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Ω20

 時間がゆっくりと流れてる。そう見える事ってない? 人は危機を感じると、そうなるみたい。前もこんな事があった。いや、こんな職業ならよくあるともいえる。なんたって命を懸けて戦ってるんだ。


(前はそうだな……確かコクピットでトイレに行きたくなった時がヤバかったな)


 そんなアホな事を考えるくらいの時間がある。だって本当にゆっくりなんだ。けど加速してるのは思考だけだ。体の動きは緩慢で、どうあっても避ける事は出来ない。いや、そもそもアビッチは避けさせる気なんてない。だって近づくにつれて飛んできた丸いブロックが膨張してる。きっと中身をぶちまくる気だ。

 まさに最後の悪あがきばりに……この距離でそれは……文字通りの死。全てをゼロが把握したとしてもどうしようもない。でも何もしなかったら、本当にしぬしかない。


「うわああああああああああ!!」


 私は腰の剣を握って抜き去る。そのスピードは遅かったが、アビッチの爆発には間に合った。いやほぼ同時か。私は全てを叩ききるつもりで声を出す。剣を通せば多少は呪いも届きにくくなるかも。ゼロ本体に呪いが移る前に剣は捨てなきゃならない。その限度が分からないし、剣を捨てたらもう何もなくなってしまう。そうなると――


(いや、考えるな! 私はこんな所で死なな――)


 その瞬間だ。私の斜め後方から一筋の青い光が降り注いだ。それは爆発しそうとしてたアビッチの塊を撃ち抜く。かなりアビッチの肉片が削げ落ちた。けど、まだある。まさに死の間際のあがき。残った全てで私を巻き込もうとはじけ飛ぶ。でも更にその時私の前に金色のアンティカがその手にエネルギーを纏う剣を持って降りてきた。同時に素早く剣を振って破片を消滅させてる。その腕の動きがあまりに速すぎて見えない。こちらに飛んできてた破片を全て……まさにすべて漏らさず切り払ったその機体は、ゆっくりとこちらを振り返った。


『大丈夫か? 一片たりとも通してない筈だか?』

「カタヤ様……なんで?」


 そうそれは金色のアンティカ一号機のって駆けつけてくれた第一機甲師団の仲間のカタヤさんだ。この機体に乗れるのは他に居ないから間違いない。


『なんで? 全く、アホな事をぬかすな。仲間が危ないのなら助けにくらいくる』

「カタヤさ――」

『それに碌な装備もしてないのに戦場に飛び出したとあっては……な』

「う……」


 コクピット内に移るモニターにはこちらを呆れた様な顔で見てるカタヤ様が。するともう一つ画面が追加された。


『全くだ。バカだとは聞いてたが、ここまでとは……帰ったら教育が必要だな』

「ひっ――」


 画面はベール様が映っててカタヤ様よりも怖い。二人とも優しかったのが嘘のよう。そこで私は話題を反らそうと気になってた事をいうよ。


「そういえば、アビッチを切った剣……大丈夫なんですか?」


 金色のアンティカはその剣を持ったままだ。そのままだと呪いに……国王様が今ここで死ぬとか流石に不味いと思う。けどカタヤ様は問題ないという。


『この剣の刃は高密度のエネルギーだ。呪いも何も関係ない』


 確かにさっきまではもっと大きかった剣が小さくなった気がしてたのはエネルギーを今は切ってるからなのか。剣の外縁部にエネルギー展開するから大きく見えてたみたい。凄い武器だ。こんなの見た事ない。私はその武器に興味津々だ。


「あのーちょっとそれを……」

『それよりも帰還だ。これ以上の単独行動は許容できない』

「はい……」


 ベール様の厳しい一言で私は連れ戻される事になった。いろいろ他の機甲師団の人達もなんかわちゃわちゃしてたが、そこは軍の最高責任者と国のトップ、鶴の一声でその場を抑えるとさっさと帰還する。この後私はめっちゃ怒られた。

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