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「うっ……ぐぬぬぬぬぬぬ」
もっと可愛らしい声を出せばいいのに……とかおもいながら私はミリアの手を取ってる。いや、最初はピアスから供給してたんだけど、直ぐに限界がきた。キララの奴じゃないと魔王の容量には全然……ね。だからしょうがないから手をつないで直接渡してる。
そこで問題になるのが、どっちが動くかということだった。だってね。動いて向かうとか、なんかそいつよりも下にいると同義じゃん。それはなかなかにお互いに……ね。ミリアには魔王という立場があって、私にはファイラルの領主という立場がある。
それに私は事実上クリスタルウッドの主。領主ってだけじゃ、確実に魔王よりも下からしれないが、向こうの狙いはクリスタルウッドな訳で、その主である私は同格なのだ。なので、そこでどちらからも動かないという状況が発生したのだ。
お互いそっちが来なさいよ――と牽制してた。まあ折れたのはミリアだけどね。既にマナを大量に無駄に流して疲弊してるミリアを更に動かしてひざまずかせる。……いや、新たに椅子を用意したから跪かせてはいないけど、気分的には完全に勝利したよね。しれっとカタヤが近くに座ってきたのはキモッとかおもったけどシスコンだからしょうがない。
「自身とは別のマナを大量に流すなんて……大丈夫なのか?」
「望んだのはミリアでしょう」
私はそういってカタヤのその言葉を一蹴する。周りを見ると、皆さんハラハラしてるね。この行いには死のリスクがあるとわかってるからね。けど、それは不安と期待がある。魔王という存在は世界にとって危ない事この上ない。
事実、ミリアは世界を壊す気でいる。けど、ここで死んでもいいのか、死んで欲しくないって感情もある奴らもいるよね。
(けどほんとバカ要領だね)
キララはその身にこのマナをためてる訳じゃない。随時必要な時に必要なだけ引き出せるそのパイプが普通の人よりも大きいだけだ。だからキララは実際私のピアスが無くなれば、そこらの女の子と変わらなくなる。けど、ミリアは魔王だからだろう。流し込むマナをすべてため込んでいる。
いや、食ってる? 魔王的にはそっちの方が表現的に正しそうだよね。まあ腹壊しそうな物を食ってる時点でアホだけど。
「そろそろやめないと本当に死ぬわよ?」
私が親切心でそういうと、魔王ミリアはニヤリと口角を上げて笑う。
「なんだ? もう尽きたのか? まだまだ我の腹は満たせんぞ」
こいつは……じっさいちょっと不安なんだよね。こいつが死ぬかどうかじゃない。もしもこれを受け入れる事が出来たらどうなるんだろうということだ。
いや、無理でしょ――とおもってやってるが、なんか行けちゃいそうな気もしてきた。そうなるとこいつもクリスタルウッドに認められたとか……なんとかに? わたしの特別感が薄れるじゃん。まあ私はにはクリスタルウッドの力だけじゃなく、ゼルの力もあるわけだけど……特別感は私を飾るうえでいくつあってもいい。
その一つが無くなるのはね……だって世界で二人しか……なんかよりも唯一無二が言葉的にいいじゃん。そんな事を考えながら私は悪い事を思いつく。
(そうだ)
「うぐ!? あああぁぁぁああああ!!」
おっ、素が出る程苦しくなった? ふふ早く諦める事ね。
「ど、どうしたんだミリア! ラーゼ! ――様!」
「うるさいですよカタヤ。これは魔王が望んだ事です」
とりあえず煩いカタヤはこれで一蹴だ。まあ苦しいのも無理はない。だって純じゃないマナも流してるからね。それこそクリスタルウッドには世界のマナが集まってくる。それを純に浄化するのが世界樹の役目なんだからね。
だから集まってきてる奴を魔王に回してやってるのだ。様々なマナ……さあこれに耐えられるかな? 早くギブアップしなさい。私は心の中でほくそ笑む。




