Ω11
「わあ!! 凄い! 凄いよゼロ!!」
私は今、ゼウスの格納デッキを飛び出して大空を舞ってる。勿論人種はそのままでは空なんて飛べないから、私はアンティカであるゼロに乗ってだ。私はゼロを起動させる事が出来た。もう心配はいらない。ゼロの心を開いた私はこれで正式な第一機甲師団に成れたはずだ。
その喜びもあって、私はそのままの勢いで外に出てしまった。だけど後悔なんてない。後で怒られるだろうが、そのくらいは受け入れよう。
「凄い出力だ」
かなりの速さでかなりの高度まで上がってきた。それなのにエネルギーの減りが殆どない。なんというマナの内包量だ。見た目的にはそこまで変わらないのに……稼働時間が全く違うじゃないか。前々から、第一機甲師団のアンティカは無茶をすると思ってた。けど……この性能差なら、無茶でもないと今ならわかる。
ゼロとか後の二機には普通の事なんだ。他の機甲師団のアンティカの性能が意図的に落とされてるのか分からないが差があり過ぎじゃない?
『当然です。私たちを完全に再現する事が出来てない普通のアンティカに乗ってたのなら、その違いは歴然でしょう』
なんか心持か、ゼロの声が得意気だ。
「ゼロなら、大気圏も脱出できそうだ」
『事実出来ますが。おすすめはしません。クリエイトでは耐えられないでしょう』
「それはまるで前の搭乗者なら耐えられたみたいな言い方だな?」
『その通りです』
なんか前の搭乗者……小清水亜子と比べられるとムッとする。これは嫉妬か。ゼロにとっては小清水亜子こそが最高の搭乗者となってるんだろう。それが……ね。でもその認識はおいおい改めさせればいい事だ。
『亜子は人種を逸脱してましたから、大気がないくらいどうとでもなりました』
「それって……どこまで本当なの?」
私はちょっと引いてそう聞いた。確かにそんな話があるのは知ってる。それが中々の議論とかになってたのも有名だ。だが、それでも小清水亜子をアンティカから降ろす事は出来なかった。時代が小清水亜子を求めてたからだ。
こんな世界だ。強い力は恐ろしくも味方の内は使おうと上層部は決めたんだろう。まあ今の上層部に代わって腫物扱いはなくなったと思うが。人を超えた力を得た人……その立場をわたしは素直に羨ましいと思うが、どうやらそんな私の様な奴らばかりではないようだ。
軍からも嘆願書が出されたと聞いた事がある。小清水亜子を危険だと判断する奴らがそんな物を出したと……
『前マスターは強かったですよ。私は前マスターの力を発揮出きる様に改良を加えられていましたしね。それが異常な事だということはクリエイトにもわかるでしょう』
「そうね……」
私達人種は弱い。だからアンティカという鎧を、武器を纏うんだ。けどどうやら小清水亜子は違ったらしい。あいつは自身の力をアンティカにまで纏わせるくらいに強かった。そんな事は普通の人種じゃやれない。だって人種が強引に自分の力をアンティカで再現したら、そんなの弱体化以外のなんでもない。
けどどうやら小清水亜子は違ったらしい。
「ゼロ……でも私は巻けない。小清水亜子よりも凄いマスターになってあげる!!」
『――――そうですか、期待してます』
微妙に間があった。ゼロは動いてくれたが、まだ私の事をマスターとは呼んでくれない。まだ認められてない。それは小清水亜子の方が上だと認識してるせいだろう。だから私は小清水亜子を超える! そしてゼロにマスターと呼ばせるのをまずは目標にした。
ここから私の英雄伝説が始まるんだ!! 勿論この後、めっちゃ怒られたけどね。