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Ω8

 私は今、第一機甲師団の専用船であるゼウスへとやってきてる。


「す、凄い! 凄い! すごーい! はっ、す、すみません!」

「ははは、いいや、いいよ。でもそんなはしゃぐことがあるか? そこまである物は他の所と変わらないと思うが?」


 私のはしゃぎっぷりが理解できない感じのカタヤ様。偉い人はこれが普通だからきっと分からないんだろう。全く贅沢な事で……この船にある装備も設備も全て最新鋭じゃないですか!? 流石にここまで至れり尽くせりな船は他の機甲師団にもないよ。


 そもそもこのゼウスからして私達他の機甲師団に下げ渡されてる船よりも二倍くらいは大きい。言っとくけど、第一機甲師団にはアンティカが三機しかないからね。それなのに船は二倍大きい。この意味が分かるだろうか? ちなみに第二以降は一つの師団で八機のアンティカがある。

 だから船の中の格納スペースなんかぎゅうぎゅうだよ。船のスペースの大半は格納スペースで他が割り食ってるくらいだ。けどこのゼウスはこの格納スペースは同じくらい広いのに、他の場所もきっと割り食ってないんだろう。余裕と効率? を考えられて色々と作られてるのがわかる。


 まあでも設備もそうだけど、やっぱり私を興奮させるのはアンティカだ。私はずっとアンティカに憧れてる。だからこそパイロットになったのだ。


 アンティカは人種の希望。だから誰でも多少なりともアンティカには憧れがあるだろう。けどそれは私のそれとは大きく違う。私はそんなにわかではないのだ。


「伝説のアンティカをこんな近くで拝めるなんて……」


 私は静かに床に膝をついて頭を垂れた。


「汚いぞ!」

「感謝の念が大きすぎてつい」

「これからその一体に君が乗るんだぞ」


 何やら興奮しすぎて奇行に走ってしまったようだ。周りの人達も何事かと見てる。でもしょうがない。一度礼をしとかないと失礼じゃないか。


「私が乗る零号機は……赤いからあれですね」


 最初期から稼働してるアンティカは色でとてもわかりやすい。黄金と青と赤。黄金色したのはカタヤ様の専用機体で青い奴がベール様のだ。なら私は赤い機体だ。


「そういえば、何故にパイロットを変える事に? 確かきちんとパイロットの方は居たと記憶してますが。小清水さんでしたよね?」

「彼女を知ってるのか?」

「同期でしたから」


 そう私は学校で彼女とは同期だったのだ。まあ話した事は数える程しかないし、私はともかく彼女はこっちの事なんか覚えてなんかないだろう。私は彼女がうらやましかった。だってまだ軍に入ってもないのにアンティカのパイロットに選ばれたんだよ。そりゃあ嫉妬もするよ。


 その頃から既に二つの機体は埋まってたから零号機に彼女が乗る事になったってのは予想がつく。軍に入った後も彼女が零号機に乗ってるのを見た事あるし……でもたしかにここ最近は全然見なかった気がするが。


「すみません。軍で人員を補充するということはそういう事ですよね。それにしては機体が綺麗な気がしますけど、不幸中の幸いと言っていいんでしょうか?」


 私は察したよ。私はよく鈍いとか言われるが、私は自分が鈍いなどとはおもってない。寧ろ冴えてる筈だ。軍が人員補充をするということは欠員が出たということで、その原因は高確率で死亡したということ。なんで公表されてないのか……さすがに人種の守り手である英雄の機体の一つである零号機のパイロットが死亡とかなかなかにショックが大きい。

 だから配慮されたのかもしれない。


「いや、別に彼女は死んだわけじゃないんだ」

「ではなぜ?」


 すると何やらカタヤ様もベール様も言葉を濁してる。これはアレだな……わたしはさっしたよ。


「すみません。理由など私が知る必要はありませんね。私は零号機を動かす事だけを考えるとします」


 事実、私は小清水さんの事はどうでもいい。寧ろ死んだわけでないのならなおさらだ。私にこのチャンスをくれてありがとうと言いたい。私たちは零号機の足元までいく。すると気難しそうな中年の人が私を値踏みする様にみてくる。


「今度はそいつか? 頭弱そうだが大丈夫か?」

「はっ、全く問題ありません!」

「おい……」


 何故か私を指さしてカタヤ様達を見てる彼。多分ここの整備員? にしては研究者の様な白衣を着てるが? カタヤ様達は何やら苦笑いしつつもとりあえず私を乗せてくれるようにと催促してくれる。研究者の様なその人はとても嫌そうだったが、王様に言われては断れない。私はめでたく零号機に乗る事が出来た。


「よろしくねゼロ」


 コクピットに座って何となくテンション高くなって呟いたその言葉。その瞬間、ぽわっと中の機器が光った。

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