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Ω10

『何をバカな事を言ってる!』

「私は本気です! この程度で諦める女じゃないとゼロにわかって貰います!」

『陛下の御前だぞ。これがどんな失礼か……いや、そもそも零号機は国の宝。それを占拠する事の意味が分かってるのか!!』

「確かにその非礼はお詫びしましょう! ですが、このまま零号機が誰も乗せずに腐らせる事になる事を陛下もお喜びにはならないでしょう! だから私が絶対に零号機を動かして見せます! 任せてください!」

『ならばその許可をもらってやりたまえ!!』

「正論は嫌いです! それに無茶は押し通すものだと決めています!!」


 私の言葉に通信の向こうでは絶句したり、僅かに笑ったりしてるのが聞こえる。ハッキリ言えば、既に後には引けないのだ。ここでちゃんと礼を尽くすのは必要だとは思うが、これが許されるとは思えない。だからもう私にはあと戻りする選択肢はない。


『君は、それほどゼロに乗りたいのか?』


 それは今までの研究者っぽい人の声じゃない。落ち着いてて、心をトンと叩く様な声だ。これは……陛下……カタヤ様か。


「はい。私はなんとしてもこの子に乗りたいです!」

『それだけの情熱があれば……あるいは……か。ゼロをほだしてやってくれ。こちらとしてもこれからを考えるとゼロを使えないのは困るからな』

「はっ、お任せください!!」


 流石は陛下。とても話が分かる。これは鶴の一声だ。これで私の行動は合法的になったな。勝った……とか思ってると今度はベール様の声が聞こえた。


『全く……「クリエイト・クーシャネルラ」君の最初の任務は零号機を動かして見せる事だ。その方法は問わない。だが、動かせなかったらわかるな? 責任は取ってもらうぞ』

「覚悟の上です!」


 私は一切の躊躇いなくそう答えた。多分この任務が失敗に終われば軍をクビになるんだろう。けどそれがどうした――だ。もとよりあの上司がいる部隊になんて戻る気はない。私はここで生きていく。英雄になるんだ。その最初の試練が零号機を動かして見せる事ならなんとしてでもやる。やってやるだけ! それから私の零号機暮らしが始まった。


 

 一日目


 私は何度も何度も起動を試してみた。途中までは何の問題もない。けどやはり最終段階で弾かれる。つまりは私のマナを流し込んだ時にゼロがそれを受け入れないのだ。きっとゼロは前の搭乗者に思い入れがあるんだろう。普通はアンティカは搭乗者が変わる度にリセットされる筈だが、どうやら特殊な事情でゼロにはそれが出来ないみたいだ。


 ゼロや他のオリジナルの二機に搭載されてるAIはとても優秀らしく、それが育ってきたのにここでリセットなんかできないというのがその理由だ。けどそのAIが育ってるから他の搭乗者を受け入れないってのは皮肉な事だ。きっと素晴らしい人だったんだろう。


「よし!」



二日目


 私は自分語りを延々としてた。まずは私を知ってもらう事が大切だと思ったんだ。コックピットの中で私が覚えてる事は何でも話した。もうこれ以上ないくらいに赤裸々にね。


三日目


 なんと反応が返ってきた。それは映像だ。表示された映像には可愛らしい少女が制服を着て困惑した姿から始まった。それは小清水だ。何だか凄く初々しい。そういえば最初に学校で見た時はこんな感じだったな……と懐かしくなる。


 それからは延々とゼロと小清水の馴れ初めみたいな映像が続く。コックピット内も映像を残せるのか、普通にこの場所が映ってる。まさか撮られてる? いや、ずっと見られてる気はしてたが……でもどんとこいだ!


「私は小清水ではない。だが……特別は何も一人ではないという訳じゃない。小清水を忘れろなんて言わない。私は努力して君のパートナーになって見せる! だから、信じてくれないか?」


 少しだけその時、マナが通ったきがした。



四日目


 再び私は起動シークエンスをしてる。確認事項を指さし確認。そして自身のマナをアンティカへと通す。抵抗は……ない。自分の肉体が、拡張されるような感覚。


『初めましてクリエイト・クーシャネルラ』


 そんな声が聞こえた気がした。いや、ゼロがいったんだろう。だから私もこう返す。


「初めまして、相棒!」


 ゼロの瞳が光り、私は零号機を起動させた。

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