Ω31
「ではこちらをお使いください」
そういってフクロウは二人を簡素な部屋へと案内した。ようやく外に出て、太陽の元、色んな形の建物の一つを私とユングで使えということらしい。
「こんな所を数日利用する程度の我らに与えてもらっていいのですか?」
そういうのはユングだ。確かに数日いるだけの奴に与えるには豪奢すぎる気がする。でも自分はともかく彼、ユングは王の息子だ。義理であるが。ならそれなりの待遇をするのは間違ってない。一緒に来た、自分がその恩恵を受けれるのならクリエイト的にはラッキーだった。けどどうやら、ユングはそうではないらしい。
(面倒なクソガキだなー)
とかなんとか私は思ってた。けどまあ自分にもこんな時期は心当たりはある。なんというか、特別な対応が欲しい時期と自分の価値に見合った待遇が欲しい時期があるんだ。多分ユングは後者なんだろう。こいつはどうやら、養子というのを気にしてる部分がある。
周りからは王の子供として特別待遇を受ける事が出来るが、きっとそれが自分には見合ってないと思ってるんだろう。贅沢な悩みだ。いやほんと。
「私たちはほんの数日滞在するだけです。こんな待遇は……」
「ふぉふぉ、これは別段特別な事ではありませんよ。普通の事です。エデンは下界よりも人口に余裕があるのですよ。ですから望む物にはこうやって家を与えてるのです。これはここではいたって平均的な家屋ですよ」
そういってフクロウは遠くに見える大きな建物をみる。なるほど、確かにこれは遠くに見える建物に比べれば普通だ。というかしょぼい。まあ全然これでも私の実家よりも立派だけど。
「そうなの……ですか」
「ええ、なのでお気になさらずに。そうそう、ラーゼ様との面会が決まりましたら遣いの者を送りますので、それまでは自由にエデンをお楽しみください。あなた方が持ってる証を見せれば、観光客が立ち入れない場所も入れるでしょう」
そういって色々とエデンの事を説明しフクロウは帰っていった。驚いた事にどうやらここは外ではないようだ。エデンの大地の中に作られた駅の一つだという。意味がわからない。そんな話……うーんどっかできいた事がある様な気もするが、観光面ではそんな話なかったと思う。
けどそれは不思議ではない。だって本当に重要な場所を観光客に開放する訳がないのだ。どうりでこの辺りは随分と静かだとおもった。エデンなんていつだって観光客であふれかえってるイメージだからね。
「とりあえず中に入りましょう」
「そうですね」
そういって私が先に扉に手をかけて中に入ると、なんか新築の様な匂いがした。中はとても綺麗だ。奇怪な形をしてたが、どうやら普通に住めるようにはなってるらしい。まあ当たり前か。
「ん? どうしたの?」
気づくと何やらユングが立ち止まってる。アナハイムは土足厳禁な建物が多い。なんかラーゼ様の影響らしいが、ここもそうなのだろうと玄関で靴を脱いでると、まだ扉の向こう側で固まってるユングに気づいた。何をためらってるのか?
「えっと、ここで二人で数日一緒に暮らすんですよね?」
その言葉で私は察した。ははーんなるほどー。
「美人なお姉さんと一緒だからって変な事考えないようにね。まあ、ママが恋しいのならちょっと変わりやってあげてもいいけどね」
「そんな訳ないじゃないですか!」
そういってユングは顔を真っ赤にしてズカズカと中に入っていった。うん、これでちょっと意趣返しできたな。私はそう思った。