行った。男連中は、二人でどこかに行ってしまったので、放置することに決定。どちらにせよ、勝手に家に帰れるでしょうし。
ヨキが行きたいと言っていた店は、高校から10分ほどのところにあった。少し高級そうなブティックだ。
「制服のままでもいいのかな」
「いいじゃん。見回りの先生に見つかった時は、適当に言い訳考えるし」
私は軽い気持ちで、ヨキに言った。
「じゃあ入ろうか」
私はアクリルでできた自動ドアをくぐって、なぜか桃っぽい香りがただよっている店内に入った。

「いらっしゃいませー」
ここ最近はやりの店員設定のロボットが出迎える。数年前、S&R社が開発して売り出し始めた最新式のロボットだ。宇宙の大半の言語を話すことができ、上半身が銀色のいかにも機械だということがすぐに分かる構造だ。足の部分は無限軌道となっており、階段程度の段差23cmの段差なら難なく上り下りすることができるようになっている。
ここ最近は、どこでもこのタイプの従業員が働いているため、見慣れた普通の光景になっている。あ、でもまだ生身の人間が働いていることもあるよ。
「ねえ、これなんかどうかな?」
入り口すぐのところに飾ってあった服を持って、体につけて、私に見せてきた。
「なんだかイマイチかも…」
「そう?じゃあやめとこ」
ヨキは、服を元の場所に戻してから、店のさらに中に入っていった。ついでに私も、いい服があれば、買いたいと思い、私が欲しいと思う服を探していた。

40分ほどして、大体15着ほど見ると、3つぐらいにまとまった。
ライドンズ星に生息しているルハーテという水牛のような牛革でできた服、ツイトラ星で簡単に採れるガロタロと現地で言われているコケで織られた服と、サワリハルカ星団にてのみ発見されている鉱物であるサワリハルカ石を、薄く切って繊維状にしてから織った服の3つだ。どれも肌触りが良く、大人気の材料でもある。
「しかし、ここまで選ぶのに、40分は経ってるよ。私だったら、15分とかからないのに」
「だってさ、あたしが着るんだよ。少しでも、いいやつにしたいじゃん」
あっさりと、ヨキは言った。
まあ、私もいつも着るものはしっかりと可愛いものを選んでいるから、人のことは言えない。
「それで、いくらになるの」
「3万9800円だって」
店員に聞くまでもなく、壁にかかっている張り紙をヨキは指さした。
「ほら、3着で3万9800だって書いてある」
「あ、ほんとだ」
今まで気づかなかった。

店員に一つの袋に入れてもらうように言っているヨキは、4万を出しておつりと紙袋を受け取った。
紙袋には、店の名前がこれでもかという感じで、デカデカとプリントされている。
「これ、いつもいらないと思うんだけどねー」
私が紙袋を見て、店名のところをつつきながら、ヨキに笑って話しかける。
「まあねー。恥かしかったりね。まあ、あたしは好きなもの買えたから、そのあたりはどうでもいいや」
笑い返されながら答えられる。

右と左に別れる道に着くと、ヨキは立ち止まって左側を指さす。
私は右側へ一歩足を進めている。
「あ、あたしの家、こっち側だから」
「じゃあ、また明日ね」
手を振って、ヨキと別れる。
私は、ガラパース星の特性ゴムが下敷になっていて、跳ねるような感覚で歩いていける靴で家へと帰った。この靴、いくら履いてても、靴底がすり減ることはないから、サイズが合わなくなれば、誰かに譲って、ずっと使ってもらうことが可能だ。それに、サイズも、多少なら大きくなったりするから、大人になれば、これ1足だけでも生活ができるという触れ込みだ。

「ただいまー」
「おかえり」
家には、弟が既に帰ってきていた。
「学校は?」
「今日は自宅学習。学校でまたスーパーオキシドアニオンが検出されたんだって。パソコンで、今日の授業内容が送られてきたんだ、宿題付きで。んで、それをついさっき終わらして返信したところ」
スーパーオキシドアニオンとは、超酸化物というものらしい。学校は、それが検出うすると、すぐに原因を究明するために、全校閉鎖される。その時には、こうやって自宅学習として、自分で持っているか、家族に1台ずつ国から支給されているパソコンに対して、メールで送ってくるのだ。
それらには宿題として課題が添付されていることもあり、送られてきてから12時間以内に宿題の答えを返信しないと、その日は休みという扱いを受ける。
ああ、課題は、午前9時に送られてくることになってるから。超酸化物検出検査は、1日1回、午前7時半に行われるだけだし。
「そりゃ残念だね」
「姉ちゃんは、高校どうだった?」
「いつもと変わらないわよ。友達とわいわいして、授業受けて、最後の締めにテストして。あ、でも今日は、ヨキと買い物に行ったわね」
「ヨキさんと、買いものねぇ」
弟は、私の友達を○○さんと呼んでいる。まあ、誰も気にしてないから、そのまま放っておいてるけど。
「そうよ」
私は、制服の一番上の上着を脱ぎだす。弟がそれを見てくるが、それをふさぐように、ちょうど弟の目の高さに、保護シートを張る。これは、携帯電話の電磁波で、光を強制的に曲げるためのもので、弟から見ると、私は首と足だけしか見えないことになっている。問題は、ほかの方向から見ると、一発で見られてしまうということだけど、家の中で使う分には、それで不自由はしない。
「姉ちゃんさ、そういや勉強って教えてくれない?」
「教科はー?」
すこしきついブラを外してながら、ヨキと一緒に買えばよかったと軽く後悔。
「理科。化学式のあたりなんだけど」
「式言ってごらん」
「えっと、二酸化炭素がCO2、水がH2O、塩化ナトリウムがNaCl…」
「言えてるじゃない。何が問題なの」
「どうしてこうなるのかっていうことが、いまいちわからないんだ」
私は近くにあらかじめおいてあった、着替えをチャッチャと着て、保護シートを外してから弟の横に座る。
そして、携帯を取り出して、3次元ホログラムシステムを使い、分子の構造を見せる。
「二酸化炭素はCが一つでOが二つ。Oが酸素だから酸化っていうことね。炭素Cを2つの酸素で酸化させているから、二酸化炭素。水は、まあ、覚えるしかないわね。塩化ナトリウムは、ナトリウムNaを塩素を引っ付けることによって塩化させるの。それで塩化ナトリウムNaCl」
分子構造を見せながら説明をしていると、なんとかわかったような顔をしていた。
「んじゃ、私は部屋に戻ってるから」
「わかった、ありがと」
何かを携帯にメモしながら、なにかブツブツ言い続けている。
「ま、がんばれ」
私はそれだけ弟に言うと、そのまま2階へあがって、かばんをベッドわきに置いた。
そして、ベッドに倒れこむ。
「あーあ」
ため息をつくが、それで何かができるわけじゃない。
ブラがきつくなっているので、それを買おうとしたのを忘れていたし、そういえば、明日のお昼はどうしようかといった考えも出てくる。
天井を見ながらぐるぐると考えを続けていると、瞼がゆっくりと重くなってくる。
ご飯まではもうしばらくあるはずだし、大丈夫だと思って一瞬目の前が真っ暗になった。
瞬きぐらいの時間で、目を開けると弟が私の顔のすぐ上にいた。
「…何」
「ご飯だよ」
「分かった、起きる」
弟が私から離れると、時間を確認する。
携帯を開き、電源がついていることを確認してから、携帯にきいた。
「今何時」
電子音が声となって聞こえてくる。
「ゴゴ ロクジ サンジップン デス」
「もう6時半」
私は疲れ気味に、弟に言う。
「とにかく晩ご飯だから、早く降りてきなよ」
「わかったから、先に降りといて。すぐに行くから」
弟に言うと、ベッドから降りてすぐに身だしなみのチェックをする。
全身鏡の前に立って、鏡の上にあるマイクに向かって言う。
「晩ご飯用の服装でチェック開始」
すると、水平方向に伸びている赤い線が、頭の先からつま先に至るまでを数秒でなぞった。
「モンダイ ナシ」
合成音声のやけに落ち着いた声が、私に知らせる。
この鏡は、どこぞのファッションブランドが作ったもので、これからどこに行くのかを言うと、そこにあった服装かどうかを自動的に判断してくれる。もしもダメだと言われても、アドバイスをくれて、それに沿ってすると、キチンとした服装ができると言う感じだ。
私は、そんな服装チェックを受けてから1階へ降りた。

晩ご飯は、イストルオンデ星の固有種のタデチ・カガリという鶏を3倍ぐらい大きくした感じの鳥類のもも肉のソテー、スワンジン星のガルパーデルサーと言う、見た目は紫色をしたほうれん草のような野菜のサラダ。これらは、人が始めて友好関係を結んだ星で、その時に供された食べ物の再現でもある。ただし、今となってはどこにでもあるご飯であって、スーパーでセールの時には、100g98円で売っていたりする。
他には、ホカホカの白ご飯(普通のあきたこまち)、赤みそのみそ汁(しじみは宍道湖)、自家製の漬物(たくあんとぬか漬け)が、テーブルの上におかれていた。
「いただきまーす」
言ってから、テレビがついていてニュースをしていることに気づいた。
「あれ?このニュース、昨日もしてたよね」
「昨日は、暗殺未遂があって犯人は不明。今日のはその犯人が捕まったっていうこと。ちょっと違うよ」
弟が私に簡単に説明をしてくれた。
「タトイラウの大統領だっけ。先進的な独裁政治っていう話だったね。150年間の独裁政治のおかげで、政治の腐敗がひどいことになってるらしいね」
私がニュースソースとしているのは、テレビと新聞とメールだ。
メールのニュースは、新聞社が出しているサービスの一つだったり、ブロガーの人が発行しているメルマガだったりする。何か突発的なニュースがあれば、新聞社からのメールがとても早いが、どうしてそうなってしまったのかと言った話は、ブロガーの人のメルマガの方がとても詳しい。
だから私は複数のソースを持つようにしている。

ご飯を食べ終わって30分ほど、食器を洗ったり、テレビを見ていたりしていた。そんな時、ピピッピピッと電子音が聞こえてくる。お風呂の湯が張り終わった音だ。
入れ終わる時間さえ設定をしていれば、自動的にいれてくれるようになっている。温度も、設定次第で変わってくるし、湿度までコントロールしてくれる。
「じゃあ、お風呂入るねー」
私は、着替えを持ってお風呂場へ向かった。

お風呂場に入ると、自動的に電気がついて、私の名前を脱ぐところでいうと、ピッと音が鳴って、どこからともなく風が吹いてきた。ちょうどいい感じの室温になると、浴室に入る。適度な湿り気と温度と風が、私の心も体も一気にリラックスさせてくれる。
「ふぃ~」
42度というちょっと熱めなお湯を張った湯船に、肩までつかると、自然に声が漏れた。あ、ちょっとおっさんっぽいとか思った奴、表出ろ。まあ、それはともかく、お風呂には入浴剤をいつもいれている。その入浴剤は、ジャルダーヌ星の温泉成分を粉末状にしたもので、大概の皮膚疾患、疲れ、筋肉痛などに効果を発揮するとされている。
どこまで本当かは分からないけど、現地の温泉は湯治場としても有名で、銀河のあちこちから人が押し寄せているのは本当だ。ガイドブックにも、宇宙中の温泉から厳選した名選百選の一つとして選ばれているほどだ。

数分間ほわーとまったりモードで湯船につかると、ざばぁと出て、体を洗うことにした。ボディソープは、コルトコ星の原生林地域として保護指定を受けているところのリラックス効果をくれる香りがするものだ。ちなみに、シャンプーも同じ成分が入っている。
まるで、森林の中を散歩し、深呼吸を思わずしたくなるような感覚に、私を誘ってくれる。そんな感じだ。どこかのCMに出てきそうな文句だけど、気にしない。
どちらにせよ、このボディソープとシャンプーは、かなり気持ちがいい。夜寝ている間に、森を歩いている夢を見るぐらいだ。

「でてきたよー」
私は、弟とお母さんに言いに行った。二人は、テレビを見ていた。どこぞの星の自然についてのドキュメンタリーらしい。あまり私は興味が無いから、そのままトタトタと自室へ戻ることにした。

私の部屋に戻ると、さっそくマイパソコンを付ける。5PBのHDD容量があり、CPUも数THzという高性能だ。まあ、ぶっちゃけて言えば、友達に聞いて、これがいいよと言われたやつをそのまま買っただけなんだけどね。
起動に3秒、アイドル状態とか言う落ち着いた状態になるまで、さらに5秒。これで起動は完了、あとは思いっきり遊ぶだけ。
と、その前に、学校のメールをチェックしておかないと。マウスを動かして、メールのアイコンをダブルクリック。瞬時にソフトが起動して、私が持っている全てのメルアドに着いたメールがチェックできるようになった。
その中で、学校のアカウントにログインして、メールをチェック。
「うわ、なんかきてる」
それは、私が一番見たくないものだった。なにせ、テストが間近だから、1週間後に提出しろと言うレポートの課題の通知だった。
「う~、でも、しないと怒られるだろうし…」
開いたら自動的に発信者へ通知が行くことになっていて、見ていなかったと言う言い訳はできない。きっと、ヨキたちも今ごろこれを開けて、悩んでいることだろう。そう考えると、一つの考えが浮かんだ。すぐにヨキたちに電話をかける。

「あの宿題について?」
ヨキが電話にすぐに出てくれる。
「そうなのよ、カテライザー星系における文化についてのレポートって、大学じゃないんだから」
怒りながら、ヨキにグチる。
「じゃ、みんなを集めましょうか」
ヨキは、電話の向こうで何かのスイッチを押した。
パソコン画面の右上に、ヨキの顔が映ったと思ったら、すぐに後ろからヒレイが顔を見せる。
「ちっす、宿題についてだって?」
「そう、あのレポート、一緒にしない?」
「俺らはいいぜ。ここに参加してない、あいつはどうするんだ」
「ここにいる」
グダーが、突然話に入ってくる。でも画面には、グダーの顔は映っていなし、その枠も無い。
「グダーさ、今どこにいるの」
私はグダーの声に聞いてみる。
「パソコンの前にいないから、今は姿を見せることはできない。会話は最初から聞いていたから、無用な説明は不要」
「どうやってしてたの。通知設定してるから、入ってきたらすぐに分かるはず」
「この電話ネットワークは、この時だけ構築されるもので、無作為に選ばれた中継器を中継して通信しているんだ。そこに、ちょちょっと侵入して、そのままにしたんだ」
「ちょちょっと侵入できるようなものじゃないでしょ…」
私はグダーに呆れながら言う。
「まあ、それはいいや。あの宿題、明日会って話そう。それがいいと思うんだ」
「そうね。それが一番よさそうね」
ヨキが言って、今日は解散となった。

パソコンの右上に出ていた画面が全て一瞬で消えると、私も携帯を置いた。
電話は画面とともに切れている。
「じゃ、この宿題は後回しにしよ。問題は…」
パソコンの画面の中を縦横無尽にあふれているフォルダの山だった。
このフォルダのどこかに、私が友達から借りたCDのデータがあるはずなんだけど、どこにいったんだろうね。全く分かんないや。

1時間ばかり掃除をすると、過去の恥の記録やら、求めていたCDデータやら、なぜかメールをコピーしたテキストデータまで見つかった。
整理をし終えると、ようやくパソコンのフォルダ整理が終わったから、バックアップをすることにした。インターネットの向こうにある私専用のデータサーバーに、フォルダをコピーする。クラウドコンピューティングとか言うやりかたらしい。
ちなみに、容量は10GBまで無料だけど、それ以降は5GBごとに割増料金がかかる。どこに保管しているかは知らないけど、説明だと安全なところということになっていた。でも、安全なところってどこだろ。宇宙とか?

パソコンのバックアップが終わってから時計を見ると、いつの間にか10時を少し過ぎていた。
「あー、もうこんな時間かー」
そろそろ寝ようと、パソコンの電源を落とし、明日の授業の準備をする。といっても、教科書もノートもない。あるのは学校からもらったノートパソコンが1台とコンセントとマウスだけ。この中に、授業で使う全部のデータが入っている。テストは、メールでURLを送ってくるから、そこに飛ぶ。すると、テストの問題が出てくるから、それを時間内に解く。時間はチャイムじゃなくて、パソコンの左上に出てくるデジタル時計で教えてくれる。それぞれ速度が違うから、こうやって個々人にあわせてくれるようにしてあるんだ。チャイムが鳴るのは全体で合わせた方がいい時間、例えば、始業時間、昼食、終業時間という時間だ。それ以外は、基本的にチャイムは鳴らない。
そういう学校だからだ。

歯磨きをするために再び1回に戻ると、弟が宿題の続きをしているようだった。
「あれ、まだしてるの」
「うん、数式がなかなか解けなくて」
「教科書データとかあるでしょ。それ見ながらしたら」
「教えてよー」
弟がせがんできたから、仕方なく、うん、そう仕方ないんだ、だって弟のためだもの。多少起きる時間が遅くなったって構わないね。
30分ほどで全部の問題が終わるだろうと思うと、10分で終わった。
「ありがとー、これで全部だから」
「じゃ、これから私は寝るね」
今度こそ寝ようと、私は洗面台へと向かう。

洗面台では、私の歯ブラシを手に取り、スイッチを押す。自動的に適量の歯磨き粉が、歯ブラシの隙間から染み出るようになっている。しゃこしゃこ歯を磨いて、浄水器を通した水ですすぎ流す。
この浄水器は、100パーセント雑菌類を除去し、適切な量のフッ素を加えてくれる。おかげさまで虫歯知らず。歯医者さんは、年次検診の時に行くくらいで、場所もあやふやだ。
歯磨きが終わってから洗顔もする。石けんをあわ立てて、顔に塗る感じでつけていく。この泡が弾ける時に、汚れや古い角質と言ったものを、一緒に流してくれるそうだ。水で洗い流すと、すぐに生まれたてのような肌になると、宣伝をしていた。

あっという間に終わると、軽くトイレに行ってから、ベッドに戻る。
それから、マイクロ波充電システムで携帯を充電しながら、ベッドでゴロゴロする。なんでも、携帯電話の充電部分につける装置と、コンセントのところにつける装置の間でマイクロ波をやり取りさせて、充電をすることができるというものだそうだ。実際に使って見るときの注意としては、コンセント部分から半径10m以内に、同じ製品のモノを使用しないことと、コンセント部から5mを超えると、極端に充電効率が下がるという2点だった。
それでも、携帯の元から入っている電源ケーブルは1.5mないため、5mは相当長く感じれた。

1日の終わりに、私は日記を書くことにしている。今日あったことや思ったことを、声に出して書いてもらう。口述筆記を携帯を通してしてもらうサービスで、向こうは人じゃなくて機械が応答してくれる。一言一句違わずに書いてもらうと、内容が同じかどうかを確認するために、メールを送ってもらう。そのメールを転送して同時にブログ記事にしてアップ。これで、私の一日は終わり。

体を布団にくるむと、すぐに夢の世界へと誘ってくれた。
それじゃあ、お休みなさい……

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