Ω34
二日酔いで苦しみながらも、私は昨日知り合った人? と落ち合う約束をした駅に来てた。ユングは酔っ払いと一緒に行動なんて出来ないとさっさとどっかに行ってしまったが、私だって別段何も酔っぱらってただけじゃない。
昨日飲み過ぎたのは、闘技場で盛り上がったせいなのだ。死闘を繰り広げ、そんな中、種の垣根を超えた友情が芽生えたからあんな事になったのだ。
「お待たせー」
「おう」
私の声に片手をあげて応えるのは白い虎だ。人型してるが、上半身は虎、まあ獣人だ。昨日やった闘技場でこいつは「タイガーマスク」とかいうリング名で出てきた。いやいやマスクじゃなく素顔だけどね! とか思った。けどこいつの実力は本物だ。
そして私も容赦なく来るところとか野性を感じたよ。そして何故か向こうも戦いの中で私の中の戦士を感じたようだ。戦士として認められた私は彼と酒を飲みかわし、意気投合したんだ。闘技場なんかはアウトロー感ある場所で戦ってるから無職か何かかと思ったら、どうやらこの虎、結構偉い奴らしい。なので今日はこの虎の職場見学である。
「なんだあれくらいで二日酔いか? やはり人種は内臓がよわいな」
「あんた達獣と一緒にしないでよね」
「はは! 飲み方が足りないんだ。俺の部下なら内臓が強くなるまで飲ませるぞ」
「なんだって過剰は毒なのよ。私は気持ちよくなる飲み方しかしないから」
「まあ、正しい飲み方だな。今夜も行くか?」
そういって酒をあおる動作をする虎。この虎、まだ朝なのに既に夜の事話してやがる。これがそれなりに偉い地位にいるとはちょっと信じられない。まあ服装だけは、なかなかに立派だけどね。昨日はボロいズボンに上半身裸だったが、今は下半身はなんか上等そうなズボンをはいて、上半身は磨かれてそうな胸当てをつけてる。
感覚でいえば、なんかおかしいがここでは普通なのだろう。私は一応配慮くらいは出来る。私はとりあえず「後で考える」とだけ言った。
「ふっ、なら全力でもてなしてやろう。行くぞ」
「へ? きゃあ!?」
虎は私を抱き上げた。まさかこんな事をされるとはおもってなかったから、自分の口から乙女みたいな声が出て自分で驚いた。お姫様だっこみたいことじゃない。脇に手を入れられて持ち上げられてそのまま高くあげられて広い肩にお尻乗せられた。
おいおい――
「高いじゃん」
「はっは、お前ならそういってくれると思ったぞ」
なんか虎はやけに上機嫌だな。マジで私の事を気に入ってるみたい。てか普通は女性にこんな事いきなりしたらダメだからね。嫌がらなかった私に対して更に好感度上がったようだ。私も一瞬嫌な感じがしたが、虎の肩から見る景色は気に入った。私は基本、高い所が好きだからね。
私は虎の肩に乗ったまま駅を出た。視線が気になったが、無視する事には慣れてる。大体私変わりものとして扱われてたしね。駅から出ると、今私が住んでる所と同じような景色だった。ただ違うのはここは少し狭そうで壁がせり出すようにとても大きな建物というか施設になってる事だ。
どうやら虎の職場はあの壁にくっついてるというか、生えてるみたいなあの施設らしい。