表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

695/2403

閑話3

 日が昇ったと思ったら落ちていた。何を言ってるのわからないと思うが、僕もわからない。隣では生肌を出して優しい寝息を立ててるティルがいる。


「やってしまった」


 そう思う。いやこれが初めてでもないし……いまさらだ。いまさらだが、何度でも思う。ティルの事は大切にすると誓ってる。何もなくした僕について来て支えてくれた人だ。不幸にしてはいけない。だからこそ、安易に手を出さないと決めていた。


 だけど、僕は……弱い奴だ。あの地をラーゼに奪われた後、大変だった。あの地でアルス・パレスが修復するのを待つ間、生き残った者達でオウラムへの通信手段を得る為にシズルスの示した場所へと向かった時も大変だった。張り詰めた緊張……見知らぬ土地でのサバイバル。他種族の脅威……幸いラーゼの奴が大半の生物を吹き飛ばしてたが……そこに残ってたのは悲劇だ。


 すり減る心が日に日に感じれる中、温もりを維持できたのはティルのおかげだった。ティルが優しく受け入れてくれたから……僕はまたここに戻ってこれた。けど僕は最低な奴だ。だって……こうやってティルを大切にしたいと心から思ってるのに……誘われたらついついとその手の店に入ってしまう。


 出来たばかりの国だから、そこら辺の規制は緩いし……そもそも種というのは本能に忠実だ。強い種程、それほどそういう行為に興味をしめさなるが、ここの集まりは平均的な種たちだ。自分たちの種を絶やさないためにもそういう事に積極的になってる。


 しかも我らは敗残者たちが殆どだ。つなげる事に必死になってる。そしてすさんだ心。そんなのが重なると、そこらにある温もりに飛びつく物だ。いい訳だとわかってるが……


「ティルはきっとわかってるよな」


 あの地に行くまではそういう事は禁じてきた。勿論ティルにもそういう事はしなかった。けど、あれからたがが外れてしまった。大切だった人がいなくなってしまったのも影響してる。結局バッカスさんを復活させることはいまだ出来てない。


 あの人はそれほど口数が多い人ではなかった。どちからというと、言葉数は少なく、周囲から浮いてる感じの人だった。だけど、大きかったんだ。皆が頼りにしてた。支えだった。


「しっかりしなきゃなんだけどな」


 伸し掛かる物が重い。背負う覚悟は決めたが、その重さが変わる事はない。でもそんな重さを行為で忘れてる自分がいる。ティルじゃなくても……誰でも……ティルはそれを知ってても何もいわない。ずっと変わらずに傍にいて、そして求めれば開いてくれる。


 だからこそ罪悪感にさいなまれる。


「呪いだ……これは……」


 僕はそれをしてる時、ずっと思い浮かべてる奴がいる。そもそもこの抑えきれない様な性欲はあいつが原因だ。ライザップにいた時、確かに目を見張る程にあいつは美しかったが、幼かった。だが今は女性的になってきてた。確かにまだ少女だ。だが、それでも女を感じる程だった。


 敵だと……いいきかせてはいるが、だからこそ、あいつを蹂躙したい獣人の本能がある。抑えきれない本能がある。だからこそ……僕は、ティルに謝るしかない。けどきっとまた僕は彼女を抱くんだろう。あいつの代わりに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ