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妖怪大国のぶらり旅 作者:山声 ナオル
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六日目 朝

今日もまたいつもと同じ様に話しかけられる。
「ととさま、おはようなの」
「いつもすまないねぇ」
ふざけてみる。
「どうしたのととさま?」
分かってくれなかった。
「ちょっとふざけて言ってみたかっただけだよ」
「ととさま、ときどきよくわからないこというの」
「父様だってふざけたい時もあるんだよ?だって人間だもの!」
夢の中で胸を張ると靄が不定期に揺れる。
「ととさま、どこかわるいの?」
何故か心配される。
「いたって健康だよ?」
靄を突っつくとユラユラと揺れた後急に動きを止める。
「リンちゃんがそろそろくるの」
リンが起こしに来てくれる前にこの靄にも起こされ、僕はもしかして駄目な人間なのかもしれない。
「また明日もお話ししようね」
「はいなの!」
僕の体が揺すられ目が覚める。
「リンおはよう」
「おはよう、今日は呼びかける前に起きられたじゃない」
「僕だって成長してるんだよ」
僕が胸を張ると、それを見たリンに頭をはたかれる。
「胸を張るならせめて一人で起きるぐらいしなさいよ」
もっともな事を言われた僕は、白を少し乱暴に撫でると「ちょっとやめてよね」と幻聴が聞こえる程迷惑そうな顔をする。
「シロに八つ当たりしてないでさっさと支度しなさい」
本日二度目、リンのお怒りを買う。
「はーい」
白と一緒に顔を洗い机の前に立つとリンに呼ばれる。
「妖一なにやってんの?」
「え?ごはんを食べようと思って」
いつも起きて直ぐに朝ご飯を食べるので机の前に行ったんだけど、どうやら僕は何か間違っているらしい。
「ご飯は外で食べるわ」
リンは昨日持って帰ってきた猪肉をもって外に出る。
「どこいくの?」
「長老の家に行くわ」
「分かったよ」
家を出て井戸に向かって歩いて行くと人が集まっていた。
「ちょっと待ってなさい」
長老の周りに集まっていた人達がリンに道を譲るように横へずれる。
「妖一!ちょっと来なさい!」
少しすると呼ばれたので行ってみると長老の前で正座するリンが見える。
「リンなにか悪い事したの?駄目だよ?」
何故か周りの人全員にため息をつかれる。その上リンに睨まれ小さな声で怒られる。
「馬鹿じゃないの?あんたと違うのよ、説明するのもめんどくさいから取り合えず隣に座りなさい」
言われるままに、リンのすぐ隣に座るとまた怒られる。
「あんたね、隣って言ってもそんな近くに座るんじゃないわよ」
今日のリンは機嫌が悪いのかな?
「ごめんね」
謝りながら一歩横に移動し改めて座る。
「リン、妖一お主らは明日この村を出る、が、お主らの家はここじゃ、帰ってきたくなったらいつでも帰って来るがええ」
長老が初めて威厳と言うものを見せる。
「はい」
リンも何故か真剣な顔で長老を見ている。周りの人達も2人を黙って見ている。僕と白は仲間外れなのかな?
「さてリンよ、お主は儂の孫も同然の子じゃ、これまで周りから受けたものは良い物ではないだろう、が、これだけは覚えておいてくれ、この爺はリンを心から愛しておることを」
何だこのイケメンな村長は・・・。
「妖一、リンと共に旅に出るのだ、お主もこれからは儂の家族じゃ、いつでも帰ってこい、それと、あの約束を忘れないでおくれ」
返事をしてもいいのだろうか?リンが返事をしていないし返事をしないでおこう。
「聞いておるのか妖一」
「すみません、リンが返事をしてなかったもので・・・約束は果たしますよ」
返事は必要な様だった、言い訳を先にすると睨まれた。
「まぁよい」
許してくれるらしい。
「さて、これで面倒な伝統も終わった、皆の者!飯は持ってきたか!」
「「「「「おー」」」」」
「今日は大切な日じゃ!昼までは仕事なぞ放っておけ!各々楽しめ!」
長老の掛け声と共に女の子が凄い勢いで僕の足の間に挟まってくる。
「いきなり挟まってくると危ないよ?」
「大丈夫だよぉ」
何が大丈夫なのか知らないが大丈夫と言うんだから大丈夫なのだろう。
「妖一、私は調理を手伝ってくるわ」
リンは今日の主賓だからしなくてもいいんじゃないのかな?
「リンも手伝うの?」
リンがため息をつく。
「勘違いしてるみたいだから言っておくけど、この集まりは元から旅立つ者の事なんて殆ど考えて無いわよ?」
「え?」
どう考えてもその為の集まりに見えるんだけど・・・。
「元々この村は娯楽が少ないから何かにつけて集まって皆で騒ぐのよ」
僕達が話している間もずっと足の間に挟まってニコニコとしている。
「それじゃさっきのは?」
女の子を放っておくのも悪いので白を抱かせてあげると、子供は喜んでいるが白の方は迷惑そうだ。
「自分たちは旅立つ者を見送るために集まった、っていう分かり易い言い訳よ」
女の子達を見ていると、白には悪いがとても可愛い組み合わせだ。
「そういえば、面倒な伝統って何のこと言ってるの?」
「普通に考えて分かるでしょ。長老の前で正座して言葉を貰う事よ」
女の子の腕の中でバタバタと白が暴れている。
「引き留めてごめんね」
「いいわよ、じゃ行ってくるわ」
リンは早足に調理をしている女性たちの中に入って行く。
「ねぇ~ねぇ~」
撫でるのに飽きたのか白を片腕で抱えて僕の袖を引っ張っている。
「どうしたの?」
女の子が白を僕に渡してくる。
「これもういらない」
僕に抱かれ嬉しいのか尻尾をブンブン振る白を定位置に乗せる。
「ねぇ~ねぇ~」
「なに?」
両手を差し出してくる女の子の手を握りながら返事をすると、違うのか首をブンブンと横に振っている。
「抱っこ」
なるほど、この小さなお嬢さんは抱っこをご所望の様だ。女の子抱き上げ片手を椅子代わりにしてあげると首に抱き付きニコニコとしている。
「これからどうするの?」
「あっち」
指差された方に歩いて行くと20程の男女の居る所にたどり着く。
「お父さん!お母さん!私この人と結婚する!」
ちょっとまってつかぁさいお嬢さん、なんて事を口走っちゃってるんですか?
「お母さんは反対よ?この間はお隣のミー君と結婚するって言ってたじゃない」
「父さんはどっちでもいいぞ?」
2人とも笑いながら僕に視線を送ってくる。どうやらこの子はすぐに婚約者?を紹介するらしい。
「この人の足の間すっごい落ち着くの!」
そんな理由で僕の初めての逆プロポーズを奪わないで。
「駄目よ?お母さんだってそこに挟まるの我慢してるんだから」
「そうだぞ。お父さんだって何故か妖一君の足の間に挟まりたいのを、必死に我慢してるんだぞ」
突っ込むのはそこなんですか?
「私決めたよ!運命だと思う!」
僕は全然運命感じてないよ?本当だよ?
「お母さんは許しませんよ」
「父さんは妖一君を本当に好きなら許すよ」
と言うよりお父さんとお母さんの立場って普通逆なのでは?
「大丈夫だよ!この人となら幸せになれると思う!」
えぇ!?なんでそんなに自信満々なの!?
「ちょっと!妖一!どこよ!」
どこかでリンが僕を呼んでいる。
「妖一君行きたまえ!この子は僕に任せるんだ!」
お父さん凄く楽しそうですね。
「はい!またね!名も知らぬ少女よ!」
「まってぇ~」
僕は颯爽と去って行く・・・気分的に。
後書きが間違ってました。
次は8月15日に上げる予定です。
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