とうげん−サヨナラまでの旅路(2/4)縦書き表示RDF


序章からビミョーに時間があいてしまいました…。
とうげん−サヨナラまでの旅路
作:霜月伊麻里



第一話 桃源


「うおおぉああぁあぁ!?」

ひとしきり叫んだ後、春陽は平らな地面につっこんだ。

「…っ」

頭をおさえながら起き上がり、たった今自分が転がり落ちてきた山の急斜を見上げる。
鬱蒼とした木々に遮られ、数秒前まで自分がいた場所は全く見えない。

―…財布さえ落とさなければ…。

春陽は自然と溜め息をついた。

芹沢春陽せりざわはるひ。それが彼の名である。

現在高校一年生の春陽は、自分の所属する陸上部の合宿に参加していた。

陸上部の合宿場からランニングに行ったまではいいが、その後財布を落としたのがいけなかった。
そこで、狸が財布をくわえてるのを見て、追いかけて…足が滑って…。

春陽はもう一度溜め息をついた。
だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。

春陽は立ち上がって自分の服についた土をはらう。

Tシャツは黒いため、あまり土は目立たないがはらうたびにポロポロ土が落ちる。

「お…おま…」

その時、見知らぬ声を春陽は聞いた。

少女の声だ。その声に春陽は振り返る。

そこにいたのは、尻餅をついた少女だった。

少女の風貌に、春陽は一瞬あっけにとられる。

海の底のように深い蒼色の目が、春陽を凝視している。
年齢は14、5歳ぐらいだろうか。おそらく春陽と同い年か、それ以下だ。
腰まである茶色い髪と大きな瞳が白い肌で強調されている。
日本人の顔立ちなのだが、それがまるで違和感がない。
おそらく、幼さを残しているものの、綺麗に整った顔の造りのせいだろう。

だが、春陽は少女の服装を見ていた。
少女は着物を纏っていた。裾はだんだら模様をあさぎ色で染めている。

―江戸時代の格好だな…。一瞬春陽はそう思った。

しかし、開けた着物からのぞいている黒く短いスカートと白い襟巻き、レッグウォーマーの様なものに、足袋もはかずに直にはいた下駄が目に入った。

―どの時代にもあんな格好の女の子はいないよな…。

春陽は、直ぐに考えを打ち消す。

―…ってそんなことはどうでもよくって!!

春陽は未だに座り込んでいる少女の顔を見る。

「…もしかして、、この近くに住んでる人?悪いんだけど、この上の道に帰る方法を教え…―」

「帰れ!!」

少女は春陽の言葉を遮り、睨み付けた。

春陽は呆然とする。

その間に少女は走り出してしまった。

ハッとして、慌てて春陽は少女を追う。

「ちょっ…待って!待ってよ!だから、帰り方が分からないんだってば!!」

春陽の言葉に、少女は一瞥し、舌打ちした。

「ついて来るな!元来た道を戻れ!」

少女はそう言うと、春陽が落ちて来た方とは逆の崖の木へ飛び移る。

「!?」

身軽に木々を飛び移り、気が付くと、少女はもう春陽からは見えなくなっていた。

「え…。えええぇええ!?」

少女の人間離れした動きに、春陽は絶叫する。

ギリギリまで崖に近付き、春陽は下を覗き込んだ。
崖は険しく、少しでも足を踏み外せば、先程の春陽のような有り様になりそうだ。

春陽は溜め息をついた。

あの少女を追って降りるのは無理そうだ。

少女の言ったように元来た道を戻るのも、不可能に近い。

右と左の道を、交互に見る。

次の瞬間だった。

ビシッ!

音と共に、春陽の立っている地面が崩れる。

「えぇ!?」

春陽は再び崖を転げ落ちた。


第一章、お付き合いいただきありがとうございます。もっと計画的に書きたかったなぁと少し後悔してます…。いつも以上の駄文になってしまいました。とうげんと赤空、交互に書いていきたいと思います!!











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