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「そうだな。では言おう。逆転しようではないか」
「逆転?」
魔王ミリアの言葉がちょっとよくわからない。逆転とは?
「もっと具体的に言いなさいよ」
「つまりは貴様の世界樹を我に譲渡し、その代わりに我の力を分けてやろう。世界を取った暁には半分をくれてやる」
なんかどっかの竜王もそんな事言ってた気がする。私は「はっ」と鼻で笑ってやった。
「なんで私が半分で我慢しなきゃいけないのよ? 私はいらない物はいらないし、欲しい物は全部手に入れる質なんだけど?」
私の発言に室内に緊張が走る。なんだか室温が下がったような気さえする。いや、実際に下がってる。どうやら魔王のご機嫌を損ねたようだ。マナが漏れてるのがみえる。私が純な白いマナを放てるのに対して、魔王のマナは黒い。それが漏れてる。
そのマナが自然と部屋の気温を下げてるみたい。
「ちょっとやめてよ。寒いんだけど?」
「ふん、お主はそういう奴だったな」
そういって魔王ミリアは横に置いてた枕を置いて拳で叩き出す。
「なんなのよアンタはあああ! 折角穏便に済ませられる方法を提案してやったのに!」
なんか魔王ミリアは情緒不安定なようだ。急にキャラかえるのはやめてほしい。
「簡単な解決策があるわよ」
「なんだと!?」
私はそういってにやにやとする。その顔を見てこっち側の人達はわかったみたいだ。付き合いがそんな長くない国軍の隊長さんもわかってるみたい。私がろくでもない事をいうと。いや、私的には大まじめだよ。そんな提案をしてあげる。
「私が世界を全部をもらうから、あんたは私の世界で生きる事を許しましょう」
「土地もないのか!」
「だって世界は全部私のだし?」
「どれだけ強欲だ貴様!!」
おかしい、魔王に強欲とか言われてしまった。ただ単に普通の要求をした筈なのに……そもそもすでにクリスタルウッドは私の物なのに、譲渡しろってね……そもそも態度がよくないよね。
「私が強欲かどうかは置いといて、魔王ミリア……立場わかってないんじゃない? お願い、する立場でしょ?」
私の言葉に周りの皆が再び息をのむ。ごめんね皆。なんか寿命がこの時間だけでかなり削られそうだね。一番心配なのはネジマキ博士だね。一番ご老体だからね。大丈夫だろうか? チラリとみる。きつそうだが、だがまだ彼には余裕がみえる。
そんな老体のネジマキ博士よりもヤバそうなのが、国軍の隊長さんだ。体が震えて、汗が凄い。ふむ……流石に何か怯えすぎじゃない? そもそもがゼウスについてきた国軍の奴らは国王の指示があったんだよね。それなら、実は魔王と繋がってた?
けど、私たちが向かうまでは影も形もなかった筈だけど。まあこいつらのつながりは今はいいよ。反応を見たいからこの場にいさせてるだけだし。
「お願い? そちらも立場が分かってないようだな」
今度はマナを引っ込めずに、私にぶつける様に向けてくる。私は自身のマナを溢れさせてそれを阻む。白いマナと黒いマナが部屋の中でぶつかり合う。挑発しすぎたか? そう思ってると、扉の方から声がした。
「なっ、なんなのこれ!! ラーゼやめてよ!」
「ミリア! 辞めるんだ!」
聞こえた声は亜子とカタヤの声だ。私はマナを引っ込める。魔王もその声に応えたのはわからないけど、マナを引っ込めた。