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崩壊と革命
作者:風並将吾
 19世紀末、その国の王として就任したアルベルト氏は、音楽活動等の娯楽を一切禁止する法令を発布した。戦時中の国に娯楽など必要ないと言う理由から発布されたものであったが、国民はその法令に対して真っ向から反対した。その中の過激派が、デモを起こすまでに至った。娯楽が完璧に封じられた生活には耐えられなかったからだろう。だが、王はそれでも決して譲ることはなかった。それこそ、警官隊が出動するに至る事態にまで発展してしまったのである。これが原因となり、国民達の抗議活動は徐々に終息の方向へと歩まざるを得なかったのであった。そうして時が過ぎて行き……。



 娯楽が消え去ったことにより、この国は完璧に荒んでしまった。人々が日ごろのストレスを発散させる場所が失われてしまい、その方向は犯罪へと向けられることとなった。強盗・放火・殺人等、起こってはならない出来事ばかり発生し、徐々に崩壊の一途を歩み始めていた。これに対して王は、何らかの対策を取るのではなく、あろうことかそのまま放置し出したのである。彼の抱いている考えがまったくもって理解することが出来なかった。
 そんな国に、一人の旅人が訪れてきた。その旅人は、楽器として一本の笛を手に握り、何度かその場で吹くのだ。娯楽が完璧に禁止されている国にとって、その旅人が奏でる音楽はかなり貴重なものだった。だが、法令は旅人にも適用されるということもあり、その旅人も隠れて演奏し、発覚しそうになったら、その場から逃げ出すと言う行動を繰り返していた。
「あの人、なんで捕まると分かってるのに止めないんだ?」
 ある日、一人の若者がそんな疑問を抱いた。わざわざ国王に対して挑戦的な態度を取るその旅人のことが気になったのだ。そして、その若者は、いつものように街の中で笛を吹く旅人の元を訪れて、曲が終わると同時にこう質問をしたのだった。
「なぁ、どうしてアンタはこの国に出されてる法令を知ってるにも関わらず、笛を吹いて歩いているんだ?」
 すると旅人は、若者に対して笑顔を見せながら、こう答えた。
「なら逆に聞いてもいいかな? どうしてこの国には娯楽を禁止とする法令が制定されたと思う?」
「え?」
 若者は戸惑ってしまった。確かにこの国に敷かれた法令はおかしいとは思った。だがその理由までは未だに考えついていなかったのだ。ならこの旅人ならその理由を知っているというのだろうか。考えた末に。
「どういうことなんだ?」
 そして旅人は、笑顔を浮かべながらこう説明したのだった。
「この国の王さまは、ある一つの賭けをしたんだ」
 それから旅人は、さらにこう説明を加えた。
「貴方も知っている通り、今はいつ戦争が起きてもおかしくない状況だ。だけどこの国の人達は危機感を抱ききれていない。そう考えた王さまは、きっとこう考えたんだろう。『この国はいつ壊されてもおかしくない』ってね。そこで考えついたのが、今回の法令を発布することだったんだ」
「どういうことだ? それがどうして法令を発布することに繋がる?」
 若者はまだ答えを導き出せずにいた。旅人の言葉の真意が計り切れず、未だに思考の渦の中に居た。そんな若者に、旅人は答えとなる言葉を用意した。
「簡単だよ。そうすれば革命を起こさせることが出来るからさ。王が意図的に、そう仕組んだんだよ」
 若者は愕然とした。構わず旅人は言葉を続ける。
「革命を起こさせて、この国を変えさせようとしたんだよ。言葉や法令で国を変えるのは簡単だけど、それで国民の意思まで変えることが出来ないと考えついた王は、国民達に行動させることを考えついたんだ。そこで真っ先に思いついたのが、『娯楽を奪うこと』だった。人々は何かしらのストレスから逃れる為に娯楽に走る傾向がある。ならその逃げ場を失った国民はどうなる?」
「えっと……新たなる逃げ場を求めるか、その逃げ場を取り戻す為に行動を起こす?」
「そう。王はこの場合後者を求めたわけだ。自分を討ち取りにくる瞬間を望んでいたわけだ。だけどそれは失敗に終わってしまった。国民達は結局、最後まで立ち向かうことが出来ず、途中で犯罪の道に走ってしまったのだ。彼らは結局、『逃げて』しまったんだ。だとするとこの国が歩む道はただ一つだけ」
「まさか、崩壊?」
「そう、その通り」
 旅人は笑顔でその言葉を肯定した。旅人には分かっていたのだ。アルベルト氏が考えていたことが、そしてこの国が崩壊の道を歩むしか残されていなかったことが。
「僕がこの国に来て娯楽を提供しているのは、そんな国民達の荒んだ心を少しでも回復させて、革命への活力を回復させようとしたのさ。『娯楽のよさ』を味わった人々が、再び革命を起こそうという気力をあげさせる。そんな手伝いをしろと、王さまに言われたのさ。どうだい? これで納得いったかい?」
「……ありがとう。いいことを聞いたよ」
 若者は礼の言葉を言うと、そのままこの場を離れて行った。
 若者がその場から離れて行ったあとで、旅人はぼそりと呟く。

「期待してるよ。僕を殺してくれると、ね」

 数ヵ月後、この国は革命に成功し、王は失脚したという。


元々は「世紀末」「楽器」「大統領」の三題噺で書いてたものを、大統領から国王に変えて作り替えた話です。
正直、これは何がしたかったのか分からなくて困ります……。
今回、旅人=国王という結末だったわけなのですが、その意外性を持たせたかっただけです。
というか「風並将吾」の小説は、最後に意外性を持たせようとしている作品が多いです、はい。
俗に言う「急展開」という奴ですねー。
……もうちょい文章力もつけたいですし……。
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