女幹部ですが、敵対する戦隊ヒーローのグリーンに囚われました
悪の組織のセクシー女幹部は正義のヒーロー戦隊に敗れてしまう。
そこからはじまるお話
生物的な身体の作りの違いとか難しく考えないで軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。
「これで終わりだ!」
一部『死ね!』といった正義の味方らしからぬ怒声が混じったのが聞こえたが、
私は、彼らの合体ロボの秘密の奥義「ギャラクシアン爆裂アタック」
とかいう攻撃をまともにくらったらしい。
薄れゆく意識の中で、合体ロボの左腕の操縦席に座っているはずの愛しい人の姿が視えたような気がして、微笑んだ。
空中でバラバラになった私の愛機は、地球の重力にひかれ無残に落ちていく。
コクピットから投げだされた私の体は四肢が不自然な方向へ折れ曲がり、内臓も損傷しているようで口から血がゴフっという音と共に吐き出された。
「さようならグリーン」
声にならない言葉は自分の想いに決別するためのものだ。
緑のコスチュームに身を包んだ彼は今、何を考えているのだろうか?
敵である私を見事に打ち破り、勝利に酔っているのだろうか?
私は正義の味方のヒーローと敵対する組織、いわゆる地球侵略軍の女幹部で名前を『ジェラリア』という。
よそ様の星にちょっかいを出し、あまつさえ乗っ取ろうとしているのだから「悪の組織」と、彼らから誹られても仕方がないのかなとは思う。
でも、我々侵略する側にものっぴきならない事情があったのだ。
もともと、わたし達、ノラック星人は地球によく似た星に暮す種族であった。
だが、星そのものが寿命を迎え、とうてい生きていけないような環境になってしまったので、宇宙へ居住可能な地を求め、進出せざるを得なかったのだ。
長い宇宙での放浪で私達ノラック星人は、宇宙線の影響か容姿が醜悪になり、長く苦しい旅は根性そのものを捻じ曲げ、ひどく性格が悪くなってしまった。
だから、わが種族達が移住できそうな星「地球」を見つけた時、その文明程度から地球人を侮り、上から目線で服従を要求するなどと悪手を打ってしまった。
それは、偵察で先行して地球に降り立った同族達が、その醜悪な姿から有無を言わさず地球人に殺されたという理由もあるからなのだが、これは言い訳だろうか?
最初は優位だった我々だったが、地球人たちの抵抗は激しく、得に「日本」という国からの反撃は激しかった。
彼らは、地球に残された我々の置き土産から、その技術力を解析し、コピーし模倣して、最後には自らの物にしてしまった。
それは彼ら日本人の「オイエゲイ」とか言われるものらしいが、普通にしていたら我々の技術力に追いつくには数百年単位の年月がいるはずなのだが、もともと
彼の国には「サブカルチャー」なる文化が根付いており、地球外生命が地球を侵略しにくるといった事は何度も想定されていたことだったらしい。
そうして生まれたのが5人のヒーローと巨大合体機械生命体だ。
私は彼らに負けた。
私は幹部として部下を派遣するとともに自らもスパイとして「日本」の彼らの活動拠点近くのカフェに潜入していたのだが、私は彼らと接するうちに「グリーン」に恋をしてしまった。
我々ノラック星人は地球人からしたら多くは醜悪な姿をしているが、私は先祖がえりで地球人とそう違わない容姿をしている。
彼らと触れ合い、彼らを知るにつれ、私は地球人達が好きになっていた。
だが、私は幹部として、何より苦しい旅をしてきた同胞のため自らの任務をまっとうしなければならない。
ジレンマだった。
ボンテージの衣装に身に包み、(サブカルチャーなる文化によると悪役の女幹部の正統コスチュームらしい)高笑いしつつ彼らを嬲る時も、もっと平和的な方法があるのではないかと、我々の方針は間違っているのではないかと、悩み続けた。
でももう終わり。
楽しかった。短い間だったけど。
一息いれにくる彼らの、さすがに任務や立場をぼかして語られる愚痴を聞き、彼らの中で唯一の女性隊員である「ピンク」を巡る赤と黒の対立に手に汗握り、あと黄色はカレー食べすぎだから、あれ異星人である私も大好きだけどね、・・・そんな楽しい思い出ともさよならだ。
そして、グリーン。
私のスパイ活動での日々の中でいつの間にかその存在が大きくなっていった人。
いつも、わがまま強引な赤と過去にトラウマがあるらしい黒と自由きままな食欲に忠実な黄色と小悪魔なピンクに振り回されつつも、陰で苦労しながら個性の強いヒーロー達の調整役をしていたのは貴方だったね。
苦労性で、派手目の赤や黒の影で目立ってなくても、「あのミドリの奴」とか軽く言われていても、ちゃんと縁の下で皆を支えていたよね。
敵方であっても「幹部」の私の目からしたら、あなたは非常に得難い人物であることがすぐわかったよ。
あなたの笑顔、好きだった。
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「おほほほほ!わが組織に跪き、赦しを乞いなさい!」
ボンテージ衣装に身をつつんだ、その美女は無理をしているようだった。
本来は違うのに、キャラクターを作って悪ぶっているように見えた。
なのにリーダーの赤は、まともにその言葉に反応し、興奮して叫んでいた。
「お前たちノラック星人達に好きにはさせないぞ!」
だいたい、海産物をすべて青色にして人類の食欲を失わせるとかいうばかばかしい作戦をたててくるようなおバカな連中なのだ。まともにやりあってどうする。
第一、青色にするのがなぜ海産物限定なのもわけがわからない。
「そうよ!ロブスターを赤にもどしなさい!」
何故ロブスター限定なのか?ピンクよ。
「・・・たしかにアメフラシを海中でうっかり踏んでしまった時に出るあの紫の液体はいただけない・・・気持ち悪い。だが青色にすればいいというものではないぞ!」
黒よ。こんな時にでもトラウマを織り込んでくるのか。しかもその内容は、力が抜けるようなばかばかしいものだ。
「カレーが青にならなくて良かった。むしゃむしゃ」
・・・まだ食ってたのか、黄色よ。
俺、グリーンはひとしれずため息をつく。
(お前、エロすぎだろ。その恰好)
目の前でボンテージ衣装に身をつつむナイスバディな美女は、地球への侵略者のノラック星人らしい。
地球よりかなり進んだ科学力をもつ彼らは残念なことにかなりのアホの子ばかりだった。
たてる作戦はバカげたものばかりだったし、世界中からいいようにあしらわれているのだが、彼らは気がついていないらしく、大真面目にアホな作戦で地球を侵略する気らしい。
俺は彼女がスパイとしていつもいくカフェに潜入しているのには気が付いていた。多くのノラック星人と同じように彼女も非常に残念な子だったが、さすがに幹部らしく、少しはまともなところがある。
が、何より、そのボディがけしからん。
凶悪なまでに前にせり出した胸のふくらみだとかくびれたラインだとか
スラリとした脚だとか、非常にけしからん。
だいたい、ノラック星人達は、自らのことを醜悪だと思っているらしいが、地球人に似た容姿なのだ。黙って地球人に交じってしまえばきずかれないだろうに。
そう俺のようにね。
お約束なやりとりのあと、俺たちの合体ロボの必殺技をくらって彼女の愛機は空中で四散した。
俺の目に、空中に投げ出される彼女が視えた。
あちゃーやっぱり、無傷とはいかなかったか。
加減したつもりだったが、赤がピンクに、いいところを見せようとして無駄に張り切っていたからな、その分力が暴走してしまったらしい。
赤のやつ、黒とピンクが付き合いはじめたって知らないんだな。気の毒に。
俺は彼女が意識を失ったのを確認して、ー手順としては俺が彼女を眠らせるはずだったのだがー、不可視の触手をのばし、ひっそりと彼女を回収した。
そしてこれもひっそりと回復呪文を唱え、彼女の怪我を治していく。
こっちの世界の人間にはない能力だが、俺みたいな世界からきた人間も地球にはけっこういるものだ。
言わなければ誰にもわからない。
俺たちのような者はそうやって地球に溶け込んでいる。
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「・・・・ジェラ、・・・・ 」
誰かが私の名前を呼んでいる。
目をあけた私を切れ長の涼やかな瞳をしたイケメンが覗き込んでいた。
「!」
「気がついた?」
わけがわからず、とっさに身をおこそうとして違和感に気がつく。
ここはどこだ?そして貴方はなんでそんな至近距離にいる?
「ごめんね。痛かったよね。ちょっと強引だったかな。でも、君が魅力的すぎるのがいけないんだよ?」
至近距離というかすでに密着だ。ザ・ゼロ距離。
私は何をしていたんだっけ?どうしてこうなった?
事態が呑み込めず、茫然としている私の唇に彼がちゅっちゅっと音をたてて吸い付く。
「はぁ・・・やっと捕まえた・・・」
壮絶な色気のあるため息とともに彼はそうつぶやくと、さらにぎゅっと抱き込まれる。
というか、こんなに身体が動かないのはオカシイジャマイカ。
彼の両腕は私の背中にまわされている。
しかし、彼の両腕が触れられている以外のところも何かで拘束されているかのように動かない。
「好きだ。・・・。もう放さない」
えーっと、ちょっとクルシイので放してくれませんか?、出来ないのであればせめてもう少し拘束を弛めてくれませんかね?
「だから俺の傍から離れられないように、ちょっとオマジナイをかけるよ?」
彼が、ひと房、私の髪をとって、そこにキスを落とした。同時に何かウネウネしたものに、私の頭は包まれて・・・いきなりプツンと意識がブラックアウトした。
だから私は、私が意識を失ったあと、彼が何者かと交信していた事実は知りようがなかった。
「ええ、確保したノラック星人は記憶を消去、改ざんして今ではほとんどがうまくこの地に溶け込んでいますよ。彼女?元幹部ですからね。俺のそばにとどめて、特別に監視をしていますよ。ええ。ご心配なく。すべてうまくいっています。」
何者かと交信を終えた、正義のヒーローのグリーンと呼ばれた男は、かつての敵対する組織のセクシー女幹部の額にキスを落とした。
「もう、放さないからね。ジェラリア。一生これからは俺の目の届くところに置くから」
そう言うと、色気ただ漏れな笑顔を浮かべるのだった。
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登場人物
名前:ジェラリア 職業:地球侵略軍のセクシー女幹部
ちょっと頭のゆるいノラック星人の女性
地球防衛隊の戦隊ヒーロー達のスパイをしていた。
名前:不明 職業:戦隊ヒーロー「レッド」通称:赤
単細胞で正義感あふれる青年 種族は人族
隊ではリーダーをしている。
隊員のピンクを意識している。
名前:不明 職業:戦隊ヒーロー「ブラック」通称:黒
どこか影のあるトラウマを抱える青年 種族は人族
トラウマを刺激されると反発から爆発的な攻撃力を
発する。歩く地雷原(精神的な意味で)
名前:不明 職業:戦隊ヒーロー「ピンク」通称:ピンク
戦隊の中の紅一点、明の赤と暗の黒との間で揺れ動く
乙女。人間のように見せかけているが実は人魚族。
少女の頃に浜辺で見初めた少年を探している。
実は黒の大半のトラウマは幼い頃に彼女が植えつけたもの
だったりする。水や海水につかっても人魚に戻らない
実は人魚に戻るにはかなり厳密なPH値が必要らしい。
好物は甲殻類。
名前:不明 職業:戦隊ヒーロー「グリーン」通称「あの緑のやつ」
個性の強い隊員の中で唯一、他人に合わせられる性格で
調整役を引き受けざる得ない事が多い損な性格の青年。
唯一、カフェの店員が変装して潜入しているジェラリアだと
気がついた。現在彼女にメロメロである。
種族は異界の生物的な何か。得意なのは不可視の触手を使った
工作。そして他人の記憶の改変。
名前:不明 職業:戦隊ヒーロー「イエロー」通称「黄色」
実は巨人族で身体の構成を変えて人間サイズに適応している。
なのでしょっちゅう食べものを食べていないと身体が保てない
人間サイズの時はぽっちゃりだが、本来の巨人の姿に戻ると
ビックリするほど美ボディのイケメンになる。
好物はカレー。
先見隊員: 地球の7割が水ということで、わざわざ水の中でも適応 できるような身体に作られた水中での能力特化の隊員。
その姿がある種族の好物の生物に似ていたため美味しく いただかれてしまったらしい。本編には出てこない。
ノラック星人。
ごめんなさい。他作品の方を決着つけろって話なんですが、筆が止まっておりまして・・・ホンの気分転換で書いたお話です。お楽しみいただければ幸いです。