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(そんなバカな……)
いや、魔王だしもしかしたらあり得るかな……とはおもったが、まさか本当に耐えきるとは。しかも……
「凄い、世界の全てを手にしたようだ」
そういう魔王ミリアの体は白く輝いてる。それは純なマナの光……黒いマナではなく、今の魔王は純なマナを大量に抱えた存在となった。
(まさかこんな事になるなんて……)
死んでくれたらよかったのに。
「どうしたラーゼ? 何やら顔色が優れないぞ。祝ってくれないのか?」
「そうだラーゼ……様。素晴らしい事じゃないか。流石だミリア!!」
「ふふ、ありがとうございますお兄様」
くっ、キャラがコロコロ変わりやがって。それにこのシスコンもある意味で人種の危機ってわかってる? カタヤは魔族のトップがミリアだからって安心しすぎでしょう。ミリアは確かにブラコンだけど、魔王の意思には忠実というか、逆らえないみたいだし、滅ぼすことは決定事項なんだよね。
人種全員にミリアの慈悲深さが適用されるとはおもえない。まあそれは私もそうだけどね。私だって人種全体が大切な訳じゃない。せいぜいファイラルくらいだ。ここは私の国だからね。ミリアだって全てを救おうなんて思ってないでしょう。そこら辺カタヤはわかってない。
「ふむ、魔王様はラーゼ様の力を取り込んで復活したのなら、今のクリスタルウッドはラーゼ様のマナで復活したのだから親和性があってもおかしくないのかもしれませぬな」
そんなネジマキ博士の言葉に私は「確かに」とおもった。魔王ミリアが得た私のマナはちょっと種類が違う筈なんだけど、本質的には私のマナだしね。そしてクリスタルウッドは純なマナが大半だが、私のマナで復活したのは間違いない訳で……それはつまり、クリスタルウッドも魔王も私のマナを持ってたわけだ。
なるほど……こうなる地盤は整ってたわけだ。
(私のバカアアア!)
これで世界を掌握してるのが私だけじゃなくミリアも増えたじゃん。私だけの特別……唯一無二が……価値が低くなっちゃったじゃん。でもここでふてるのは器量が狭そうだし、余裕のある女の方がいい女みたいだからそうふるまう。
「流石魔王というだけあるわね。頑丈そうだものね。ムキムキなんじゃない?」
私はニコニコしながらそういってやった。ヒクッとミリアの頬が動いた。余裕を見せながらも女のバトルは終わらないのだ。
「ふん、この完璧な体がムキムキにみえるのか?」
「完璧ね。それ以上上がないなんて可哀そう」
私たちはやっぱり馬が合わないね。同じ力を共有することになって更にそう感じるね。