Ω7
「ご苦労だったね。えっと『クリエイト・クーシャネルラ』さん。僕は『カタヤ』王もやってるが、これからは同僚だ。気兼ねなく接してくれて構わない」
「そうは言うがなカタヤ……そう簡単な物じゃないだろう。俺はベール。直接的な上司に当たるが、同じ部隊である内はそこまで気にする必要はない。まあ素直に命令を聞いてくれると助かるがな。君はなかなかに問題児らしいし」
扉を閉めた中、おふた方がそう挨拶してくださった。私が知らない訳ないのに、わざわざ向こうから挨拶したというのは、きっと壁を作らない様にというおふた方の気遣いなのだろう。素晴らしい。私は思わず頬に熱い物が流れる。
「うっう」
「どっどうした? 何故泣く?」
ガタッとカタヤ様が私の様子に立ち上がる。私の涙を見て心配して立ち上がってくださる。なんという優しさ。今までの上司共は、泣く暇があるならやれ走れだの、仕事しろだのと……そんなのばかりだった。それが軍なのだと思ってたが……やはりくそばかりだったみたいだ。
だってこの国の王であるカタヤ様は私を心配してくださってる。これが涙せずにいられようか? いや無理!!
「うう~」
「本当にどうした!?」
更にドバドバと涙を流し始めた私に対してとってもオロオロしだす彼は、なんか一国の国王とは思えない親しみを覚えるよ。
「全く、この場では立場など……と思ってたが、それで話にならないのでは困るぞ。クリエイト・クーシャネルラ、とりあえず泣き止みなさい、これは命令だ」
そういってベール様が近づいてきてハンカチを差し出してくれる。噂ではかなり厳しい人だと聞いてたんだが……どうやら噂なんてあてにしてはダメらしい。こんな優しい命令があるだろうか……私は感激しつつも、涙を拭いて仕事だと言い聞かせる。
「すみません……もう大丈夫です。ちょっと感動しただけですので。失礼しました」
「感動……する場面があったか?」
「お二方の優しさに胸を撃たれました」
「お……おう」
二人ともちょっと戸惑ってるが、これは本心だ。仲間になるんだから、嘘をつくなんて出来ない。
「それでクリエイト・クーシャネルラ。君はこれから第一機甲師団へと配属になるわけだが……その意味がわかるか?」
「はっ!」
私は背筋をピンと伸ばし、そして少し上を向いてハッキリとした口調で言うよ。
「第一機甲師団は人種の最終防壁であり、最大兵器。英雄であり、勇者であります!! その栄冠を私も頂けるとあれば、私の全てを捧げて任務にあたる事を約束いたします!!」
私の完璧な宣言なせいだろうか? ちょっとお二方が固まってる様に見える。完璧すぎたかな?
「なるほど、やる気は十分ということだね」
「で、あります!!」
なんかかなりはしょられて受け止められたが、まあ問題ない。そう思ってると、カタヤ様とベール様で何やらアイコンタクトを取られた。なんだろうか?
「君のやる気は素晴らしい。認識も……まあそこまでまちがってるわけじゃない。ただ、君はまだ正式には第一機甲師団に所属してる訳ではない。最終試験がある。これからそれを受けてもらう」
「はっ、必ずや成し遂げて見せます!」
最終試験? そんなの聞いてない!! 折角英雄と成れるとウキウキだったのに。でもまて落ち着け私。後一つ……これをクリアしたらいいだけだ。私は内心を悟られない様にしながら、その試験の内容を尋ねる。
「試験の内容を教えて貰ってよろしいでしょうか?」
ここに来て筆記とかじゃないよね? それは困る。それかやはりアンティカの操縦技術? それなら自信はある。
「それはだね。もしも君が第一機甲師団に正式に所属が決まった時に乗る事になる零号機。それの起動テストだ。零号機を起動できなければ、君を第一機甲師団に入れることは出来ない」
なんだそんな事か……私は胸を張って返事を返す。
「お任せください! 必ず零号機を動かして見せます!!」
私はアンティカが大好きだ。その私が動かせないアンティカなんてあるわけない!!