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40 気が付けば…

スーパーシェルパに乗り始めて1年半。

気が付けば…

 気が付けば、4月ももう半ばだ。

 2年前の今頃はバイクに乗るといっても50ccだった。

 当時はまだクルマをよく使っていて、マニュアルミッションのスズキ・ジムニーが私の1番のアシだった。

 たまに乗るバイクは、XR50モタードとDioチェスタ。

 今はそれぞれが置いてあった場所にスーパーシェルパとアドレス110が停めてある。

 XRは久し振りにマニュアルミッションの2輪が乗りたくなって買ったもので、Dioは父が買ったが乗らなくなって実家の納屋の隅でホコリを被っているのを引き取ってきたものだった。

 よくよく考えてみると、ホコリを被ったバイクを引き取ってきてしまうのは、どうやら私のクセのようなものらしい。今、乗っているバイク達も同じようにホコリを被っていたところを引き取ってきている。

 少し話しが横道に逸れた。

 とにかく、2年前の今頃はバイクといえば50ccまでで、それよりもクルマの方をよく使っていたのだ。

 そんな私が、今では毎日のように天気予報を気にしている。

 ジムニーは処分し、借りている駐車場には年間で2000kmも乗らないミニバンが停めてある。

 クルマの走行距離が減った分、バイクと一緒に走る時間が増えた。

 2輪免許をとってまだ2年は経っていない。

 しかし、2年前からは想像もしなかった程に濃密な時間を走っている気がする。

 勿論、ジムニーも楽しい車だった。

 軽自動車ながらインタークーラーターボの力強い加速を見せ、どこにでも行けて、運転する楽しさを大いに感じさせてくれる小さな力持ち。

 今でも処分したのが惜しいクルマだったと思う。

 しかし、私はそのクルマを処分してミニバンを買った。家族で出かけるには少し小さいと思ったからだ。

 そして、病気をする。

 ミニバンを契約したその月の末に入院することとなり、新車の受け取りは1ヶ月先送りになった。

 あの時は色々なものを失ったような気持ちになった。

 大好きだったマニュアルミッションのクルマ、楽しいはずの時間、何の不自由もなく動くカラダ…。

 今になってよく考えれば気のせいだったと良く解る。

 私を支えてくれる家族もいるし、カラダだってちょっとだけ不便なところもあるけれど、キチンと動いてくれる。

 そして、楽しい時間は今もちゃんとある。

 私はカメラをライディングジャケットのポケットに突っ込み、ヘルメットを持ってブーツを履く。

 玄関のドアを開けると、キレイに青く晴れた雨上がりの空が目に飛び込んでくる。

 クルリと手の中で『Kawasaki』と刻印されたキーを回し、駐輪場でライムグリーンの車体からカバーを外した。

 路肩まで引き出してチョークノブを引き、スタートボタンを押す。

 キュキュッ、バンッ、バババババババ…

 私に新たな楽しい時間を与えてくれる相棒が目を覚ます。

 ヘルメットを被り、グローブをはめ、シートを跨ぐ。

 クラッチレバーを握ってチェンジペダルをコッと踏み込んだ。

 握っていたクラッチレバーを徐々に開放する。

 タイヤがゆっくりと動き始め、エンジンがアクセルを開けろと息をつく。

 私はヘルメットの中で小さく笑って、右手を動かした。

 ダダダダダダッとエンジンが鼓動を早め、バイクが加速し始める。

 クラッチを切って、左脚でペダルをコンと蹴り上げ2速にアップ、クラッチを繋ぐ。

 加速は力強さを増し、順を追って3速、4速、5速、6速と上がっていくギアが私の意識をグイグイと前方に向けて収束させる。

 技術は未だに拙いながら、すっかりバイクに乗る楽しさに魅せられてしまった。

 気が付けば、40歳を過ぎて遅れてきたバイク乗りがここにいる。

 相棒と呼ぶべきバイク達と、風の中を加速して鮮やかさを増した世界を、フロントタイヤで切り裂いて走る。

 先を走る数多の先輩ライダー達の背中を追って、遅れてきたバイク乗りが見る世界をカメラとコトバで映し出そうともがく。

 アクセルを開け。

 バイクと共に風を感じながら旋回しろ。

 その目に映る世界をもっともっと描き出せ。

 気が付けば、バイク乗りとなった私がそこにいる。

このエッセイを書き始めて約5ヶ月。

気が付けばNo.00~40までのエピソードがならびました。

まだまだバイクに触れて、乗って、感じるようになった想いをコトバにしていこうと考えていますが、このシリーズはひとまずここで区切りをつけてみます。

読んでくださった皆さまに心より感謝申し上げます。

また近いうちにお目にかかれるよう相棒と共にパワーを貯めたいと思います。

本当にありがとうございました。

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