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夜空の三重奏
作:星河 翼



#13隆の歳


 朝は、六時に起きてチェックアウトを済ませ早々に旅立った。
 昨夜は、皆疲れが溜まっていたのか?確かに筋肉痛だけど……直ぐに就寝に至った。おなかが膨れたのも手伝って、気持ちの良い睡眠。同じ部屋のお年頃?の男女とかそんな事も考えずに、バタン・キューって感じだった。
 近くに、スーパーを見つけて、お惣菜や弁当類。ドリンクを詰めれるだけの物達を掻き集め、そこからまた再出発をした。
 そして分かれ道に到着。道は、右と左。
「さて、どうしましょ?右に行けば愛媛県。左に行けば徳島県。って、国分寺って決めてたんやから、右かいな〜」
 あやふやではあるが、結局流れ的に愛媛県に決定。あたし達は、キコキコと自転車を漕ぎ続けることになる。
 お昼時、栗林公園への道はまた違う道にそれた所。その辺りまで漕いで、一旦自転車を降りる。
「飯食う〜オレ腹減ったんにゃ〜」
 お前は猫か!『にゃ〜』って何だ!突っ込みたいけど、あたしも実際おなかが減ってその位言いたくなる気分だったり。只でさえ朝早くに起きて、止まることなく自転車を漕ぎ続けているのだもの、おなかが減らないわけは無い。
「栗林公園にでも行ってみるか?」
 隆は提案した。だけど、脇道にそれてたら国分寺にいつ着くかなど判りはしない。だから、結局、もう少し行った所のちょっと休憩できる所で昼食を採った。
「今日中に着けるんかいな?」
 休憩時に、ボソリと延光は言葉を発した。何だか焦ってる?そんな言い回しだった。
 イライラしてる感じは微塵にも見せないけど、あたしは感じた。
「何とかなるわっ!って言ってたのどこの誰だった?何とかするしかないんだよ?のぶちゃん!そう思うんだったら、夕方までに到着する意欲を見せようよ!」
 隆は黙々とご飯を食べてる様だったのに、どうやら一言一句聞き逃してはいなかったらしい。隆には恐れ入りますよ。本当に延光の扱いに慣れてる。
「そう言えばさ?隆君って、何歳なの?あたしと同学年?」
 そうそう。考えてみれば、隆って年齢訊いてなかった気がする。一見人と余り係わりたくない風に見える。突き放したクールな面を持ち合わす隆の年齢をあたしは知らなかったわけだ。
「ボク?あ、言ってなかったかな〜そう言えば。小学六年生だよ?」
 割り箸を置きながらそう言った隆は、不思議そうにあたしを見ていた。それを訊いてどうするの?見たいな目。
「え?小六?って、延光君より年下な訳?嘘だ〜?」
 あたしは、つい思ったことを口に出してしまった。だって、間違ったらあたしより年上に感じられるんだもん……
「ひっで〜オレの方が年下って思ってたわけなんや?葵っちは!」
 延光が、男の沽券に係わる!みたいに、あたしの言葉で突っ掛かってきた。
「いやさ、小六には見えないんだもん〜別に比較してそう言ってるわけじゃ無いんだよ?誤解しないでよ〜」
 あたふたと、言葉を編み出して、あたしは何とか延光の頭に昇ってる怒りを取り除こうと必死だった。が、隆が、
「二人とも、ご飯食べ終わったんなら行こうよ?のんびりして場合じゃ無いと思うけど?」
 当の本人にそう言われて、延光とあたしは残ってるおかずを全部平らげ、ゴミを掻き集めて、また自転車に跨った。
 三人の中で一番隆が大人なのだなと、この時悟った瞬間であった。

 時間が経つのが早いのか?それとも、あたし達の自転車を漕ぐ速度が速いのか?大きな通りをひたすら走り、国分寺へ夕方前には到着した。
「着いたね?どう?目指してた所にたどり着いた心境は?」
 あたしは、晴れ晴れとした気分で問いかけた。
「うん。最高や!さて、これからお参りしてこないとなぁ〜?行こうや!」
 延光は、先頭を切って走り出した。
 実際には第八十番札所『(はく)牛山(ぎゅうざん) 千手院(せんじゅいん)国分寺(こくぶんじ)』と正式名称が有るらしい。寺の中は意外に広くて鳩が一杯いた。
松が綺麗に整えられえた仁王門。入母屋造り九間四面という本堂。その右手に在る大師堂は二重の塔みたいな感じで白く綺麗な壁で出来ていた。 
 その塔の前には、千体の水子地蔵が祭られている。
「可哀相にな。生まれて来ること適わんかったんやろ?それを考えると、オレらは幸せなんよな……?」
 自分を指して言うのか?それとも、身近に居る隆に対してそう言ったのか?それは判らないけれど、その言葉に隆はこう応えた。
「そうだね。こうやって生きて、色んなものを見れて。幸せだよね?」
「食べてってのも有るな?」
「それはのぶちゃんが特に!でしょ?」
「あははは〜」
 二人の会話に入ってるわけでも無いのに、あたしは思わず一緒に笑った。
 そして、金堂跡礎石を見て、梵鐘を見て周り、あたし達は静かにこの国分寺を後にした。

 国分寺を離れたあたし達は、次に何処を回るかの計画を立てるため、近くの『ジャンボうどん』と言うお店に入った。夕食も兼ねてである。
 あたしは、釜あげジャンボを頼む。延光と隆は、冷やしジャンボを頼んでいた。
 名前の通り、凄い量で、あたしは満腹感一杯で、食べ終わると思わず背もたれに寄りかかるくらいだった。
「でと、これからやけど?もうホテルなどは無いと思ってくれた方が良いかもや。って事は、自動的に、野営。覚悟はええか?」
 それについては、もう、判りきっているよ。とあたしと隆は頷いた。そして、夜半近くまで走る事になると言う事で、七十九番札所の天皇寺を目指す事になった。そこはもう坂出市に入るかは入らないか?の所である。
「そこで、密かに一旦野営させてもらって、大きな通りで行くとやな……この辺りかな?」
 三人で地図を覗き込む。あたしにはちょっと判りづらいけど、県道三十三号線から天皇寺を少し戻って、十一号線とやらを、ひたすら走るつもりでいるらしい。
「明日は、お寺周りはしないで、一気に愛媛県へと突っ込んでいくつもりでおこうや?ま、寄れるんやったら、曼荼羅寺にでも寄りたいなぁ〜思っとるんやけど?どうや?」
 曼荼羅寺まで縮尺で換算すると、約十六キロ。いけない距離では無いと思う。途中何かアクシデントが無い限りは。だって、二時間余りで人は四十二キロ近く走れるんですものね?無理じゃない無理じゃない!
「それじゃ、そろそろ、プランも立った所だし、出ようや?」
あたし達は、ゆっくりと立ち上がったのである。

 天皇寺に辿り着いたのは、一時時間後くらいだった。自転車の電気をつけて走らないと危険だったりしたので、思ったより時間が掛かった。でも、無事辿り着けたので良かったと思う。
 第七十九番札所、『金華山(きんかざん) 高照院(こうしょういん) 天皇寺』歴史としては、()(とく)上皇の縁の地だと言う事らしいが、歴史に疎いあたしにはチンプンカンプンであった。
 もう、夜になってしまってて、周りが余りはっきり見えない。こんな感じで、本堂まで行き、あたし達はお祈りをした。
「さて、寝るとこ確保やな?」
 そう言って延光は、張り切って、お寺の中の木々が有るところを探し始めた。
「ちょっと待った!お寺の中で寝る気なの?それは罰当たりだよ!」
 あたしは、余りに非常識だと思った。だけど、そのほかに何処?と言われても、余り意見出来ないんだけれどもね?
「良いんじゃない?罰は当たらないと思うよ?だって、ボクら一応お遍路さんしてるんだものね?その位、仏様も見逃してくれると思うんだけど」
 隆まで、そんな事を言う!全く呆れ果ててしまうわよ〜でも、二対一の意見で結局この地にテントを張る事と相成りました。
「葵っち!その杭、きちんと持っててや〜今これで打ち込むんやから!」
 あたしは力仕事をしないで補佐役に回る。そりゃ、力仕事よりこちらの方が楽だけど、こき使われてる気がしてちょっとムッとしていた。隆は隆で、飄々と、テント張りしてるし。慣れてきたとは思っても、やはり変な二人だと思う。で、三十分後には初めて張ったテントが完成した。
 あたしは、早速中に入った。
「ねえ〜これって三人ちゃんとは入れるの?狭い気がするけど?」
 そう、中に入って初めて気がつく事はそれ。
 体を密着させないと、絶対入れない広さ。
「入れる、入れる!気にするんやない!」
 延光は、何も気に止めてない様にして中に入ってきた。
 うわっ。汗臭い〜ってあたしもか?と思って、鼻を腕に近づけて臭った。
「うっ!」
 自分も臭い。みんなの事言えないので、じっと我慢していたら、
「何か臭うね〜あ、消臭剤持ってきたから、振りまこうね?」
 凄い!そこまで考えてたのか隆は?あたしは隆に感謝したい気分になった。
 本日は、お風呂に入れない事決定。もう、後は寝るだけ?だな〜なんて事を思い、あたしは、タオルケットを握り締めて、テントの一番奥に引っ付く感じで寄り添った。
「さて、明日の事も有る、寝よか?」
 そう言って、延光は付けている懐中電灯の明かりを消したのである。












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