Ω9
確認は順調だ。オリジナルのアンティカである零号機がどんなものかと思ってたが、考えてみれば当たり前だけど、私がこれまで乗ってきたアンティカとそんな変わらない。それはそうだよね。だって元になってるんだから、大きく変わるわけない。確かによくわからないスイッチとか計器とかが零号機の中にはあるが、それはきっと装備が違うからだろう。
基本、最初に動かす所は変わらない。だから問題ない。
『準備はできたか?』
さっき会った研究者の様な人の声が通信機から聞こえる。きっと向こうも計器とかを確認してるんだよね。計器に異常はない。内包されてるマナはきちんと全身に回り、アンティカは動き出す直前だ。ここまでくればなんの問題もない。
「はい! 行きます!!」
私はグリップを握って自身のマナをそれを通してアンティカにつなげる様なイメージをする。これでアンティカとリンクしてこの巨体を自由自在に動かす事が出来るようになる。それにこれはアンティカを起こす意味もある。そしてマナを繋げる事による自己紹介的な意味も……ね。
(よろしく――ゼロ!!)
私はそんな思いを込めてマナを結ぶ――筈だった。けどその瞬間、ブスン――と何かがはきだされた様な音がして、コクピット内が暗くなる。全ての計器の表示もモニターも消える。そして僅かな予備の明かりだけが赤く光ってた。
「なんで……どうしてなのゼロ!!」
私は必死にグリップを動かすが、それに反応を返してはくれない。ガチャガチャとそんな事をやってると……
『やはりか』
そんな声が聞こえた。ここで降ろされたら、私は第一機甲師団に入れない。そう思った私は食らいつくよ。
「もう一度お願いします! もう一度手順を見直してみますから!」
私は必死にそう訴える。けど無慈悲な声が聞こえてくる。
『その必要はない。これも想定内だ』
(想定内? 私が失敗する事も?)
もしかしたら私が一番最初にこの候補に選ばれたのではないのかもしれない。他の部隊の女性パイロットも同じような結果を出してた? その可能性はある。それなら私が何番目か気になる所ではある。実はびりっけつとか言わないよね?
『それでは、一度降りてきなさい』
すると後ろのハッチが自動的に開く。外の明かりが暗くなったコクピット内に入ってくる。でも……ここでおりたらやっぱり同じじゃないの? 私が何番目かはわからないが、私の優秀さからするにビリなわけはない。となると、私がこのまま失敗した事実を引っ提げて外に出ると、次の人に順番が回る事になる。それは……嫌だ! いやいやいやいや!!
「ふんす!!」
私は内側から無理矢理開いたハッチを閉じる。
『何やってる!?』
「私は諦めません! ゼロが心を開いてくれるまで、この中で暮らします!!」
という訳で、私の籠城生活が始まった。