Ω41
私への質問は終わり、ユングとラーゼ様は話してる。最初に言った言葉は「久しぶり」だった。つまりは面識があるって事だ。まあけどそれはそうかと思う。だってユングはカタヤ様とキララ様の養子だ。そしてエデンが現れるまえからカタヤ様もキララ様もラーゼ様との距離は近かった筈だ。
二人の間の子供であるユングが紹介されない筈がない。考えてみれば当然だ。けど、ユングは随分としどろもどろしてる。私へ向ける態度と違いすぎない? あれか? まさかラーゼ様にホの字? まあラーゼ様は本当に美しい。実際なんか直接見るのがいけないと思うくらいには美しい。
ユングがメロメロになってもおかしくない。けど不思議とラーゼ様はそこまででもない? みたいな感じがした。いや女の勘だが。傍からみたらラーゼ様は楽しそうにしゃべってる。勿論上品にだけど。けどこうやって自分字が話しかけられてないからか、客観的に見れてるんだと思う。
私はこう見えても……いや、どうやら私は誰からみても野生の勘があるらしいが、自分でもそれは自覚してる。私は勘がかなりいい。だからなんとなくだけど、わかる。ユングはてんぱっててわかってないだろうが、ラーゼ様は窮屈そうな気がする。
なにをいう、私も実はそろそろ堅苦しいここの空気に足がプルプルしてるんだけどね。ユングの奴は会話を終わらせたくないのか、なんか小難しい事を言ってる。背伸びしてるのバレバレだぞ。けどその時、なんか小さいのが現れた。
私の膝丈くらいしかないモフモフした物だ。それはヌイグルミだった。ウサギのぬいぐるみだ。郵便のマークを付けた赤い帽子に、肩掛けバックをしてる白いウサギのヌイグルミ。いきなり現れたそれに私たちは目を奪われる。いや違った。ユングは話すのに夢中で気づいてない。
けどラーゼ様は直ぐに気づいてそのヌイグルミが持ってきた手紙? を差し出した。なんと古風な……とおもった。ここは超技術の結晶だ。それこそ瞬時に報告する手段が確立されてない訳ない。それなのに手紙……なの意味があるんだろうか?
受け取った手紙を見たラーゼ様は何やら目を見開いて誰かを見た。この部屋には私たち以外にもいるが、彼女が見たのはその誰でもなく、寧ろ誰もいない空間だった。
「ごめんなさいユング。私、ようが出来てしまったわ」
「えっ……はい、お付き合いいただきありがとうございます」
「ええ、私も久しぶりに貴方にあえてよかったです。それからクリエイト・クーシャネルラ、貴女との邂逅もとても意味がある物だったと思います」
「ありがたき幸せです」
私とユングは再び頭を下げて立ち上がったラーゼ様を見送る。彼女はゆっくりとした足取りで私達とは違うドアの方に歩いてく。どうして偉い方々はあんなにも動きが緩慢なのか……まあラーゼ様は美しいからいいんだけど……頭を下げてるとその姿さえ見れないのが不満だ。
たっぷりと時間を使ってラーゼ様が退出してから私たちも動き出す。その時一人の獣人が近づいてきて、ネジマキ博士の元へと案内してくれるとの事だった。私達はその案内を受けて再び歩き出した。