一日、長かったなー(遠い目
今回は思いっきりコメディー色出してます。闇の激しいツッコミはありませんが、どーぞ!
「…………え?」
「いやあのー、ですから日記をー」
大きな目をさらに大きく見開いた紫に必死に説明する私。
交換日記をすることになったというご報告を、とりあえず部活の説明を受けながらしているのでした。非力な私は到底運動部に所属することは無理だと、一つ一つ見学に回るたびに思い知らされている最中。
「桜、本当に今時の女子高生なのか!? 今時の女子高生の実態を知ってるか!? いや、知らないよな、絶対知らないよ」
「えー、でも男女のお付き合いといったら、交換日記からはじめるのが普通じゃないんですか? インターネットでもほら、交換日記で色々と情報交換をしてるじゃないですか」
「いやいやいやいや、アレはさ。ブログだから、ブログ!! ブログって知ってるか!?」
ブログ……聞いたことならあります。ここで私の数少ない知識を
「知ってますよそれくらい。――ブログって、『ぶっ飛ばそう、ろくでもない男をグーパンチで』の略ですよね」
「そんな話聞いたことないけど!! お前本当に今を生きる女子高生なのか!?」
え……。でもその情報は弟からの情報なんですけど。私は嘘を教えられたんでしょうか。じゃあ何の略なんですか。ブログって。ぶつかり稽古論外だな愚民どもの略ですか。
「すみません……今までそういう話をできる友達らしき友達がいなかったもので……」
「そうか、友達いなさそうだもんね、みるからに」
……確かにその通りかもしれませんが、こう胸にざっくりとナイフを突き立てられた気分なのはどうしてでしょう。
「大丈夫、そのうち友達らしき人がぱっと現れて、お前に心をわしづかみにされていくだろうさ」
「そうですよね……」
私は、小学生の頃から、一人も女の子の友達というものがいませんでした。
親の都合で、小学校に行くこともあまりできなかった私は、学校に憧れていて、友達に憧れていて……。それを邪魔する要因は全部嫌いでした。
そう、例えば男の子。
奴らは、私の友達作りをことごとく妨害してきましたね、そういや。
『桜ちゃんは男の子と遊んだ方がいいんじゃない? 仲間にいれてあげなーい』
『桜ちゃんは男の子にモテるもんねー。男子と遊んでくればいいじゃん』
ああ、ことごとく私の友達作りを邪魔してきて……。同世代の男は特に嫌いでした。年上のほうがまだ……。
あれ、私にそんな感情、あったんでしょうか。
昔は怖いってわけじゃなかったのは覚えています。同世代の男が嫌いだったくらいで。
でも今はどっちかって言うと……年上の男の人が怖い。
どうしてなのか、覚えていません。何か大事な部分が欠如してしまっているのです。
ま、あえて思い出したいとは思わないことですがね。
「どっちかというと私はパシリにさせられるか、避けられるかのどっちかでした。友達っていえる人はいませんでしたね」
「そうか……」
「でも、無視されるよりもパシリになってるほうがまだましでしたけどねー」
私が声を立てて笑いながらそういうと、紫は少し複雑そうな表情を浮かべました。
「チェリー部はそんなお前を心から歓迎してくれるだろうさ」
未だにその正体が明確になっていないチェリー部。要は何でもやる、人助けの部活ってことなのかとも思いましたが、良くわかりません。
「ていうか、私はチェリー部に入ること決定ですか。何でそんな謎の部活に入らなきゃいけないんですか!? どうせならどっかの部活のマネージャーとかでコレまでのパシリ経験を生かすとか、引きこもり研究会とかあったら是非入りたいです。それで引きこもりのこれからについて語り合いましょう」
「そんな暗い部活、一体何の役に立つの?」
「役に立ちますよ!! 励みになります」
「何の!? 心の中ではお互いを蔑みあっているんだろう!?」
そうかもしれませんが、だとしてもお互いの励みになるのならいいのではありませんか。私の考え、歪んでいるでしょうか。
「女子高生として、私は最低かもしれません……」
「いや、最低の意味が良くわからないけど、学力的には最高レベルだよ。ていうかまず女子高生の最低って何」
そうでした。性別が良くわからない紫に比べたら、私はまだ大丈夫かもしれません。
「話が脱線してしまいましたが、とにかく、交換日記して、有沢くんの気持を聞きだすのが一番いいと思うんです。ほら、有沢くんて割と無口でしょ?」
――いや、無口どころじゃないですけどね。
「まあ……そうかもな。文明の利器に頼るより、そっちの方が本音は聞き出しやすいかも」
まあ、見てるこっちがつられて赤くなってしまいそうなくらい、紫は首まで真赤にしていました。
「頼む、このことは他の奴には言わないでくれ」
私は、勢いよく首を縦に振りました。そりゃもう。だって他に言うような人いませんし。友達なんていませんし、どうせ。うわ、これ自分でいうと痛いですね。わかってましたが、私相当痛い子です。
「……ところで、私達はどこに向かっているのでしょう?」
さっきから、校舎の中をぐるぐる。外から階段を上がってきて、現在地は北校舎の五階。学園で一番廃れた場所みたいです。人の声もしなければ、人影もありません。この学園にしては、あまりにも寂しすぎるこの場所に少しだけ違和感を感じました。
紫は首をかしげ、小さく呟きました。
「……言ってなかったっけ? チェリー部の部室だ」
「は!?」
本当に私そこに入らなくてはいけないのですか。
とかどうこう思っている間に、紫は勝手に目の前にある教室のドアをノックし、ためらいもせずドアを開けたのでした。
「ああ、番長。今日はどんなご依頼ですか? ゴスロリ? 別れさせる? くっつける?」
「…………あ、ああ……」
また、またか。また男……。だけど割と女顔。亜麻色の髪。緩いくせっ毛。ブルーグレーの目……。ハーフなのかなんなのか、結構堀は深いかもしれません。どっちかって言うと、可愛い顔。
「何でお前、最初に浮かぶ依頼がゴスロリなの……? 馬鹿にしてるの?」
「いえ。そういうわけではないんですがね。番長にゴスロリを着させて欲しいという依頼が殺到しているもので」
紫は目にも留まらぬ速さで、近くに何故か置いてあった模造紙丸めたものを抜き取って不審気な男に向けました。
「そんな依頼はさっさと断れ」
そんな紫のお願い(?)はスルーされ、彼は小さくなっていた私にやっと気がついたようです。
「あれ、見ない顔だね〜。新入生ですか? もしくはもぐり?」
「入部希望者です」
紫が私の背中を押して、彼の前に突き出しました。いやーっやめてください! 私を殺す気ですか。得体の知れない人には近づくなって教わりませんでしたか。
「ひゃっ……ち、ちち、違います!!」
「まあまあ。そうびくびくしないで下さい。僕はチェリー部の部長、暗井識です。副部長の水島はダンス部の助っ人に行っていていませんが、そこに座ってお茶でも煎れてください」
水島って、まさかとは思いますが、寮長の水島蘭さんのことでしょうか。こう見えても物覚えは良いです。あのツインテール、睫毛ばっさばさの寮長はかなり私の印象に残っています。
促されるがまま、私は紫と暗井部長さんにお茶を……。
「ちょっとちょっと。そこは『どうして私がお茶を煎れなきゃいけないのよ!』とか何とか言って怒ってもらわないと……」
そうだったんですか。あまりに動揺していたので……。ていうか天性のパシリの私にとっては普通に受け入れられる指令でしたが。
「怒って欲しいのか、お茶を煎れて欲しいのかどっちなんだ、暗井」
「怒りながらもお茶を煎れて欲しいです」
「す、すみません。気も利きませんで……」
とりあえず、頭を下げる私。紫が呆れたように呟きました。
「いや、気が利くとかの問題じゃないからさ……」
「こんなサダコとトドの夢見たいなコラボレーションが実現した女、入部させたくありませんよね、私だったら頼まれたって嫌です」
ところがどっこい。暗井武将は満面の笑みを浮かべて答えてくれました。
「うん、面白いね。仮入部ってことでどう?」
「いやです。女の子がいっぱいいるならばともかく!!」
そうです、元女子校で女子がいっぱいいる学校。それなのにわざわざ男がいるような部活に入る必要ないじゃないですか。そう、どうせなら紫と同じ部活に入ったりして親密度高める方が絶対いいし。
「桜には私の依頼を受けてもらった……」
暗井部長は目を丸くし、紫を見つめ返しました。
「本当に? あの誰にもなしえられないだろうと言われていた依頼を? さじをみんな投げてしまって受けられなかった依頼をか? 誰も彼とは通信できないんだぞ……」
「それが、交信手段を見つけたんだ。多分コレなら大丈夫」
そんな、まるで有沢くんを未知の生物みたいに……。いや、確かに彼は未知の生物ですがね。私だって、交換日記が通用するような相手とは思っていません。おそらく、忍耐勝負になることでしょう。交換日記って何を書いたらいいのかもさっぱりぷーですし。
「それで……脈はありそうなのか?」
「さあ。だって昨日の今日、暗黒ノートを渡したんですよ。何書いてもいいよって書いておきました。もしかしたら殺したい奴の名前書いて私に渡してくるかもしれません」
特に私の名前とか。
「……それはないだろうな」
「うん……。桜、お前はテレビとか漫画の見すぎだな」
テレビとか漫画読んでたらきっともっとましな人間になれた気がしますがそれはほっといて。
「もういいじゃん。君立派なチェリー部員だよ。地球防衛軍に入るのと同じ位くだらない部活に入ったけど、誇りに思って。皆が皆、くだらない部活に入れる勇気を持っているわけじゃないから」
「そ、そんなぁ……いやー!!」
けなされているのか、それとも褒められているのか良くわからない言葉から、私は晴れて正式なチェリー部員となったのでした。
展開が遅すぎて……。申し訳ないです。
暗井の名をまた出してしまいました。でも出したかった。この家族の一人を。
交換日記って古いわ、やっぱり。今時交換日記を思いつく女子高生がいたら教えて欲しい……。
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